ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ三十一子会社ゆえの悲しさよ 無責任上司のもとで、「働けない」と決意する

大企業の子会社といえば、安定して仕事が下りてくる代わりに色んな弊害があるのはよく耳にする話。特に多いのが「親会社からの出向社員がうんぬん」というものです。
今回のN本さんも、そうした中で思い悩み、退職を決意していく……そんな体験談です。

知らないよ、キミらがやったんでしょ?

上層部にいるのは、常に親会社の銀行から出向してきた社員ばかり。自社の利益よりも親会社の利益・都合優先で、そのため開発案件の仕様変更も常に先方の言うがまま。
それが、N本さんの勤める会社の実態でした。
そんなわけで、グループのリーダーなんかも「元銀行員」さんが務めることになるわけですが、当然システム開発の業務知識なんかありません。設計内容や仕事の相談なんかもできやしない。
N本さんの上司もその例に漏れない方でした。
ただしこの人、せっかく子会社に来たんだからと、ちょっと偉ぶりたい人でして、「逐一(ちくいち)全部オレに報告しろ」と言うんです。言ったってわかんないくせに、細々したところまで言えという。報告の手間だけは人一倍かかる。そして生意気にも口を出す。
挙げ句、指示通りにやってトラブルが起きたら、「オレは知らんよ、キミらがやったんでしょ?」と逃げの一手になるもんだからタチが悪い。
仕事自体にはさほど不満を抱えていないN本さんでしたが、この上司には我慢なりませんでした。
「上司とあわないので、チーム変更か部署替えをお願いできないですか」
そうした上申を経て彼女が選んだ道は、「退職」という2文字だったのでした。

事務職を志望……してみるも、やっぱり技術職に

部署替えを上申してみた結果は「1年待て」というものでした。ところが1年も経たずして上司と大げんか。これはいよいよ限界が来たと退職を申し出るも、「そんな理由じゃ認められん」と却下。しかしやはり1カ月後には「どうにも限界」と再度申し入れて、ようやく退職を了承してもらえました。
こうして、N本さんのハローワーク通いがはじまったのです。
保守兼任の業務だったがゆえに、帰宅時間はいつも不安定だった彼女。ふと脇を見れば、毎日定時上がりな事務職の人たちが輝いて見えていました。ひそかに「羨ましい」という気持ちも抱いていました。 そんなわけで彼女は当初、事務職志望で仕事探しをはじめたのでした。
ところが1カ月、2カ月と過ぎても、なかなか新しい職場は見つかりません。そのうち、人材派遣会社の面接を受けた時に、「あなたの経歴ならプログラマーじゃないの?」というアドバイスをもらいます。やはりそうなるのかと、ここで技術職志望に方針転換したN本さん。新しい職場は、それから1カ月と待たずして決まります。
前職と同じく、銀行系の開発案件を請け負う、システム開発会社でした。
ただ、以前は出向してきた協力会社さんを使う立場だったN本さんですが、今度の会社では逆に出向先で指示を受ける立場になりました。以前とほぼ同じ仕事に従事しながらも、「立場が逆転したことで給料が下がってしまった」ことが、悩ましいところだと彼女は振り返るのでした。

オチの一コマ
本日の一句

親会社、子会社、ぜんぜん別の独立系中小ソフトウェア会社。それぞれに特徴があって、それぞれに長所も短所もある。そんなことを思い出す体験談でした。
自分が昔お仕事させていただいてた、超大手企業の子会社さんなんかも、「ウチは親会社の人事のエスカレータ代わりに使われるばっかでねぇ」と愚痴っていたのを思い出します。
出向してきては昇進して帰っていくんですよね、ああいう人たちって。社歴8年目にして、はじめて生え抜き社員の中から課長が誕生したって大騒ぎしてたっけなぁ。
どのポジションにある会社がいいのか。自身の適性と照らし合わせて、よーく考えないといけない。難しいテーマですよね。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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