この企画は、Web業界で名を馳せる伊藤直也氏と注目企業のCTOが、

寿司を摘まみつつホンネで語り合う、かつて無かったインタビュー企画である。

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[ #naoya_sushi ] 七転八倒の先に見出したCTO道――

グリーCTOに、色々ホンネで聞いてみた【前編】

Twitterでハッシュタグ「#naoya_sushi」が生まれてしまうほど、無類の寿司好きとして知られる伊藤直也氏(@naoya_ito)。そんな伊藤氏をホスト役とし、トップエンジニアをゲストに招いて、寿司をつまみつつホンネで語ってもらおうという、この企画。

第二回のゲストは、伊藤氏が師と仰ぐ『グリー株式会社』の取締役 執行役員常務 最高技術責任者(CTO)である藤本真樹氏(@masaki_fujimoto)。実は生魚が苦手という藤本氏を寿司屋に招くという暴挙に及んだ今回は、どんな興味深い話が繰り広げられるのでしょうか。乞うご期待!

▲山海の幸が盛りだくさん。今日は藤本さんの好みを伺いながら、いろいろと調理してもらいます。

ネット業界の黎明期から活躍する二人の寿司会談、スタート!

— 伊藤直也(以下「naoya」):まずは僕と藤本さんの関係性から読者に知らせようと思うんですが。藤本さんとは、僕がはじめて『グリー』のオフィスに遊びに行ったときが初対面でしたけど、当時すでにPHP界隈でよく使われてたEthna(PHPのWebアプリケーションフレームワーク)はリリースしてましたよね?だから、それを作った人っていう認識で。その藤本さんが『グリー』に入ると聞いて、「あ、『GREE』もEthna使って全部書き直すんだな」って思いましたね。田中さん(グリー株式会社 代表取締役会長兼社長)が書いたソースコードを読んだことがあるから、「これはよかった」ってw

— 藤本真樹(以下「藤本」):wwwwww

— naoya:『GREE』があのままのコードベースだとさすがに難しいんじゃないかと思ってましたからねw

— 藤本:まあ、彼は純粋なエンジニアと言うより、エンジニアリングを手段として考える人だからね。

— naoya:スタートアップの起業家ってそういうタイプの人多いですよね。プログラミングはできるけど、あまり良いコードではないというか。でも、伸びるスタートアップって、最初は社長とかが見よう見まねでプログラミングを覚えて、きたなくてもコードを自力で書いて、それがヒットする。だけどプロダクトが大きくなってきたところで「これはきちんとしたエンジニアリングの力が必要だ」って気付いて、できる人を招聘して、改めて設計し直すというパターンが多い。

— 藤本:確かにそのパターンは多いなぁ!w

— naoya:『はてな』の時にも、そういうフェーズがありました。まあ、近藤さん(当時のはてな社長)はエンジニアとしても優秀だったから、そこまでやり直す必要はなかったように記憶してます。なので、起業家がコードを書くというのは全然悪いことじゃなくて、エンジニアリングを手段として見てるからこそ、最短のスピードでユーザーに響くものが創れるということにつながってるんじゃないかなと。僕らみたいなエンジニアだと、「いや、ちょっとコードが気に入らないから直そう」とか言って、余計な時間使っちゃうことが多いから。

— 藤本:そんなヒマがあったら5分早く出せよ!みたいなw

— naoya:そうそう。

— 藤本:その是非は、切り口によって変わってきますけど、田中はエンジニアというよりはクリエイター気質の人間ですね。

— naoya:最初はきたなくて無茶苦茶なシステムでもいいんです。でも、どっかでやっぱりギアチェンジをしなくちゃいけなくて、その意味で『GREE』はちゃんとその部分に藤本さんを招聘して成功したんですよね。

