この企画は、Web業界で名を馳せる伊藤直也氏と注目企業のCTOが、

寿司を摘まみつつホンネで語り合う、かつて無かったインタビュー企画である。

このエントリーをはてなブックマークに追加

【前編】大先輩のフリークアウトCTOが語ってくれた、

マネジメントの深くてイイ話[ #naoya_sushi ]

Twitterでハッシュタグ「#naoya_sushi」が生まれてしまうほど、無類の寿司好きとして知られる伊藤直也氏(@naoya_ito)。そんな伊藤氏をホスト役とし、トップエンジニアをゲストに招いて、寿司をつまみつつホンネで語ってもらおうという、この企画。

第三回のゲストは、エンジニア界隈では知る人ぞ知る存在である「ミスター・アドテク」こと、明石信之氏。オンライン広告の新トレンドとして注目を集める「DSP(Demand-Side Platform)」の分野をリードする『株式会社フリークアウト』で執行役員として活躍しながら、古巣の『ヤフー株式会社』ではシニアフェロー/名誉黒帯を務める明石氏。長年、インターネット業界の最前線に身を置いてきた明石氏だからこそのマネジメント論と独自の視点を、たっぷりと披露していただきます。お楽しみに!

▲大の魚好きという明石さんをもてなすべく、新鮮なネタをたっぷりとご用意しました。

naoya、初対面の明石氏の前でガラにもなく緊張する?

— 伊藤直也(以下「naoya」):緊張してます!

— 明石信之(以下「明石」):僕もです!

— naoya:おそらく初めまして、ですよね? 明石さんは、お酒飲まれますか?

— 明石:ええ、弱いんです。

— naoya:あら?

— 明石:出されると、あるだけ飲みたくなっちゃうんですw

— naoya:ああ、かなりお好きなんですねw ところで、『フリークアウト』でのお立場はCTOっていうことでいいんですよね?

— 明石:一応、技術領域を担当してるんですけど、対外的には担当のない執行役員なんです。ただ、英語の名刺をつくるときに、CEOから「肩書きは好きに付けていいよ」って言われたので、じゃあ、一番わかりやすいだろうってことでCTOにしちゃいました。元々は『フリークアウト』が上場を控えてるタイミングで、組織を大きく育てていくためにはどうしたらいいかっていうあたりから考えて欲しいという話だったので、技術領域だけを見てるというわけじゃないんですけど。まあ、何でも屋さんですw

— naoya:なるほど。確か、『ヤフー』に入られたのが2000年ですよね。

— 明石:そうです。この世界に飛び込んで15年目でしたかね。

— naoya:実は僕、2002年に新卒で『ヤフー』を受けて内定貰ってたんですよ。

— 明石:えっ!そうなんですか。どうしてそのまま入社しなかったんですか?

— naoya:当時、『ニフティ』からも内定を貰っていて、大学の友達10人くらいに、どっちがいいと思う?って訊いたら、大体が『ヤフー』って即答したもんだから、これはあえて逆に行ってみようかなって。

— 明石:反骨精神たっぷりですねw

— naoya:なので、もしかしたら明石さんの部下になってたかもしれませんね。でも、『ヤフー』時代は今ほどメディアに露出されてなかったですよね?

— 明石:どれだけ自分が検索エンジンに引っ掛からないで生きるかをテーマにしてましたからね。

— naoya:えっw

— 明石:そもそも『ヤフー』ってタレントが多かったので、僕なんかが露出しなくてもいいだろうって思っていて。

— naoya:いや、日本のインターネット企業のCTOってそんなに多くないから、どこの会社の人でもほぼ顔が浮かぶ感じだったんですけど、明石さんは結構謎のベールに包まれてまして。

— 明石:まあ、それが狙いでしたからw

— naoya:最近は、少し露出が増えてきてると思うんですけど、やっぱり採用の絡みですか?

— 明石:そうですね。『フリークアウト』に入って最初に感じたのは、まだまだ名前が世の中に届いていないなぁと。特に学生のみなさんに。なので、採用を頑張るならキチンと露出していかないとダメかなと思いまして。人事部門の仰せのままに動いてますw

— naoya:やっぱり露出するのは得意じゃないってことですか?

— 明石:いまだに苦手ですね。今日は伊藤さんに会えるのと、寿司をご馳走になれるということで、二つ返事でしたけどw

— naoya:それにしても、今まで全然接点なかったですよね?

— 明石:『ヤフー』では内向けの仕事がほとんどだったので、外の人たちと会う必要性がなかったですからね。

— naoya:逆にどうですか、僕みたいに露出の多いエンジニアって。ナンパだな、アイツらって思ったりしませんか?

