巻ノ八社会人1年目にして、2回の転職その理由は？

前回に続き、今回も女性エンジニアさんから体験談をいただきました。仕事の全体像が見える職場で働きたい！　そう願って小さな会社を選択したY口さん。「なんでもできる」職場で得た経験とは……というお話です。

1から10まで自分でやれる環境を求めました

大きなシステムのたった一部分だけを担当するとか、工程の中のテストだけを担当するとか、そんなのはイヤだなと思ったY口さんは、ある小さな会社へと新卒入社を果たします。文系からの就職であるため、プログラミング経験はゼロ。まったくいちからの出発でした。
ところが確かに「なんでも自分でやれ」な社風ではあったのですが、「あまりに度が過ぎてないか？」と思いはじめることもちらほらと……。
「データベースのパスワード教えてください」
と聞けば、「それぐらいわかんねぇのか」と返ってくる。「○○のドキュメントどこですか？」と聞けば、「それぐらいわかんねぇのか」と返ってくる。
あげくに、「このソース見といて」と渡されたファイル群には「コンパイル済みのバイナリファイルしか入ってない」という始末です。
「こりゃダメだ」
入社して半年が過ぎた頃、Y口さんはそう思いました。この間無駄に身についたものといえば、パスワードのハッキング技術や、逆コンパイル技術といったものだけです。そうして彼女は、同じような規模の同業他社へと、早々に転職を果たすのでした。
ところが…。
その新しい会社でも、待っていたのは、「でたらめな納期」や「サービス残業の嵐」。そして、それらに無責任な社内の対応です。
「こりゃダメだ」
またまたY口さんは、そんな風に思ったのでした。

下請けはもうイヤだ！

新しい会社に入ってから半年が過ぎ、またまたY口さんは転職活動に奔走することとなります。
「下請けはもうイヤだ。自社製品が作れるところで、自分の作ったものが発表できる環境に身を置きたい」
一社目、二社目を選んだ時の、「1から10まで自分でやれる環境を」という希望は、すでに頭から消え失せていました。
やがて、転職情報サイト経由の求人から、Y口さんは希望の会社をゲットすることに成功します。
そしてそれから時が過ぎ……。
「今はすごい満足です」とは彼女の言葉。
新しい会社にうつって彼女が良い意味でおどろいたのは、仕事内容うんぬんの前にその社風でした。
まず休みが多い。
夏休みは5日もあるし、さらにフリーバカンス制度なるものまで用意されている。しかも「休みはきっちり取ろう」というのが当たり前なので、それが無駄になることもない。
そしてなにより感激したのが、社内でしっかりとした教育制度を持っていることでした。新人研修はもとより、その他にも社内の技術共有を促進する、いろんな制度が用意されていたのです。
気がつけば、Y口さんがこの会社にうつってから1年9カ月が過ぎました。新卒1年目に目まぐるしく籍を移った彼女でしたが、どうやら今度は、長く落ち着くことができそうです。

私の持論の中に、「会社選びはお見合いといっしょ」なんてものがあります。これもまさにそうだよなぁと、今回思いました。
普通に考えれば、一年目にポコポコ会社をうつるというのは、色んな意味でデメリットが多いものです。でも彼女はそれをものともしなかった。そしてよい伴侶たる会社を見つけて、今は幸せにやっている。
あきらめずに探し続けたからこそ、この結果が得られたんでしょうね…なんて思うのでした。

■著者プロフィール

きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた４コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、４コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/