— 藤本:でも、10年も続くなんて思ってなかったんで、想定外ですね。

— naoya:藤本さんで10年ですよね。僕も同じような時期からマネジメントをやりはじめてるから、大体10年くらいインターネットサービスの業界を見てきてますが、まさか、一度作ったものが10年も動き続けるなんて、当時は思いもしなかったですね。

— 藤本:その当時は『楽天』ですら、まだ10年経ってなかったし、『Google』だって、1998年でしょ。だから、この産業自体どうなんの?みたいな。その5年前にLinuxって商用で使えんの?商売になんの?ってレベルで議論してたのと、ある種同じ。Web2.0でECだ、コンテンツはタダになるけどどうなんの?とか、世間が話してた頃に、自分の作ったサービスが10年も続くなんて、だれも思わないよねって話です。

— naoya:たとえば、僕なんかでも、4人で合宿に行って、3日で作ったサービスをリリースしたりしてました。それが10年間も動き続けるなんて、作ってる最中はまったく思わない。でも、それが10年動いちゃうんだなぁってことが最近になってわかったという…

— 藤本:wwwwww

— naoya:10年動かすってことがわかってれば、もうちょっとちゃんと作ってたのに、っていうのは相当あります。いや、10年前にその実力があったかと言われると、黙るしかないんですけど。

— 藤本:この話はねぇ…

— naoya:若い世代から攻められるから辛いです。お前らが10年前に作ったシステムのせいで俺たちが苦しんでるんだぞって…

— 藤本:ほんと、ごめんなさいですよね。いつでも土下座する用意がありますw

藤本真樹、なりゆきで『グリー』のスタートアップに参加する

— naoya:ところで、藤本さんがこの世界に入ったきっかけは?

— 藤本:元々、大学生の時にソフトウェア会社でアルバイトをしていて。で、就職活動的なことをして、一通りは「こういうものかー」と分かったので、バイト先のソフトウェア会社にそのまま就職。2年くらい経って別の会社に転職したんだけど、そこは個人事業主の集まりみたいな会社で、技術コンサルティングなんかをやってて、それで『楽天』さんともお付き合いがあったんですよ。なんかわかんないんだけどMySQLが動かないとか、パフォーマンスがでないとか言われて、その解決策を考えたりしてましたね。『楽天』の社内にも仕事で顔出したりして。

— naoya:今とちょっと違う感じですよね。

— 藤本:インターネット業界自体がまだまだ成熟してなかったですね。そんな頃、楽天のプログラマだった田中良和に声かけて、PHPカンファレンスに出てもらったりしてた。

— naoya:そうか。その頃PHPカンファレンスの運営を手伝ってましたもんね。それが田中さんとの出会いのきっかけ?

— 藤本:うん。で、2004年末に田中が会社を辞めるってなった時に「会社創るんだよねー」って声かけられて。

— naoya:めっちゃ仲イイですね。

— 藤本:全然。それまでは1、2回会話したかどうかだったし。

— naoya:それでよく誘いに乗りましたね。

— 藤本:なぜ僕に声をかけたのかいまだによく知りませんがw 最終出社日の挨拶まわりをしてる時、「藤本さんに相談したいことがあるから今度メシでも」って。ナイス、社交辞令!みたいな感じに受け取ってたんですけど、そしたらホントに連絡が来て。

— naoya:最初からCTOとして迎え入れたいって話だったんですか?

— 藤本:いや、全然。あの頃は、とりあえずベータ版でいいから作って出そうぜ!みたいなノリの時代だったじゃないですか。僕自身、そういう会社をいっぱい手伝ってお小遣いを稼いでもいた。『グリー』もその中の一つという感じでいたら、そのままズルズルと引き込まれたw で、半年後には取締役になっちゃいましたね。

— naoya:その頃、まだ週に何回か手伝ってるという時期に、さっき話したように藤本さんと一回会ってるんですよ。『グリー』のオフィスに遊びに行ったら、「藤本です~」って出てきて。一番最初がそれですよ。

— 藤本:はいはい。その時のnaoya先輩はもう既に超有名人じゃないですか。なんかすごい人来たな~ってw

— naoya:違う違うw


▲マグロの赤身に、カマスと山芋の炙り。藤本さんにも美味しく召し上がっていただけているようで一安心です。

頂点に戦いを挑む「No.2」であることが逆に心地よかった

— naoya:でも、週のうち何回かしか行ってなくて、そこからフルコミットしようぜ、っていうまでに何があったんですか?