— 明石:いや、できる人はやればいいと思ってるからw 海外だと露出することが仕事だったりもするじゃないですか。日本もだんだんそうなってきたのかなって。


▲本日は、タコの酢味噌がけ・切干大根・そら豆という三品の先付けからスタートです。

CTOの大先輩に聞く、1500人と40人を束ねることの違い

— naoya:ちなみに明石さんと僕って、年が一回りくらい違うじゃないですか。でも、インターネット業界でマネジメントやってるような人たちでよくみる方って、僕よりも数歳くらい上が限度で、それよりも年上の方にお会いする機会ってほとんどないんです。業界自体が新しいから、意識的に組織をまとめ上げていかなきゃいけなくなった最初か2番目くらいの世代が、僕らだったのかなと思うんですよ。その意味からすると、明石さんは一番先頭を走ってたんじゃないかなって。

— 明石:どうでしょうね。

— naoya:なかなか先輩の話を聞けないから、セオリーとか全然わかんなくって。マネジメントも全部手探りでやってましたからね。

— 明石:そもそも「CTOって何なんだ」ってところからでしょ?

— naoya:ですね。明石さんが『ヤフー』でCTOになられたのって、2009年ですよね? 当時、エンジニアは1500人くらいですか?

— 明石:そう。そのうち、フロントエンドエンジニアが800人でしたね。

— naoya:1500人を束ねるCTOと、今の『フリークアウト』でのCTO的な仕事って、全然違いますよね?

— 明石:もう、全然違います。

— naoya:1500人のCTOの1日ってどういう感じなんですか?

— 明石:えーと、ミーティングだけですね。

— naoya:ううw

— 明石:まあ、ミーティングだけってのは、半分ホントで半分ウソみたいなところがあって。あの頃はCEOが技術的にやりたいことが明確だったんだけど、それをどう実現するかっていうのをものすごく悩んでいる時代だった。だからこそ僕がCTOを拝命したのかなって。CEOがエンジニア出身で、気質も僕と近いものがあったから、ニュアンスも含め何をやりたいかはわかっていたので。

— naoya:何をやるかっていうところから具現化していく、CEOの懐刀っていうことですね。

— 明石:そうですね。ただ、さすがに1500人もいると、やるべきことをキチンと伝えないとみんなが同じ方向に向かっていかないんですよ。だから、最初に「これをやるんだ!」っていう絵を書いて、その実現に向けて組織を引っ張っていくのが仕事ってことになりますね。

— naoya:対して今、『フリークアウト』のエンジニアって何人くらいですか?

— 明石:40人くらいです。

— naoya:それくらいだと、みんなの顔もわかるじゃないですか? 1500人だと、全然わかんない人も出てきますよね?

— 明石:最初に覚えられるのは、マネージャーとリーダーくらいまでだったかな。だから、まず1500人全員にテーマを発信して、マネージャー層にはその達成に向けて「何をやるべきか」を伝えて、それをドキュメント化してもらい、メンバーに落としてもらってました。

— naoya:僕は顔がわからない規模の会社のマネジメントって経験したことがないので、まだよくわからないところがあって。自分が認識していない人たちが、自分の言ったことを実行してるって、どういう感じなのかなって。

— 明石:うーん、やっぱり1500人もいると、人それぞれで伝わり方が違ってきちゃいますね。間違った理解で突っ走る人もいるわけで、どうやって全員の意識を同じものにしていくかってところは大変でした。ただ、そもそものところで、マネージャーやリーダーが違う理解をしていたらメンバーには正確に伝わらないので、彼らに対して噛み砕いていくっていうことが重要でした。

— naoya:その辺りは、僕も50人とかを束ねる時に感じたことと同じ感覚なので理解できるんですけど、その先に顔も知らないメンバーがたくさんいるってなったときに、自分にはどう見えるのかっていうことにすごい興味があって。ただの数字に見えちゃったりする瞬間もあったりするのかなと。

— 明石:いや、そんなことはないですよ。あの頃、誰でもなんでも投げ込める「よろず相談会議」っていうミーティングを設けたんですが、それで現場の意見なんかも結構出てきて、みんながどう思ってるのかを拾ったりしてました。

— naoya:なるほど。今みたいな話を聞いてると、その規模は自分の想像できる範疇なのかなって感じます。ここから、たとえば、グローバルカンパニーだとすると、1万人の社員が世界中に散っていたりするわけで、もうそれってシミュレーションゲームでもやってるみたいな感じになっちゃうのかなって思ってたりもしたんですけど。

— 明石:いや、外資の大手だと、みんな自分の上長しか見てない組織が多いから、逆にすごくわかりやすいですよ。

— naoya:そうかー。勉強になります。ところで、明石さんは今でも『ヤフー』のフェローなわけですよね。ここはぶっちゃけて訊こうと思うんですが、「やめてもいいから名前だけでも貸してくれない?」みたいなコミュニケーションはあったんですか?w

— 明石:当初は100%足抜こうと思ってたんですけど、「大体やることはやったから、もういいんじゃない?」って話をしたら、「いやいや、お前、まだやることあるだろ?」ってw

— naoya:なるほどw でも、今はほとんど関わってないんじゃないですか?

