ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ七十五営業力を強化したい。そう思った、ある外資系コンサルタントのキャリア選択

業界平均でいえば良い給与。けれども、そこで満足するか否かはその人次第。さらに上をと考えた時には、キャリア選択の道が自ずと目の前に見えてきます。
とある外資系企業でコンサルタントをしていたI出さんもその1人。向上心を持って踏み出さんとしたキャリア選択の道に、手を差し伸べてきたのは果たして誰か、そんな今回の体験談です。

さらに上の給与と営業力とを望むのです

人間関係、待遇は良好だったとしながらも、I出さんが転職を考えた理由のひとつが「もう少し給与を上げたい」というものでした。「メーカー系から転職してきてたんですが、前職の給与が反映された形で最初の年俸が決められるため、その後昇給を重ねても、なかなか同僚と同じ平均レベルに達しないのです」
確かにそれはちょっとむなしい。
同時に、「もう少し営業サイドの仕事もしてみたい」という思いもありました。きっちりとした精度の高い提案ができるように。そして、同僚たちまでを含む食い扶持を、自らの手で稼ぎ出せる人材となるために。そうしたスキルを身に着けるために、より営業的な仕事の経験を積みたいと考えていたのです。
こうしてI出さんは、人材紹介会社を使っての転職活動を開始。別の外資系企業で自社製品のデモやコンサルティングをやる仕事に内定をもらいました。その会社で彼は、「プリセールス」という、「導入の前段階でソリューション提案を行う職種」に就く予定でした。
「プリセールスをやりたいので転職します」
直接の上司にそう辞意を伝えたところ、返ってきたのは「最終的にはあなたの決断を尊重するけれど、もったいないと思う」との言葉でした。将来的に提案活動を行うにしても、今は導入を担当するコンサルタント業務をもっと続けた方が、より良い成長につながるのではないか……、そう思ってのことだったようです。
I出さんにとって上司は非常に信頼に足る人だったため、この言葉はいろいろと考えるところが多かったと言います。

この会社に行ってみないか?

「こういう人間が辞めようとしている」
そう上司から報告を受けた、さらに上の上司は、「引き留めることはできないか」と言ってくれたそうです。その結果、I出さんとその「さらに上の上司」との面談の場が持たれました。
I出さんのことを思えば、成長面でもったいない。自社のことを考えれば、自社製品を取り扱ってくれる人間を、業界の中から減らしたくはない。そうした思いが引き留め工作につながったようです。
「何が一番問題? 給与?」
「うーん、確かに今の給与からその額まで、今すぐに上げることは難しいな……」
「ちょっと待ってろ」
そう言われて2時間後、その上司から手渡されたのは、電話番号が走り書きしてある1枚のメモでした。
「そこに電話してみろ」
それは、自社製品を取り扱ってくれているSIerで、ERP関連の導入に関して提案活動を行っている会社の電話番号でした。実はその会社、目の前にいる上司の古巣でもあるのです。I出さんが待っていた2時間の間に、「これこれこーいう人間がいるんだけど、○○円くらいの給与で雇ってくれないか」と話をつけてくれていたのでした。
先方としても、製品知識の豊富な人間が来てくれるとあれば大助かり。トントン拍子に話は進んで、めでたくI出さんはその会社に移ることが決まったのでした。
最終的には、望み望まれて移ることになったI出さん。希望の職種にも就くことができて、充実した毎日を送っているそうです。

オチの一コマ
本日の一句

会社を超えて、ひとつのビジネスのもとにつながる人と人との縁。そのなかで価値を認められて仕事ができるとは、なんとうらやましい話でしょうか、なんて思った体験談でありました。
いわゆる「win-winの関係」というんですか。登場人物が皆、率直に話をしたからこその帰着点という気がします。人の縁を大事にすると、自分もその縁に大事にされるとかあるんでしょうね。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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