— 藤本:うーん、今思うと、あれこれお手伝いしてた中では、『GREE』は一番大きなサービスだったこともあったけど…なんか、ひたすら巻き込まれた感が強いですかねw

— naoya:当時、『mixi』とユーザー数の差が開いていった時期じゃないですか。そのタイミングで、この会社にフルコミットするぞって…

— 藤本:まあね。

— naoya:リスキーな判断っていう感覚はなかったですか?

— 藤本:とりあえず、食うのに困るとは思ってなかったし、当時はまだ会社の人数も少なかったんで、追いかける方が楽しいじゃんって感覚だったかな。あと、田中は真剣だったし、面白い発想を持ってたから。逆にトップ走ってる会社からCTOで来てくださいって言われたら、そっちの方が辛いわw 2番の方が面白いよ。

— naoya:いや、面白いって言えるレベルの2番手じゃなかったでしょ!

— 藤本:wwwwww

— naoya:対抗馬の『mixi』は最初から法人としてやってたけど、『GREE』は田中さんが個人でやってて、会社にするのが遅かったんですよね。サービスが育ってきて、もうこの規模じゃ無理ってなってから会社にしたわけで。僕も、田中さんと当時一緒にご飯食べに行ってたりすると、彼の携帯に障害のメールが来て、「ゴメン、ちょっと帰るわ」とかやってたから。まだ会社じゃなくて、個人でがんばってて。昨日はすいませんでしたってメールが翌朝来るみたいな。それ、辛いでしょってw

— 藤本:2004年の12月くらいから、僕がその係になったわけなんだけどねw

— naoya:実は田中さんが一人で『GREE』をやってた頃に、ほんのちょっとだけ手伝ってるんですよ。

— 藤本:え、それは知らなかった!

— naoya:サーバの設定周りとか、学校機能を作るときの最初のデータベースとか。スクレイピングしてきてパパッと。そういう細かいところをちょこっとだけ。

— 藤本:あれはnaoyaの仕業かぁ。なるほどね。

— naoya:あと、『GREE』を使ってアンケートを取るみたいなことをやってた時に、そのプログラムも書きましたね。

未踏の荒野を切り拓いてきた2人が語る、CTO不在のあの頃

— naoya:ちょっと話飛んじゃうんですけど、この1年くらい、CTOってどう?みたいな話が盛り上がってますよね。藤本さんは現役だし、僕も経験あるから、お互いいろんなところで話をする機会があったと思うんですが。

— 藤本:スタートアップが増えてきたからかな。それで、スタートアップのエンジニアリングをどうすればいいんだろうってところが注目されてる感はあるね。

— naoya:この2年くらい、スマホが伸びてきて、スタートアップ増えて、そこから無事に離陸できた会社は、なんか人増えてきたらうまくいかないぞって。マネージャーがいないぞって。

— 藤本:それはそうでしょうね。

— naoya:で、CTOって必要なんだってことになって、僕らみたいに現場でマネジメントを覚えてきた人の話を聞きたいってなってるのかもしれない。

— 藤本:スーパー余計なお世話なんだけど、インターネット業界全体のことを考えると、5年前、10年前と同じ苦労するっていうのはナンセンスだと思うんですよね。そんなことでつまづいているヒマはねぇ、っていう。だから、基本包み隠さずお伝えするので、なんでも聞いてくださいよっていうスタンスですね。