— 明石:今日も『ヤフー』に行ってきましたw

— naoya:そうなんですか?大体どのくらいの割合なんですか?

— 明石:『ヤフー』2:『フリークアウト』8くらいですかね。


▲辛子と味噌でいただくサバに四日間寝かせたイシダイと、旬の味が続きます。

技術力によらずして、現場の信頼は獲得できるのか

— naoya:でも、今の40人の規模で顔がわかってる状況だと、またやり方が違うわけですよね。

— 明石:実は『フリークアウト』に入るときに、1個だけ決めてたんですよ。「何もやらない」って。

— naoya:なんとw

— 明石:要は現場に任せるってことなんですけど、技術方針も含めて、キチンと現場が考えて、自分たちの意志でやっていかないと。1500人のときにやっぱり感じたのは、結構、やらされ感のある人が出てしまってたなぁって。

— naoya:そりゃあそうですよね。自分が考えたわけじゃない方針が、2~3階層経て届くわけですからね。

— 明石:『フリークアウト』にはベンチャー気質のあるメンバーが多いし、トップダウン的に物事を決めるよりも、僕が入る以前の流れを壊さないようなカタチで、自分たちで考えてやっていける状況を維持することの方が大事かなと。

— naoya:なるほど。でも、何もしないでみんなの信頼を勝ち取るって難しいじゃないですか。人の上に立つからには、自分たちのリーダーはこの人なんだって思ってもらうためのアイデンティティというか、何かが必要だと僕は思ってるんですけど。一番わかりやすいのは、その現場で力を発揮して、「あの人はできる人だからリーダーになってもらおう」って思ってもらえるパターンが簡単ですよね。

— 明石:そうですね。

— naoya:なのに、いきなりみんなの上に立って、それで「何もしない」って決めてマネジメントするときにどうやって信頼を勝ち取っていったのか、すごく興味があるんですけど。

— 明石:やっぱり時間かかりますよね、その方法だと。でも、それがチャレンジであり、課題であり、面白いところでもあるんですけど。

— naoya:一番最初は何をしました?

— 明石:やっぱり全員と1on1で話して…

— naoya:やっぱりそうですよね。僕もそうすると思います。『ヤフー』のときは、現場で頑張って、本国に行って日本にはない技術を持って帰ってきてっていう、言わば「先頭を走ってる人」だったわけじゃないですか。その実績があるから、周囲も納得しやすかったと思うんですよ。『フリークアウト』ではそれがないわけじゃないですか。そのあたりで苦労したり、プレッシャーを感じることもあったりするのかなぁって。

— 明石:そうかもしれないけど、あえてそういう場所に自分から飛び込んでいるので、プレッシャーに感じる必要はないんじゃないですかね。そうなったら、自分が自分じゃなくなっちゃうんで、余計仕事ができなくなっちゃうw

— naoya:頭ではわかるんですけどね。規模は比較になりませんが、僕は結構それで苦労したことがあるんです。以前の会社では、社員が数人のときから50人くらいになるまで経験して、最後の方はコードを書かなくなっても、何か不具合があったときには大体あの辺じゃないかって勘が効くから、最後は自分が直せばいいっていう拠りどころがあって。

— 明石:わかります、わかります。

— naoya:そういう気構えがあって人の上に立っているのは、自分的にも安心感があったんです。でも、そこから別の会社に転職したら、すでにエンジニアが数十人いて、システムもかなり大きくて、なんにもわかんなかったんですよ。目の前で障害が起こっても、わからないから見てるだけっていう状況で。「あれ? 俺、使えない上司になってる?」ってw

— 明石:イメージわかります。

— naoya:明石さんにもそういう悩みはなかったのかなぁって。

— 明石:まあ、『フリークアウト』に入ったばかりの頃は、リハビリして、エンジニアに戻りたいなぁって。

— naoya:やっぱり、そうなんですか?

