巻ノ五十一満足してもらえないシステムを、作り続けてはや数年。 そんな報われなさの末に選ぶ道
忙しくてもしんどくても、作ったシステムをお客さんが「助かるよ」と使ってくれたなら、それで一気に報われる。SEの仕事にはそんな側面があります。
けれども、それと真逆の環境に置かれ続けていたとしたら?
まさにそうした立場にあったK田さん。その気持ちめっちゃわかるよ……という、今回の体験談です。
さらに海外出張がはじまって
「自分がなにを作ろうとも、お客さんには喜んでもらえない」
その現実はK田さんに「仕事に対する意義」を見失わせ、ただただむなしさだけを募らせていました。
親会社の海外工場進出がはじまったのは、まさにそんな時。これにより、K田さんは否応なく1年の3分の1を海外で過ごさねばならなくなってしまいます。2週間ほど海外で親会社の工場立ち上げに伴うシステム展開……配線や端末の設置、準備、現地スタッフへの説明……などをこなして帰国して、次の出張までの準備や関係システムの開発、んでもって国内工場の運用保守してまた海外に飛んで……という繰り返し。
「けれども、実は子どもが生まれて間もない時期のことで、しかも共働きなもんだから奥さんにばかり負担がのっかっちゃって」
彼の出張中、家族は奥さんの実家でお世話になっていたようなのですが、それでもやはり生活が落ち着かない感は否めません。
そうこうするうちに、親会社の海外進出はどんどん大規模なものになり、複数カ国を渡り歩くことになってきました。このままいけば、「1年のほとんどが日本にいない生活」ということになるのは目に見えています。
「家族と離れないで暮らしたい」
そんな思いを強めるK田さん。奥さんのお腹に2人目の子どもを授かったことも、そうした気持ちに拍車をかけていました。
知人からのオファー
そんなこんなで転職をと考えたK田さん。知人のツテを頼りに転職先探しをはじめました。
……というか、学生時代の友人が経営に関わってるベンチャー企業から、お誘いがあったんですよね。「会社の規模拡大に伴い、システム専任の人材が必要なんだ」ってな具合に。ベンチャーという環境と、株式上場を視野に入れた業務計画に、K田さんは強く興味をひかれたそうです。
そして今。
K田さんは、その知人の会社に移り、社内システム担当として「出荷伝票管理システム」や「販売商品コード管理システム」など、細々したシステムの開発や保守をして過ごしています。プログラマとしての大きな成長は期待できないものの、前職では味わえなかった「システムを使用する人の生の声」にふれられる毎日で、作るシステム作るシステムすべてがそこにいる人たちに感謝してもらえているのだとか。
「K田さんが来てくれたおかげで、業務がすごく楽になった」
そんな至福ともいえる言葉をいただきながら、K田さんは幸せにSE生活を続けているそうです。
誰かが困っている事柄を、コンピュータという箱を使って自分の腕一本で解決してみせる。SEの仕事には、そんな醍醐味があると思ってます。無から有を生み出して、それで誰かを助けることができちゃうんだからスバラシイですよね。
今は業界を離れてしまった私ですが、もしSEに戻ることがあるとしたら、どっかの企業さんの社内SEがいいなぁとか思ったりしています。そんで、会社内の仲間たちを日々助けるってことを仕事にすんの。楽しいだろうな~……と思ったりするわけですが、今回の体験談ってまさにそれなんですよね。
スバラシイと思うと同時に、ちょっとうらやましくなったりする、そんな体験談でありました。
■著者プロフィール
きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/
■著書紹介
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