— naoya:僕らの場合はWeb系のCTOの先輩っていなかったですもんね。エンジニアリングカンパニーをどうやって創っていけばいいか、教えてくれる人はいなかった。

— 藤本:まあ、確かにロールモデルになるような人っていなかったかも。メーカーやSIerとかのCTOは、また毛色が違うしね。海外とかには、いたのかもしれないなぁ。でも2005年当時、そんなに来日してくれてたわけじゃないと思うし…とりあえず、僕の観測範囲には見当たらなかったかな。

— naoya:前回登場してくれたセコンさん(*クックパッドのCTO・舘野祐一氏)は、僕らより一回り世代が下だから、先輩がいるんですよ。僕らはロールモデルらしい存在がいなかったから、なんとか形を作って、失敗もしながら今に至ってて、そういう意味では藤本さんは、Web系のCTOでは第一人者かなと。

思い出すこと全てが「すいません」なGREEの黎明期

— naoya:それはさておき、藤本さんとちゃんと話したのって、『GREE』が主催するオープンソース勉強会でしゃべってくれっていう依頼があって、登壇したあたりから。藤本さんは技術顧問だし、僕が『GREE』に入った後も上司だったので、ずっと年上だと思ってた。そしたらある時、年齢がわかって「こいつ、年下じゃねぇか!」ってw 10年近く先輩だと思ってたもんなぁ。

— 藤本:知らねぇよ、そんなのw

— naoya:そんな感じだったから、今でも「さん」づけで敬語が抜けないっていう。

— 藤本:僕からしたらあれですよ、こっちはヒラのエンジニアだから、naoya様!みたいな…

— naoya:でた、めっちゃメンドクサイ謎の謙遜w

— 藤本:でも、当時のことはあんまり記憶にないんですよ。スタートアップって、やればわかると思うけど、そんなに余裕がないというか。目の前のことを全力でやるっていうのを、ひたすら毎日続けるっていう。ここからは苦難と反省の歴史しかありませんね。

— naoya:その頃からも含め、技術以外に、自分がやんなきゃって思ってたこと、あります?

— 藤本:採用関連とかね。あと情報発信。インタビュー依頼を受けたりとか。まぁ、楽しいエピソードはないですね。まず、最初に組織のレイヤー作るところとかね。それこそ、数人からはじまって、2ケタになって、3ケタになって…そういや、naoyaさんのときはどうでした?

— naoya:やっぱり最初、そこですね。っていうか、自分がマネジメントするんだって覚悟を決めるのが最初のハードルですね。

— 藤本:僕、それまで、ひたすらに個人プレイヤーだったし、会社でもチームでなんかやるというより、個のパフォーマンスをどうやって出すかということに120%フォーカスしてた。チームと言っても、その中の個々人がプロとして頑張れよ、みたいな。

— naoya:それが間違いだって気づくまでが最初のハードルですかね。

— 藤本:たとえば、マネジメントスタイルって色々ですけど、みんなのことを考えて、それでも個を大事にするみたいなマネジメントもあるわけじゃないですか。でも、それって自分が個人主義者だから何も考えないというのとは、紙一重だけど雲泥の差があって。そのダメな方が自分だったわけですけど。

— naoya:最初のマネジメントの壁っていうのは10人、20人くらい?

— 藤本:まあ、そうっすね。

— naoya:そういうときが必ずやってくるんですよね。たとえば、人が増えてきたときに、会社の中でこれやんなきゃいけないって思ってることがみんな違う、みたいなことが発生したりとか。ユーザーがこういうことで困っているから、この課題解決したいって思う人もいれば、お金稼がなきゃいけないって思う人とか、採用頑張らなきゃって思う人もいて。みんなそれぞれが思い思いのことやって、チームプレーになってないから、出てくる成果物がめっちゃこじんまりしてたりとか。人はいっぱいいるのに、なんで僕らこんなに仕事できないんだろうとか。

— 藤本:僕の場合の最初の壁は、組織を作れっていう話が社長から降りてきて、自分の確固たるマネジメントの信念とかないから、あぁそうなんだと真に受けて、何も考えずにみんなに「こんな感じでいくわ」ってボヤっと言ったら、マジギレされたみたいなw

— naoya:何を言ったんすか?