— 明石:でも結局、できないまま1年経ってしまって。いまだにエンジニアリングへの想いはあるんですが、今からプロダクト開発の現場にフルコミットもできないし。僕も悩んでます。

— naoya:今、明石さんでも悩んでるって聞いて、ちょっとホッとしました。もし、「そんなこと気にしてちゃダメだよ!」って言われてしまうと、「そんなに強くないとやれないのか、この仕事は」ってなっちゃいますからw

— 明石:ただ、その想いだけにとらわれてしまうほどには悩んでないですよ。

— naoya:まあ、エンジニアの世界では得てして若い人の方が優秀ですけど、それをスキル的に上回らなきゃダメってわけじゃないですからね。たとえば、古くからいてプロダクトをよく知ってるとか、その人なりの希少価値がアイデンティティになるので。だけど、転職するとそれがゼロになるじゃないですか。しかも、いきなりマネージャーからとなると、人間力で信頼を獲得するしかなくて、「俺、人間力で信頼獲得できるようなヤツなんだっけ?」ってなっちゃうんですよ。それが難しいところです。

— 明石:『ヤフー』の場合は、そもそもの根幹の技術はわかっていたので…

— naoya:そう、コアテクノロジーを知ってるから、柱になるところがわかるじゃないですか。

— 明石:何があっても、ちょっと説明聞いただけで大体わかるんです。だけど、『フリークアウト』の場合は、そうはいかない。ある意味、ブラックボックス。その中で自分がどう動くか。

— naoya:そうなんですよね。僕も、この問題に関してはいまだに難しいなと思ってます。『Kaizen Platform, Inc.』にも技術顧問というカタチで入ったんですが、今でもシステムの細部はよくわからない。でも、マネジメントやってるんですよ。ただ、CTOは別にいて、技術的に判断の難しいところにはノータッチでいられるから回ってるんですけど、もし仮にCTOがいなくて僕がそのポジションだったらと思うと、この問題は結構シビアなんですよね。解決方法がない。後からマネージャーになるのは大変っていう。

— 明石:もし、『フリークアウト』ではコアとなるエンジニアがいなかったとしたら、やらざるをえなかっただろうけど、僕が入った時にはそういう人材がいたので。


▲美味い肴には美味い酒だろ、ってことで日本酒が登場しました。

企業の掲げるビジョンとは、単なるお題目か否か

— naoya:そうだ、これは絶対訊こうって思ってたことがあって。『フリークアウト』のコーポレートビジョンに「人に人らしい仕事を」っていうのがあるじゃないですか? 言いたいことは何となくはわかる気がするんですけど、エンジニア文脈で翻訳すると、どういうことを指してるんですか? あと、そういうのって、みんな素直に共感してるものなんですか?

— 明石:エンジニア文脈でって、なんか意地悪な質問だなぁw まあ、人らしい仕事をつくっていくのが、本来のエンジニアの仕事なんですよ。もともと人がやる仕事を、エンジニアリングで変えていくわけじゃないですか。

— naoya:なるほど。そうして根源的に人がやる仕事だけを残していくと。確かにそれはそうですね。

— 明石:うん。なので、機械がやれる仕事は、機械がどんどんやるべきだろうし、そうでないところに人が知識や経験を使える状況にするっていうことが、エンジニアの仕事でしょう。

— naoya:あれ? なんかすごく納得感がある答えが返ってきた。

— 明石:

— naoya:ああいう会社のスローガンとかって、なんかこう、皮肉めいて読んじゃったりするじゃないですか?

— 明石:僕としては『フリークアウト』のスローガンは、全然違和感ないんです。

— naoya:あれって最初からあの言葉だったんですか?

— 明石:それっぽいことはずっと言っていて、2013年の終わりごろに明確に言い出したんじゃなかったかな。

— naoya:「How Google Works」をこないだ読んだ時に、会社のコーポレートビジョンってどこもつくるけど、多くの会社は社員があんまり真剣に受け取ってないって書いてあって。それで面白かったのは、本当にそのビジョンに社員たちが心から共感しているかどうかは、そのビジョンをちょっと変えてみた時に、現場のみんなが拒絶反応を示すかどうかでわかると。で、『グーグル』の「Don't be evil」でしたっけ? あれをもし辞めるって言ったら、『グーグル』の人たち、みんな怒ると思う。つまり、中の人たちはそれに共感してる。

— 明石:フリークアウトのビジョンもそれくらいは浸透してるかな。

— naoya:僕はさっきの、エンジニアが頑張って、人間にしかできない仕事を残しましょうっていうのは、確かにすごい共感できるので、非常によいなと思ったんです。一方で、僕もいくつかの会社と関わり、いろいろとビジョンを掲げてきたんですけど、みんな納得してくれてたのかなぁって。ところで、『フリークアウト』といえば、「50ms or die」っていうスローガンもありましたけど、これは今でも掲げてるんですか?

