マイナビ転職ITエンジニア

この企画は、Web業界で名を馳せる伊藤直也氏と注目企業のCTOが、

寿司を摘まみつつホンネで語り合う、かつて無かったインタビュー企画である。

このエントリーをはてなブックマークに追加

【前編】CTO不在で、開発組織改善に着手!

一休のエンジニアが語る苦悩の1年[ #naoya_sushi ]

Twitterでハッシュタグ「#naoya_sushi」が生まれてしまうほど、無類の寿司好きとして知られる伊藤直也氏(@naoya_ito)。そんな伊藤氏をホスト役とし、トップエンジニアをゲストに招いて、寿司をつまみつつホンネで語ってもらおうという、この企画。

第四回のゲストは、伊藤氏が現在、技術顧問として就任し、開発部門の組織改善を行っている『株式会社一休』のエンジニア、宿泊事業本部のシステム開発部の部長である笹島祐介氏(写真中央)と開発組織改善の発起人である田中健介氏(写真右)の2名が登場!CTOが不在の開発現場で10年以上前からサービス提供している、そんなよくある状況の中、どのように現状の改革に挑んでいるのか――苦労話も炸裂し、現役エンジニアには興味深い話が展開されることに!お楽しみに!

▲3名での対談ということで、本日も新鮮なネタをたっぷりとご用意。

これまでとは違い、“現場のエンジニア”が登場する

【 #naoya_sushi 】がスタート!

— 伊藤直也(以下「naoya」):とりあえず乾杯しましょうか。

— 笹島祐介(以下「笹島」)&田中健介(以下「田中」):お疲れ様です!

— naoya:これまでの回は、CTOの対談っていう形式で進めてきたんだけど、見方とか立場によっては、「自分と遠い存在」の天上人同士の会話になってたんじゃないかと思っていて…

— 笹島:おぉー確かに。

— naoya:なんか、この連載を始めてから「天上界ではこんなことになっているんだー」みたいな受け止め方もされているのかな、って気付いたところがあって。

— 田中:その分、今回対談させていただく我々は、「…………だれ?」って感じですよねw

— naoya:今日の2人は現場のエンジニアで、しかも僕と一緒にマネジメントに関わっているから、これまでとは少し違った視点で話ができるんじゃないかなと期待はしてます。

— 笹島:緊張しますね!w

— naoya:緊張しなくていいからw ところで、『一休』って設立してから、どれくらい経つんだっけ?

— 田中:1998年設立で、『一休.com』は2000年にオープンしました。僕らが携わってる宿泊事業だけでも10年以上は続いてますね。

— naoya:これまで対談してきた会社と比べると、ひとつ前の世代に起業している会社と言えるよね。一応、二人が何者かを伝えるために、自己紹介してもらえる?

— 田中:はい。じゃあ僕から。SIerから、2006年に『一休』に転職しずっと宿泊事業のサービスに携わっています。2009年にサイトリニューアルをしたんですけど、それ以降、開発部門は大きくなっていったんですが、マネジメント的な問題や、詳しくは後で話しますが、できあがったシステムに構造的な問題があったりして、開発スピードは逆に鈍くなってしまった。そこをなんとかしたいなって思って、今は現場の仲間のエンジニアが効率よく仕事に打ち込める開発組織改善を担い、少しでも開発スピードが上がるような取り組みをしています。

— naoya:開発部門のリーダー的存在ってことになるのかな?

— 田中:役職とかは特に付いてませんけど、そんな感じかもしれませんね。

— naoya:開発組織改善プロジェクトが『一休』の社内に立ちあがってるんだけど、それを引っ張ってきた人だよね。

— 笹島:一方、僕は2009年に『一休』に転職してきまして、前職では金融系の基幹システムの開発・運用をやってました。今と違って、めっちゃ固い感じですw

— naoya:全然そんなイメージのない風貌だけどねw

— 笹島:いやいやいやw 仕分けのテストとかでExcelのスクリーンショットめっちゃ撮ってましたよー。何シートいくんだ!って泣きながらやってましたw

— naoya:スクショでのエビデンス取り、やってたんだ。あれ、大変だよね。

— 笹島:ホント、大変ですよ。で、少しキャリアを変えてみようと思って、今度はBtoCでやってみようかと『一休』へ来たわけです。さっきの田中がやりはじめた改善プロジェクトにメンバーとして参加して、様々な組織改善にコミットしてやってきました。その経験もあってか、今年の4月から宿泊事業本部のシステム開発部長に就任することになり、みんなを引っ張っていくべく気持ちを引き締めております!

— naoya:おおー、事業の開発トップですね。『一休』にはCTOがいないので、事実上、彼と他事業部の開発トップたちがCTO的なポジションになる感じかな。それで今、『一休』ってどんな規模感?

— 田中:社員は全体で約150名。エンジニアはパートナー含めて40名くらいですね。

— naoya:典型的なWebサービス企業と言えるよね。で、僕が全社横断での開発組織改善プロジェクトに参加することになって。

— 田中:そうですね。

— naoya:創業期からずっとやってきたシステムで、いわゆる技術的負債も目立つ頃合いですしね。でも、それはよくある話。特別、『一休』に問題が山積ってことではなくって、だいたい同時期に創業した会社っていうのは、最近同じような課題が顕著になってきているはずだし。

— 笹島:2009年のサイトリニューアルのときに、外部のベンダーと協力してやった部分もあるんですよね。それもあって複雑になっちゃってたところもあります。ベンダーの思惑で作られていて、全体の整合性がとれてなくて、いざ運用を始めると僕らの思惑と合ってない……って状況だったんです。