— 藤本:いや、普通に役割とか分担して、こういうグループでやっていきましょうとか。すると、みんな怒って会議室から出て行っちゃった。これ、結構、トラウマになってるんですよね。

— naoya:はじめて組織に枠組みを作って、こういう役割分担で、この人がリーダーで、っていうのを提案したら、ふざけんな!って話になったってことですか?

— 藤本:一人ひとりの個性とかやりたいことを全部無視して、上から「こうしましょう」ってやっちゃった。今にしてみれば、自分でもマジギレするだろうなぁw

— naoya:なんか、反省会みたいになってるじゃないですかw

— 藤本:昔の話をし始めたら反省会にしかならないよ!

— naoya:その前に、藤本さんがいかにすごいかっていう話をしなきゃw

naoyaが思い描くCTOの理想像に近かった藤本氏の存在感

— naoya:僕は、それまでの会社で CTOの肩書きを持っていたんですけど、『グリー』に入って、はじめてエンジニアリングの領域で上司ができたんです。それで、藤本さんのCTOとしての働きぶりを目の当たりにして、「あ、自分は今までCTOじゃなかったんだ」って思ったくらいですからね。

— 藤本:またまたぁ。

— naoya:僕、すごい反省をして、自分はCTOとして全然やれてなかったんだなって思いました。まずね、『グリー』は僕が入社した当時、すでにエンジニアが70~80人いて、藤本さんがすべてのエンジニアからレジェンド視されてたんですよ。精神的支柱というか。人数も多いし、会社も急成長してたから、いろんな問題が起きるんだけど、最終的には藤本さんに相談したらなんとかなるわ、っていう雰囲気。

— 藤本:そうだったかねぇ。

— naoya:僕がすごく印象的だったのは、とある障害対応でみんながテンパってるときに、藤本さんが最終的に出てきて一番難しい問題を直したこと。それはいい面悪い面あって、悪い面としてはいつまで一番大事な部分を握ってんだってのもあるけど、現場のエンジニアからすると、CTOが技術的に一番難しい部分を最終的に解決しちゃうと「あの人は神じゃないか」となる。そういう求心力があって、しかも組織構造がちゃんと出来上がってたから、エンジニアにとって働きやすい環境になってた。相談にも乗ってくれるし、いい上司だなって。

— 藤本:wwwwww

— naoya:僕は藤本さんのレベルにまでいけてなかったっていうことをその時に思い知って、こういう風にしなくちゃいけなかったんだなって、すごく思ったんですよ。当時、僕はマネジメントにシフトして、自分でものを作れなくなっていくことにストレスを感じたんですね。そのジレンマをずっと抱えていたんだけど、藤本さんは全然そんなことを気にしてなかった。「俺もコード書きたいんだよなぁ」とか言いながら、飄々とマネジメントしてた。そういう風に覚悟決めてやんなきゃいけないんだなって。さっきみたいな昔話を聞くと、色々苦労したこともあったみたいですけど、結果的に僕が見たのは、その後の世界。すげぇちゃんとしてんなってw

— 藤本:最初の組織作りに失敗したことが、僕の中では何かのきっかけになったのかもしれない。その失敗の原因はというと、マネジメントをする立場なのに、人と向き合うということに時間を割いていなかったこと。でも、そんなの好きで得意だったらエンジニアなんてやってねーよ、みたいなw