— 明石:エンジニアの間では今でも言ってますね。そもそもRTB(リアルタイムビッディング)の世界では、100msecの間にSSP(Supply-Side Platform)にリクエストを返さないといけないんですが、そこからのネットワークレイテンシーとかを考えたときの逆算で、僕らDSP(Demand-Side Platform)は50msec以内に処理を終わらせないと取引が成り立たないという意味から来ています。『フリークアウト』はPerl系の会社なので、Perlの言語的にちょっと文字ってあるんですよ。

— naoya:あれは文字通りの意味とは違うコンテキストが背景にあって、エンジニアにしかわからないメッセージですよね。「or die」っていうのがね。Perl には「偽ならプロセスを死なせよ」を「or die」と書くイディオムがある。それを文字ってる。

— 明石:でも、ホントにプロセス停止しちゃったらダメですよねw

— naoya:そのくらいの覚悟だっていうね。

技術的優位性がビジネスの成否を左右する、アドテクの魅力

▲差しつ差されつ、なかなかのハイペースで日本酒が無くなって行きます。


— naoya:僕、3年くらい前に初めて『フリークアウト』のオフィスに行ったとき、RTBとか全然知らなかったんです。それで、普通に「RTBってなんすか?」って訊いたら、焼肉食いながら丁寧に説明してくれて。まあ、内心ではコイツ何しに来たんだって思われてたでしょうが…

— 明石:そこは寿司じゃなくて焼肉なんですねw

— naoya:それで、100mm/sec以内ですごいトランザクションをさばいて、最適な広告を出すっていう話だったから、「あ、これって、最適化問題なんだ」と。そこでいろいろアルゴリズムを工夫して、そういうことで最適解を求めるっていう話なのかなと思ったら、当時はその前の段階で、「今はトランザクションを最大化するのがミッションで、それができないとアルゴリズムとか言っててもしょうがないんですよ」って。とにかく、1ミリ秒でもいいから速く処理するっていうのが当面のミッションなんですと。

— 明石:最初の頃はトランザクションを増やせばそのまま売上に直結したんですよ。でも、今は基盤技術が成熟してきたのと、競合サービスが増えてきたというのもあって、差別化を図らないといけない。最近は、サイエンスでの取り組みや、アルゴリズムの最適化は大きなテーマになってます。

— naoya:僕、そこがすごく面白いところだと思うんですよ。それって結局、技術優位性を築けば競合に勝てるっていうことじゃないですか。実は、インターネット業界って、エンジニアが重要って言いながらも、技術優位性がビジネスとリンクしてるケースってほとんどないですよね。『グーグル』がエンジニア天国みたいな環境を築いて、すごくハッピーだねって言われてますけど、あれはエンジニアにとってハッピーな会社をつくったから成功したんじゃなくって、エンジニアが頑張って検索のスピードを速くすることで会社が儲かって利益も生み出せるっていう構造をつくったから、必然的にエンジニアの生産性を上げるために、彼らがハッピーになる会社になったって思ってるんです。

— 明石:はいはい。

— naoya:僕はずっとコミュニティサービスの世界で生きてきましたけど、頑張っても、技術的な難しさのある問題を解決することと、ビジネスがなかなかリンクしないんですよ。そうすると、技術的に難しい問題を解いていた人が、会社の中で最大限に評価されるわけじゃなくって、解けてよかったねで終わってしまう。RTBの話を聞いた時、スピードとかアルゴリズムが勝負の世界だったら、エンジニアリング的に正しいことをやった人が一番評価される機会が多いんじゃないかなって思ったんです。うらやましいなって。

— 明石:その通りで、ビジネスを生かすも殺すもエンジニア次第っていうプロダクトなんですよ。たとえば、自分が新しいアルゴリズムをつくったときに、それが売上に直結するっていう面白さがある。これは他のWebサービスでは、あまりないんじゃないでしょうか。人それぞれだとは思うんですけど、アドテクって、エンジニアの成果がビジネスに直結するという点が魅力だと思うんです。数字として表れてくるんですよ。仮に営業の案件数が同じでも、僕たちがいいものをつくれば売上は上がる。

— naoya:世の中的に、エンジニアはビジネスに興味がないって思われてるかもしれないですけど、そんなことはないですよね。エンジニアの仕事がビジネスに直結する機会が少ないから、ビジネスに関われないことが多いっていうのが実際のところで。アドテクはエンジニアが頑張ると数字が伸びるっていう話、非常にいいことだよねって純粋に思えます。

