ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ四十四ワンマン社長にモーレツ社員。 そして思うよ「合わないな……」と

創業者社長がワンマンでモーレツでイケイケで……というのは、よく耳にする話。そうでもなきゃこの世の中渡っていけまへんで、ともよく耳にする言葉です。
でも、創業当時からの付き合いならまだしも、普通に入社してその洗礼を浴びたとしたら……。
「合わないな」と退職を決めたM崎さん。そんな今回の体験談です。

鶴の一声、ギャースカピー

とにかくワンマンな親会社社長のもと、朝9時出社で終電まで働いて、でも残業代がつくわけでもなくて給料は変わらない。そんな生活を送っていたM崎さん。生後6カ月とカワイイ盛りの我が子がいたにも関わらず、「寝てる間に会社へ行って、とっくに寝てから帰ってくる」なんて毎日で、平日に顔を見ることも叶いません。
「営業に残業代なんぞあるか!!」
「10時から17時までの間に事務所にいる奴はサボりだ。その時間内は事務所に近づくな!!」
親会社の社長が声高に叫ぶその信念。この人が否と言えば、子会社の社長なんかすぐにクビがすげ変わるもんで、誰も「No」と突っぱねることもできません。
そんなわけで、M崎さんに残業代という文字はなく、営業用の電話すら自前の携帯電話から。もちろんその電話代も自分持ちです。
「利益が1億以上出てないとこに派遣の仕事なんかない!! 1億以上の利益を出してるとこにだけ営業まわりしろ!! それ以外は営業と認めん!!」
そんな案配でさらにギャーギャーと騒ぎ続ける親会社社長。会社として必死なのはわかるけれど……正直ついていけないな……と。そうM崎さんは思ったのだといいます。
そうこうするうちに、友人や、妻の周囲からも、「少し働きすぎと違うか?」という声があがりはじめてきました。
しかし会社の側はまだまだ締め付けの手を緩めません。
「土曜や日曜にも出てきて仕事をするのも、社会人として大切だ」
「え?」
トドメは上司のこの言葉でした。これに、M崎さんは会社と自分との間の相容れない溝を痛感して、転職を決意することになったのです。

目指す道、歩む道

以前から技術者の方面に興味を持っていたM崎さん。実は就職するより前に、そうした人材派遣会社に登録だけは済ませていたのだといいます。でも、技術的な資格もないしで声がかかることはなく、今の今までは「ただ登録しただけ」の状態だったんだとか。
転職にあたり、M崎さんはこれを頼りとしました。その派遣会社の方と話をすると、「資格を取ってスキルアップして、その後正社員の道をつかみましょう。お手伝いします」というアドバイスをもらいます。
「そうか、派遣で働きながら資格を取って、という道があるんだ……」
次の仕事は不思議なくらいすんなりと決まりました。辞表を出し、事後処理として書類作りを命じられて、それを毎日終電まで必死こいて作って……なんて一幕もありはしましたけど。
今、M崎さんは派遣という立場ではありますが、コールセンターでサポート業務に従事しながら、次を目指すための勉強に邁進する日々を送っています。子供の顔を平日に見ることができて、自分のなりたいものに向き合って、考えることができるだけの精神的余裕も手に入れた。
「満足です」と転職を振り返る、そんなM崎さんなのでした。

オチの一コマ
本日の一句

「子供の顔を見ることのできる生活を」
懐かしいです。自分もそう思って、自分の場合はそれが「自由業」という選択だったんですよね。
私なんか程度の自由業だと、「残業代なんぞない」というのは確かに“自分自身に関して”はそうです。24時間フル勤務状態で、残業という概念がそもそもない。働けど働けどって奴で、まったく困ったものであります。
ただ、それを会社に持ち込まれちゃねぇ、たまったもんじゃありません。自分が自分のために自分で選んだ道なら我慢できるけど……って奴ですよ。
自分で選び、今後も自分で歩んでいこうと思う道を見つけたM崎さん。その前途に幸あらんことを。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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