— naoya:それは、僕が出会った上司としての藤本さんとの印象とは真逆なんですけど。

— 藤本:僕、機械が好きで機械とたわむれていたい人なんで、コミュニケーションのコストをいかに最小限にするかっていうことを、勝手ながらも考えてたんですけど、結局それを実現しようと思ったら、みんなに対してオープンで常にコミュニケーションをとっていることが、一番楽じゃね?みたいなことに気が付いて。短期的にはしんどい局面があったり、面倒くさいことばっかり言われるんですけど。

— naoya:非常時にコミュニケーションをとらなきゃいけないくらいだったら、平常時からコミュニケーションをとっておいた方が、絶対的に楽ですよね。

— 藤本:そう。そのことに明確に気付いたのは、最初の組織づくりに失敗してからだし、みんながちゃんと働けるようになんてことを考え出したのもその辺りからですよね。みんなが僕をどう思ってるとか、どういう評価だとかは、全然どうでもいいんですけど。

— naoya:謙遜してますけど、『グリー』を退職していったエンジニアがみんな「藤本さんと仕事ができてよかった」って言うんですよ。それくらいリスペクトされてて。僕も困ったときに何回か助けてもらったことがあるし。あと、すごい忙しかった時期に、僕が少し妥協して人を採りそうになってたのを、それはよくないよって指摘してくれて。この人はみんなのことよく見てるなって思いつつ、でも、これじゃ労働時間がいくらあっても足りないだろって思ったり。

— 藤本:取締役なんで、法律的にはなんの問題もないだろw

— naoya:とにかく寝ないんですよね。夜中まで働いて、その後、朝の5時とかまで飲んで。なのに、次の日の朝7時の会議にはケロッとした顔で出て。それが1週間くらい続くとか。

— 藤本:基本的に負けず嫌いかつ、人にはよく思われたいんでw たとえばミーティングとかあると遅れたくないんですよ。人に迷惑をかけないなら、適当にやり過ごしちゃうんですけど。

— naoya:僕、田中さんのインタビューですごい印象に残ってんのが、自分もすごいハードワークする人間だと思ってたけど、藤本くんってのが入ってきて、彼が無茶苦茶働くんですよって。ふーんと思ってたんですが、入ってみたら本当にすごい働いてて、こりゃやべえなと思いましたから…

— 藤本:まあ、でも昔の話です。今もがんばってはいますが!


▲自家製玉ねぎ醤油をのせたサワラ、貝ヒモと胡瓜の巻物、野菜の天ぷらと、絶品料理が続きます。

組織の急拡大が招いた、企業カルチャーの喪失とは

— naoya:ところで、『GREE』が盛り返してエンジニアの数が増えだしたのは、ソーシャルゲームが盛り上がってきた2007年くらいですかね。

— 藤本:『釣りスタ』が出たくらいからですかね。トラフィックが劇的に増えて、スケーラビリティ云々って話はあったものの、技術的にドラスティックに変わった感覚はなかった。ただ、エンジニアの数は増えました。なにしろ現場では常に人が足りないって言ってたし、経営側は「これくらい人増やせるよね。人が増えたらもっといろんなことできるよね」という感じだったから。

— naoya:一気に人を増やすと、会社にとってトレードオフがいろいろ発生してしまうから、普通は反対するんですけどね。

— 藤本:でも、現場からしてみたら人が欲しいのは確かだし、ウチの会社の人って真面目だから、目標決めたら一直線みたいなところがあるんですよねーw

— naoya:僕はちょうどその人が増えるタイミングで入ったから、何が起こったか知ってるんですけど、仕事しようとプロジェクトを立ち上げて人を集めるんですが、集まった人がみんな入社1ヶ月目だったりとか…w

— 藤本:wwwwww

— naoya:『グリー』における仕事の進め方なんて、誰もわからないっていう。そこからスタートでしたから。これは困ったねぇっていうのが毎回始まるんですよ。ある意味、面白かったですけど。手探り感というか。変なしがらみとかはなかったですからね。