— 明石:普通のWebサービスで、このボタン1個増やすといいんですよ、って言われてつくるのと、アドテクでこの機能をつくると、むちゃくちゃ売上が上がりますって、仕事としては似てるけど、全然意味が違うので。

— naoya:そうですよね。

— 明石:あと、ここは面白いと思ってくれるエンジニアがどれだけいるかは、まだまだ難しいところなんだけれど、売上を上げりゃいいっていうもんでもないところですよね。これは『グーグル』などもそうだと思うんですけど、短期的な施策で売上を上げることによって、結果、長期的に見るとシェアを下げてしまう。たとえば、明日、売上を倍にすることはできます。でも、1ヶ月後にシェアが半分に減ります。そんな施策もあるんです。

— naoya:たとえば、メディアの世界だと、今広告枠1つしかないところを、5枠にしたら、売上3倍くらいになるじゃないですか。でも、それは広告だらけのページになって、誰も見にこなくなってしまう。それはRTBの文脈だと、どうなるんですか? 短期的な施策でよくないことって…

— 明石:たとえば、インプレッションを増やしても、CTRやCPAが悪化するとか。これはユーザーも離れるし、広告主も離れちゃいますよね。

— naoya:それってコントローラブルなんですか?

— 明石:ある程度は、コントローラブルです。

— naoya:そこってエンジニア的にあんまり乱暴なことはしないような気がする領域では?

— 明石:ええ。乱暴なこと言ってくるのは、たいてい直近の売上確保のための施策だったりするんです。

— naoya:なるほどw

— 明石:エンジニアはある程度、ポリシーとモラルを持って取り組むべきだと思ってます。


▲天然ホタテにトリュフオイルをかけて。明石さんもnaoyaさんも激賞の美味しさです。

チーム名は5つの色――ブッ飛んだ発想の先にある狙い

— naoya:今の技術的優位性とお金の話がちゃんとリンクしているっていうのは、非常に僕の中では重要なことで……実は、この企画の第一回で、『クックパッド』の舘野さんが「クックパッドは技術の会社じゃない」って言ってて、おそらくあれもそういう意味なんですよ。優秀なエンジニアをたくさん集めてきて、エンジニアリングだけをやらせているのでは、会社の利益にはならないって。だからサービスのことを考えたり、ユーザーのことを考えたり、そういうこともできないとダメなんだって。

— 明石:そうですよね。

— naoya:一方で、技術を純粋に追求するということを善しとできるっていうのは、ものすごくいいなと思うんです。僕はコミュニティサービスをやってて、エンジニアリングが重要ですと言ってきたけど、技術的に面白い仕事とそうじゃない仕事が並んだ時に結構迷っちゃって。ずっと悩みが多かったですね。だから、「これもっと速くして!」って言い切れるのは、楽しいというか羨ましいなと。

— 明石:アドテクというものがそうですからね。なので、広告は好きじゃないけど、アドテクというテクノロジーは好きというエンジニアもいます。でもね、それって、今ある広告が嫌いなんだと思うの。嫌いじゃない広告を自分でつくればいいと思うんですよ。広告は嫌いって拒絶して終わらせるんじゃなくて、それを嫌いじゃなくするためにはどうしたらいいかっていうことを考えてほしいんですよ。そこがモノづくりのすべての起点じゃないですか? 開発やサービスに関わる仕事をしているのに、そこを追求できないっていうのは、もったいないですよ。そこを追求して、自分で創れるっていうのが、エンジニアの良さだと思うんです。自分でできるんだから、やろうよ!

— naoya:明石さん、意外とまっすぐなタイプですね。

— 明石:www

— naoya:なんか、メディアに出たがらない人とか、そういうイメージだったんで、飄々としているというか、ちょっとつきあいづらい感じなのかなって勝手に思ってたんですけど。しかし、「ミスターアドテク」とか言われてますよね。あれ、ご本人的にはどうなんですか?

