ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ九十一アチコチ出向している間に気がつきゃ古株社員なり。不況の煽(あお)りで仕事も激減、さあどうしよう

客先の都合にあわせてアチコチ出向。そうしていると、自社の人間とはなにかと疎遠になるものです。
ところが今回のN川さん。疎遠になるどころか、そもそも自社の人間がズンズカ入れ替わりまくってる!?
出向で駆け回るうちに、気がつけば最古参の人間になっちゃってた、そんなN川さんの体験談です。

気がつけば、わずか3年目にして古株社員

小規模ソフトハウスから転職した地元関西の中規模企業。ところがN川さんは入社初日から東京行きを命ぜられ、そのまま常駐することに。それが前職における彼のスタートでした。
その後も半年スパンで各地を転々とする暮らしは続きます。たまに自社へ戻ることがあるとごっそり人が入れ替わっていて、在籍3年目となるころにはすっかり古株社員の仲間入り。支社内では最古参の社員となり、上司もいないという立場にまでなりました。
この会社、本来は自社開発をポリシーとする会社でした。しかしこのころになるともう請負案件は激減しており、周囲の人間は続々派遣に出されていきます。
住む場所も落ち着かないし、人も落ち着かないし、仕事の先行きも落ち着かない。
この年、N川さんは29歳になります。もう三十路は目の前。でも自分の人生は何にも落ち着きを見せてない……。
「地元で、安定した業種の企業で、社内SEとして落ち着いて働きたい」
そんなことを考えてN川さんは転職を決意。会社勤めはそのまま続けながら、転職サイトを利用して求人をあさる日々を開始したのでした。

自己評価をして勝ち戦

N川さんが転職活動に要した期間は約1カ月。条件に見合う会社を4社受け、うち3社から内定をもらうという高い勝率のものでした。
「短期間に複数社を受けたことで面接にも慣れましたし、自分のキャリアの棚卸しができて、それをうまく前に出せたんだと思います」
N川さんが言うには「自己評価がうまくできた」のだとか。自分自身を分析した結果を面接で出す。他人がその中身をどう評価するかが見て取れる。そのことが、より自分を客観的に眺め、より評価を得るために押し出すべきポイントを考えるタネとなる。
その結果なのだと。
内定をもらった中から、N川さんは京都にあるサービス業主体の会社に入りました。彼の仕事は、その会社内の基幹システム構築を推進する社内SEでした。
しかし……。
「実は営業中心の社内風土になじめるか、すごく不安でして」とN川さん。システム開発の現場一色だったこれまでとは社風が違い、それになじめるかが一番の不安要素だったのだとか。もちろん、2次請けの立場から発注元に転身してうまくまわせるのだろうかという不安もあります。
これらの不安は的中し、入社直後は、自らのスキル不足を痛感。1カ月と待たずして再転職も考えたそうです。
「でも、なんとか持ち前の粘りと根性で成果を出すことができ、続けていける算段がついてきました」
今でN川さんは入社から7カ月。まだ安心とは言い難いながらも、着実に何か手応えをつかみつつある。そんな毎日であるようです。

オチの一コマ
本日の一句

自分も「30歳になる前に」とフリーランスへの転身を図った身なので、なんとなくN川さんの気持ちに共感するものがありました。
30歳以降は、「これ」と決めた状態で仕事に邁進したかったんですよね。「これでいいのかな」と不安を抱いたままだとパフォーマンスが悪いので、そういう意味で身を固めたかった。きっとN川さんも、そんな気持ちだったんではないかと想像します。
新しい職場はまだ不安の方が勝っているようですが、不安が大きいってことは、今までの不満とは切り離された新天地に居るんだという証しではないかと。がんばってくださいと思うのでありました。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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