— 藤本:ただ、急に人が増えたことによって、会社のカルチャーがブレてきちゃったというのは反省点。みんな優秀なんですけどね。それまではエンジニアの最終面接をずっと僕が担当していたんだけど、あまりに数が多いので、最終面接役をひとつ下の階層のマネージャーにやってもらうようにしたんです。そうしたら、基準の違うフィルターで選別された人間の集まりになっちゃって、偏差が拡大しちゃった。もともと『グリー』って確固たるカルチャーがあるような会社じゃなかったけど、いろんな人が一気に入ってくることでカルチャーがブレブレになっていったという。

— naoya:カルチャー、薄いかなぁ。エンジニアにとって働きやすい会社だと思うんですけど。あ、エンジニアがめっちゃ天狗になる会社っていうことではなくてね。

— 藤本:naoyaさんが入ってきた頃は、まだそういうカルチャーめいたものがあったかもしれないけど、そこから1000人超えて何が起きたかというと、『グリー』ってどんな会社?って訊かれて、みんな答えられない感じになっちゃってるというのが、イマココみたいな話なんです。ちなみに僕がこの半年、何をやっていたかというと、『グリー』としてのアイデンティティを持てるように種を蒔く仕事をしてました。

— naoya:大変ですよね、1000人規模になっちゃうと。だって、僕が入った時、自分のチームに3人しかいない感じだったのに、2年弱くらいで50~60人くらいになってましたからね。会社全体でみると、週に30人とか社員が増えていくって、わけわかんないですよね。それをマネジメントするのは、確かに大変でした。けど、短い期間でいろんなことを体得できたっていうことも事実。ある種、社会実験みたいな状況だったのかなw これだけたくさんの人が一気に入ってくると何が起きるか?みたいな。

— 藤本:そういえば、なんで『はてな』を辞めて、『グリー』だったの?

— naoya:僕が『グリー』に入ったのは、田中さんと昔からの知り合いで、仕事としてちょっとお手伝いしていたこともあり、その延長線上で、というのが最大の理由ですかね。田中さんが『グリー』を起業した頃から一緒にやろうよって声かけ続けてくれていて。6年間くらい、ずっと。『はてな』に行くとき1回断ったのにもかかわらず、それからもちょいちょい食事する機会があったりして、そういうときに田中さんにはいろいろ教えてもらってた。で、最近どう?みたいな話もよくしてたんだけど、それだったら『はてな』を辞めるタイミングで、一度恩返ししようかなって。

— 藤本:そうだったんだ。へぇー。

— naoya:その頃、ちょうどスマホが伸びてきていたけど、Webの開発って特定の言語に縛られない方向に動いていたので、PerlだPHPだということの不安はなかったですね。どっちかっていうと、ソーシャルゲームに自分が興味を持てるかどうかの方が気になりました。でもまあ、一応ゲーマーだから、なんとかなるかなと。しかし、当時は自分が転職したことがメディアに取り上げられて、ありがたかったけどいろいろ面倒くさいことも起こったりして。

— 藤本:有名人は大変っすねーw

— naoya:田中さんとはもともとただの友達っていう感覚なんですけどね。

— 藤本:CTOから誰かの部下になるというのに抵抗はなかったわけ?

— naoya:正直なかったですね。案外長いものに巻かれるタイプなのかもw もともとエンジニアとしての藤本さんを知っていたこともありますから。

— 藤本:こっちはなんかあったら変わってもらおうという気持ち満々でしたけどね。よっしゃー!ってw

— naoya:そういえば、CTOやってる間って、上司というのが存在しないんで、『グリー』ではじめて上司がいる状態になり、意外と居心地いいなって。めっちゃメンドクサイことあっても助けてもらえるんだなって思いましたね。