— 明石:これまで僕と一緒にやってきた人たちからすると、笑っちゃうよねw でも、笑って許してくれる程度だから、よかったんだけど。

— naoya:でも、2000年くらいからWeb広告のことをやり続けてきた人って、そんなに多くないじゃないですか。

— 明石:「ミスターアドテク」っていうのは、ちょっと行き過ぎだとは思うけど……『フリークアウト』のためなら、恥もかきましょう!w

— naoya:ははっw ところで、さっきは何もしてないって言い放ってましたけど、今『フリークアウト』では、何をやってるんですか? 聞いたところによると、組織ごとに色の名前をつけたりしたそうじゃないですか。

— 明石:一応、狙いがあるんですけどね。まず、機能ごとの名前をそのまま付けるのは『フリークアウト』らしくないっていうのと、組織名と機能をリンクさせてしまうと組織がそれだけのものになってしまうので、その弊害を一掃しようと。

— naoya:そうなんですか。なんか、グリーンとかレッドとかブルーとか…

— 明石:はい。一応、分担は決めてます。だけど、そこにこだわる必要はないよということにもしています。

— naoya:それ、結構いいっすね。このアイデア、いただこうかなって思っちゃいました。

— 明石:グリーンはインフラとプラットフォームをやっているので、大地のグリーンなんです。

— naoya:え??? じゃあ、レッドは火ですか?

— 明石:レッドは、『M.T.Burn』という子会社のプロダクトを創ってるので、社名から持ってきてます。バーニングレッドです。レッドじゃないんですよ。間違えないでくださいw

— naoya:あれ、ちょっとめんどくさい感じになってきたぞ……あと、ブルーもあるんですよね。ブルーは水?

— 明石:いや、違います。空、スカイです!……まあ、水でもいいんですけど。ブルーには、速度感を持ってほしかったのと、UIとかはより柔軟性が必要。あとは営業や他の関連部署の理解を深めてほしかったから。なので、すべてを包み込む空のようなブルーで。

— naoya:ちょっと待ってくださいね。さっきからの大地とか、すべてを包み込む空とか…

— 明石:いや、母なる海とかでもいいんですけど…

— naoya:いや、ちょっと待って、待って!w そのコンセプトは、明石さんが考えたんですか?

— 明石:そうですけど?

— naoya:面白いw ちょっとイメージと違うんですけどw

— 明石:そうですか?

— naoya:今日、ものすごく緊張してここに来た俺はなんだったんだ…

— 明石:それからホワイトですね。これは、プロダクトとかサイエンス系のチームなんですけど、やっぱりプロダクト考えるのは、真っ白なところから考えますよね? 何かに染まって考えるよりも、まず、すごいフラットな状態で物事を考えてほしかったんです。サイエンスもです。課題があったときに、その課題だけに凝り固まるんじゃなくて、まず、その課題をフラットに受け止めて、分析していってほしい。という意味でホワイト。

— naoya:僕、相槌うってますけど、これを恥ずかしげもなく語る明石さん、相当面白い。

— 明石:ww あとピンクもあるんですよ。これは、とってつけたような感じなんですけど…

— naoya:いまさらですかw

— 明石:あの、セクシーマネージャーってのがいるんですよ。サービス系のマネージャーで、いろいろ外部からの問い合わせとかを受け付ける担当で、セクシーな対応を求められるので、セクシーマネージャーって呼ばれてたんですね。で、セクシーだったらピンクでしょ?ってことで。

— naoya:ちなみに、このコンセプトはみんなを集めて、ちゃんと説明したんですか?

— 明石:納会で全社員に説明しました!w

— naoya:すごいなぁw みんなポカーンとしてたんじゃないですか?

— 明石:まあ、半分は笑ってましたけど、半分は微苦笑って感じでしたかねw

— naoya:非常によいと思います。こういうわけわかんないこと、いっぱいやった方がいいですね。

— 明石:一応、CEOにまじめに相談しながら、考えてやりましたけどねw

— naoya:しかし『フリークアウト』ってこう、なんか社風もロックな感じじゃないですか。社内に楽器おいてあったり。ああいうのって、会社大きくなっていくと、なかなかできなくなりますよね。でも、トップの人がこういう風にふわっとしてると、『フリークアウト』だったらできる感じがしてきました。

— 明石:あの社風で、第一技術部、第二技術部とか付けたら、めちゃくちゃカッコ悪いでしょ?

— naoya:確かにw

— 明石:インフラチームとかねw

— naoya:たとえば、僕が顧問をやってる『Kaizen Platform, Inc.』は、みんなマジメなんですよ。なんかエンジニアリングチームはエンジニアだし、セールスはセールスだし。遊び心が欲しいなぁって。でも、俺、チーム名は色にしますとかって、みんなの前で語る自信ないなw

— 明石:さすがにセクシーピンクは、ちょっとやりすぎたかなって。

— naoya:

— 明石:セクシーピンクは、クレーム対応もやるんです。怒ってるお客さんのとこで名刺出して、そこにセクシーピンクって書いてあったら、さすがにヤバイかなってw

— naoya:火に油を注くか、それで和らぐか、どっちかですねw でも、マジメな話、チームに役割与えるとそれになっちゃうって話は、結構頷けるところがあって、特にスタートアップとかは、自分たちの業務領域をハッキリ決めないで、曖昧なままいろんなことやるっていうのが、かえってよい結果に結びつくことも多いですね。ところが、君はエンジニアねって言うと、エンジニアリングのことしかやってくれないんですよ。なんで垣根を超えないんだろうなって思った時に、そうか、君の役割はコレだからって、こっちで規定しちゃってるからかって。

— 明石:それが組織に付いてしまうと、さらによくないんですよ。

— naoya:そうですよね。セクシーピンクはちょっと考えますけどねw でも、それって会社も一緒じゃないかなって。なんか、小さい会社だと適当なこと言えるけど、大きな会社になると…

— 明石:2000年に『ヤフー』に入って、その時、初めてのベンチャーだったんですね。で、まず最初に面白かったのは、会議室の名前なんです。

— naoya:あれですか? マウンテンビューとか?

— 明石:国の名前だったんですよ。日本だと第一会議室とかでしょ? 最近は変わってきてるのかもしれないけど。

— naoya:あれってシリコンバレー文化の真似ですかね?

— 明石:そうだと思います。でも、当時は驚いたんですよ。で、日本の大企業だと第一会議室が一番デカかったりするんですよ、やっぱりw

— naoya:僕、『ニフティ』で一番最初に配属された部署、第二開発部でしたw

— 明石:あははw

— naoya:1番が基盤で、2番がアプリケーションだったんですよ。

— 明石:あー。なんかアプリ負けたって感じ?

— naoya:そう。この会社、やっぱりアプリは傍流なのかなってw いや、実際はそんなことなかったですけどね。けど、順番付けるのよくないから役割でいってみようとか、たとえば「ピープル部」とかってつけるのは、なんか普通なんですよ。発想が飛んでないんです。色で、しかも大地がとか、空がとか言っちゃう感覚が、飛んでていい感じがしました。

— 明石:でもね、色の意味を理解している人は少ないと思うw

— naoya:それは聞いてて僕もそう思いましたw


▲冗談のような本当の話で大笑い。お二人ともすっかりほぐれてきたようです。

次回予告

「初顔合わせで緊張している」と言いながらも、朗らかな語り口で場の雰囲気を和ませてくれた明石氏。一方で、1500人と40人をマネジメントすることの違い、コーポレートビジョンの重要性、組織名に色を採用した狙いなど、豊富な経験にもとづく含蓄のある話は、naoya氏を大いに頷かせ、二人の会話はますます熱を帯びていくのであった――。

【後編】では、Web業界の先頭を走り続けてきた明石氏だからこそのマネジメント論を、さらに深く掘り下げていきます。一週間後の公開をお楽しみに!
⇒⇒⇒ 公開されました! “【後編】大先輩のフリークアウトCTOが語ってくれた、マネジメントの深くてイイ話"

明石さんがCTOを務めるフリークアウトでは、ソフトウェアエンジニアの採用を行っています。技術的優位性がビジネスの成功に直結するアドテクノロジーの分野で、手応えたっぷりのエンジニアリングに挑んでみたいという方はぜひ求人情報もチェックしてみてください。

この企業の求人情報をチェックする

取材協力

鮨心(すししん)
〒106-0047 東京都港区南麻布4-12-4 プラチナコート広尾 1F
TEL:03-3280-3454

このエントリーをはてなブックマークに追加

「飲み会で探る
エンジニアのホンネ」
バックナンバーもチェック!

インタビュアー紹介

伊藤直也

ニフティ、はてな取締役CTO、グリー統括部長を経て2013年9月よりKaizen Platform, Inc. 技術顧問。ブログやソーシャルブックマークなど10年間、ソーシャルメディアの開発と運営に携わる。著書に『入門Chef Solo』(達人出版会)『サーバ/インフラを支える技術』『大規模サービス技術入門』『Chef実践入門』 (技術評論社) など多数。

このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事はいかがでしたか? ★をクリック!(必須)


適職をディグる! ジョブリシャス診断(適職診断)
履歴書の添削を受ける

「知っトク」メール

基本のノウハウだけでなく、市場動向も踏まえた「今、知っておきたい」転職情報を読めるメールマガジンです。毎週月曜日配信です。

新着求人メール

新着求人の中から、あなたの希望条件に合った求人やお勧め情報をお届けします。
毎週2回、更新日(火曜日・金曜日)に配信です。

  • マイナビ転職 グローバル
  • マイナビ転職 エンジニア求人サーチ
  • 女性のおしごと