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2010年 ITエンジニア転職市場動向〜WEBサービス業界編 比較的好調な推移を見せるWEBサービス業界。2010年、WEBサービス業界はどう変わり、どのようなITエンジニアが求められているのか。IDC Japanのリサーチャーに聞いた。
※企画・制作:@IT自分戦略研究所編集部
※JOB@ITの記事(2010年2月)に再編集を加えて掲載しています。
2009年のWEBサービス業界の動向は?

IDC Japan ITスペンディングリサーチマネージャー 笹原英司氏2010年に入って1カ月余りが過ぎた。2009年は世界的な経済不況の中、多くのIT企業が苦戦したが、WEBサービス業界の動きはどのようなものだったのだろうか。

IDC Japan ITスペンディング リサーチマネージャーの笹原英司氏は、次のように語る。

「2009年は経済不況の中、WEBサービス業界の中で勝ち組/負け組の二極化が顕著になった年でした。勝ち組といわれている企業には、共通の特徴があります」

共通の特徴とは、提供しているサービスの中身ではなく、「強固な組織作りができていること」だという。笹原氏は、WEBサービス業界の中で、財務報告に係る内部統制(J-SOX)対応を含むコンプライアンス全般のリサーチを手掛けており、IT統制を推進する組織/仕組み作りに造詣が深い(なお、ここでいうIT統制には、情報セキュリティ対策やリスク管理も含まれる)。笹原氏によれば、全般的に、強固な組織作りに取り組んでいる企業ほど業績が好調で、ITエンジニアの採用にも積極的という傾向が見られるという。楽天、ヤフー、ディー・エヌ・エーなどは好例だろう。

WEBサービス企業は、自社のサービス(製品)がそもそもITを核にしているため、「強い経営体質を作るためにITをどのように活用すべきか」という課題を常に抱えている。内部統制は、IT全般統制や業務処理統制の垣根を越えた全社的な成長戦略の基盤でもあり、ITやITエンジニアという“資産”を効率的に循環させるための仕組み作りにつながる。結果として、組織全体のPDCAサイクルが迅速になり、「市場が求めるサービスを迅速に提供できる」という優位性が得られるわけだ。

攻守兼ね備えた勝ち組企業は時流の流れにも敏感だ。SNSサービスを例に取ると、米国ではSNSを企業内に導入し、コミュニケーション活性化や顧客とのリレーションシップ強化につなげる動きが活発だ。国内でもこうした動きは始まっている。小林製薬はSNSを使った商品マーケティングで成功を収めている。製薬会社のヤンセンファーマがガイアックスのSNSシステムを導入した話も記憶に新しい。今後、大手SNSサービスもBtoBの方向に向かうことは十分考えられる。

また、WEBサービス業界のグローバル化への対応という面でも、強固な組織体制と迅速なPDCAサイクルは大きな武器となる。現在、オンラインゲームやデジタルコンテンツなどを中心に、アジア市場を目指している企業が増えている。「アジアに市場を確立すること」を目的として、在アジアの現地企業とコラボレーションしながらサービスを洗練していく施策が取られている。

2010年、WEBサービス業界は「クラウド対応」が鍵

2010年はどのような動きが期待されるのか。笹原氏は「クラウドコンピューティングへの対応が鍵でしょう」と語る。クラウド技術の使い方次第で、サービスを享受する立場でも、提供する立場でも、“負け組企業の一発逆転”が起こり得る可能性があるからだ。

クラウド技術を利用する側でいえば、これまで高額な維持費がかかっていたシステムコストを抑え、その分をコア事業に回すことができる。また、クラウド技術を提供する企業にとっては、クラウド技術のメリットに期待している企業のニーズを一気にすくい上げる大きなビジネスチャンスにつながる。

2010年、WEBサービス業界のエンジニアに求められるスキル

「クラウド対応」が鍵を握る時代においては、次の3つのスキルの持ち主が必要になる。第一に、ニーズからビジネスモデルを組み立てるマーケットプランニングのスキル。第二に、マーケットプランニングとエンジニアリング、そしてWEBデザインの密な連携を実現するコミュニケーション能力。第三に、パブリッククラウドとプライベートクラウドを考慮し、企業内の既存システム環境と動的なクラウド環境の組み合わせによる最適化を実現できるような、柔軟でセキュアなアーキテクチャの設計スキルだ。この3つを充足する人材が、2010年のWEBサービス業界の転職市場で渇望されることだろう。

ITエンジニアがこの3つのスキルを一気に身に付けるのは難しい。だが、いずれもおろそかにはできない。特に、マーケットプランナーやWEBデザイナーなど異なる職種と協調関係を築き、システムに落としていくコミュニケーション力は、これからますます求められてくると予想できる。

合わせて留意すべきなのは、クラウドコンピューティングを踏まえ、自らの技術スキルの「棚卸し」を行うことだ。第25回でも触れたが、笹原氏も、「クラウドサービスに必要な要素技術は、実はあまり目新しいものではないのです」と語る。仮想化でいえば、最終的にはメインフレームアーキテクチャに倣うところがある。ビジネスロジックの記述もインターフェイスデザインも、JavaScriptやAjaxなどで対応できる部分が大きい。そのため笹原氏は、新しく技術スキルを磨くより、「いま自分が持っている技術力で、どんな新しいサービスが展開できるか」を考える方が先だと指摘する。

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ただし、開発スキルについては、「企画段階で将来起こり得るリスクを評価し、事前に対処していく」という高度なスキルが求められる傾向にある。システムができてからセキュリティ対策をするのではなく、開発の早期段階からリスクをヘッジするという考え方だ。これに付随して、システムリスクにかかわる法令遵守の予備知識を持っていれば、活躍の土壌も広がることが予想される。

転職市場が回復する時期は?

雇用状況について、笹原氏は「個々の企業の決算時期によって、雇用が活発になるタイミングは異なるでしょう。また、ECサイトの場合、商品特性による商戦サイクルによって変わると思います」とみている。転職希望者は、各企業の決算時期やIR情報に注意を払い、効率的な転職活動を進めるべきだろう。

特にJ-SOX導入後のIR情報は、経営状況だけでなく、各企業の組織体制や内部統制の成熟度を測る良い指標になる。「こうした情報を集め、転職先企業の評価を行い、有望な企業にアタックするのも、転職希望者にとって賢い選択の1つでしょう」と笹原氏はアドバイスする。

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