— 藤本:wwwwww

— naoya:あと、藤本さんがよく言ってることなんですけど、『グリー』という会社はエンジニアリングだけじゃなくって、ビジネスの方も結構強いじゃないですか。そうすると、エンジニアリングとビジネス、どっち優先するかって部分で必ず衝突しますけど、それをほったらかしにはできないから、藤本さんがエンジニアリング側で大事なこと、譲れないことを、いかに会社全体に浸透させていくか。その部分をキチッとやり続けているのを見れたっていうのは、すごくよかったですね。

インターネット業界で存在感を発揮しているグリー出身のエンジニアたち

— naoya:面白い話でいうと、『グリー』を辞めて、よその会社のCTOになったっていうエンジニアがいっぱいいるじゃないですか。たとえば、『クラウドワークス』の大場さんとか、『クロコス』の聡太郎くんとか、『ラクスル』の山下くんとか、『リブセンス』の平山さんとか。

— 藤本:平山さんはビックリしたねぇ。きちんとやってるって聞くよ。

— naoya:『グリー』では結構やんちゃでしたけどねw こうして出世するのをみるのは嬉しいですね。しかし、全部集めると20人くらいにはなるんじゃないですか?

— 藤本:CTOの肩書き持つ人はそれくらいいるかもね。

— naoya:元『グリー』社員のCTO飲み会っていうのやりましたよね。あの飲み会、結構面白かったなぁ。CTOじゃないのに、なぜか僕も呼ばれたんで顔出しましたけど。そういう風に辞めた後もつながってるって、結構、印象的なんですけど。

— 藤本:なんかねぇ、意外と辞めた後も仲イイ人間、多いよね。

— naoya:今、『グリー』出身の人間が、いろんなスタートアップで、『グリー』時代のネットワークを活かして、仕事を受注したり発注したりってことをやってるんじゃないかな。

— 藤本:僕が仕事しているのをそばにいて見てて、上手くいったこと、失敗したことの実例を知ってるから、彼らの仕事の成功確率はいくらか上がるんじゃないですか。

— naoya:それこそ『グリー』は投資もしてるじゃないですか。スタートアップに。

— 藤本:何社かさせていただいてますねぇ。

— naoya:もしかしたら、インターネット業界全体のエコシステムにさえ影響を及ぼしてたりするんですよ。人材っていう意味では。いっぱい優秀な人たちがいて、その優秀な人たちがある時期急激に集まってきた感はありますね。でも、それが解散してるわけで。それもまたすごい話だなと。

— 藤本:wwwwww

— naoya:だからこそ、人のつながり、ネットワークが残ってるというのはあるかもしれませんね。


▲後編では藤本さんのために特別に用意してもらった、飛騨牛の炭火焼も登場します。

次回予告

伊藤氏の激賞とは裏腹に、韜晦するかのような語り口で、「なんとなく巻き込まれた」という『グリー』に参画する経緯と、マネジメントで四苦八苦した話を包み隠さず披露してくれた藤本氏。そんな彼が、いかにして「CTOとはかくあるべし」と開眼するにいたるのか――。

藤本氏が七転八倒の先に見出したCTO道の本質に迫る【後編】、刮目して見逃すな!

⇒【後編】の記事はこちら

藤本さんがCTOを務めるグリーでは、【Nativeゲーム】プロダクト開発エンジニアの採用を行っています。新たなヒットタイトルの開発に挑んでみたいという方はぜひ求人情報もチェックしてみてください。

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取材協力

鮨心(すししん)
〒106-0047 東京都港区南麻布4-12-4 プラチナコート広尾 1F
TEL:03-3280-3454

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インタビュアー紹介

伊藤直也

ニフティ、はてな取締役CTO、グリー統括部長を経て2013年9月よりKaizen Platform, Inc. 技術顧問。ブログやソーシャルブックマークなど10年間、ソーシャルメディアの開発と運営に携わる。著書に『入門Chef Solo』(達人出版会)『サーバ/インフラを支える技術』『大規模サービス技術入門』『Chef実践入門』 (技術評論社) など多数。

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