— naoya:まあ、それもよくある話だけどね。

— 笹島:設計思想に「コードは再利用できない」ってのがあって「コピペしてつくりまくれ」みたいなことになってた。

— 田中:共通化は幻想だって、当時携わった人たちが言ってたとかなんとか。

— naoya:おやおや、それはちょっと大変ですね。

— 笹島:で、その設計思想のもと生み出されたWebアプリケーションを運用しだすと、少し厳しいねと。そんな中、自分たちも「この方が正しいんじゃないか?」とか模索しながら手を進めていった結果、余計に複雑にしてしまったところもあって。

— 田中:そうだよねー。

— 笹島:もう、わかってる人しかいじれない箇所とか。ここを修正するときはあの人に頼もう、って感じで。

— naoya:属人化あるあるですね。その状況を見て、なんとかしたいと立ち上がったのが田中さんなんだよね。


▲本日は、旬のホウボウのお刺身からスタート。海ぶどうとわかめはポン酢でいただきます。

粘り強いアプローチで、naoyaとのコラボレーションを成立させる

— 田中:2013年の秋ぐらいですね。naoyaさんが講演していたイベントに参加して、懇親会の席で「開発のやり方をもっとよくしたいんです!」って直訴したんでしたっけ。

— naoya:そう。手伝ってもらえませんか?って言われて、「直近は忙しくて。もっと先なら行けたかもしれないんですけどねー」とか、やんわりとお断りしたという…

— 笹島:その日の夜に僕にLINEが来たんです。「naoyaさんに声かけた!来てくれるかもしんない!」って。 田中さん突撃しすぎだろ!?って思ってましたw

— 田中:だから、その来春っていうのを信じて準備をし始めましたw

— naoya:断ったのに、断られてはいないと思い込んで準備してたの?

— 笹島:してましたねー。なんか偉い人にプレゼンしてました。

— 田中:年末に上司に「開発組織の改善がしたい」って熱弁奮って、「だったらやったらいいじゃん」って約束取り付けて、年明けにその上司の上司にまた直接話をして、それでまたnaoyaさんにメールを送って。「あの話なんですけど」って。

— naoya:メール来たんだよね。「田中ですけど」って。ただ、実はどの田中さんだろ?って、こっちはお断りしたと思い込んでるから、誰だかまったく覚えてなくてw さすがに全くどなたか覚えてない方に失礼な返事をするわけにはいけないなあと思って、しょうがないから一度話を聞きに行って、どの田中さんだったかを思い出そうと。で、『一休』に出掛けて行って、田中さんを呼び出して、顔を見て「あ、この人か!」ってw

— 田中:単純に信じてたってだけなんですけどねw

— naoya:もうそこまで来ちゃったし、取り繕う必要もあったから、どんな課題を抱えていらっしゃるんですか?なんて話を聞くことになり、そうしたら僕も解決策のヒントが頭の中に出てきちゃって、思いのほか盛り上がってしまった。

— 笹島:いやー、あの日、本当に来るの?ってずっと疑心暗鬼でした。で、会議室に田中が入っていったから、ちょっと遅れて自分も行ってドアあけたら「あ、マジで居るし!」ってなりました。マジでビックリしましたw

— naoya:そうねえ、あんまり仕事を受けるつもりなんてなかったんだけどね。まぁ盛り上がったし、それで、じゃあやりますかって話になって。

— 田中:ちょうど1年くらい前ですかね。

— 笹島:2014年の3月からですよ。

— naoya:1年前に比べると、すごいよくなったよね、いろんなことが。劇的に。

— 田中:そうですねー。信じられないくらいよくなりましたよ。

— naoya:田中さんは8年、笹島さんは5年、『一休』にいて、その間ずーっと「こうだったらいいのになぁ」って思ってたことが、この1年で急激に実現していったわけだからね。

— 笹島:いろいろ身に染みて実感するんですよ。他の会社はこういうことやってるよってインプットも、ものすごく入ってくるからモダンな開発環境でやってて楽しそうだなって思ってしまう。でも、会社に戻ると現実が待っていて。そういうことやりたいですよね、って話はするんですけど、実際の現場はかけ離れてるから、悶々としちゃう。

— naoya:それがこの1年で改善の方向で進む原動力になったから良いんじゃない?最初の頃は、やりたい!って言ってたけど、自分たちに本当にできるのかっていう感覚じゃなかったっけ?

— 田中:そうですね。

— 笹島:願望はありましたけど、それをやる自信はなかったですね。現実の環境があまりにも遠い…と当時は思い込んでましたから。


▲ボタンエビを岩塩で。蛤の出汁で煮たキンメダイと焼白子はスープまで美味しくいただけます。

手段と目的が逆転しちゃうのは、エンジニアの性(さが)?

▲キンメダイの美味しさにご満悦の笹島さん。

— naoya:一番最初に田中さんが僕のところに来たときは、「GitHubを使ったイマドキの開発がしたい!」ってことだったと思うんだけど…

— 笹島:キタコレ!

— 田中:

— naoya:田中さんは常にそういう感じなんだよなー。なんか、世の中の会社って、Railsとか Scala とか使って、いい感じに開発とかしてて、僕らもああいうことがやりたい!って。僕はそれを聞いて、「ああ、またか」って思っちゃったんだけど。

— 笹島:ははは!

— naoya:エンジニアの悪いクセなんだけど、新しい道具を使って新しいやり方でやれば、会社が抱えているすべての問題が解決すると思ってるっていうのがあるんですね。手段と目的を履き違えるという問題ですね、これって。

— 田中:すみませんすみません…

— naoya:で、最初にそもそも何が課題なの?って聞いていったわけですよ。最初にやんなきゃいけなかったことは、今、どういう課題をこの組織は抱えているかの分析。それが重要で、どんな問題を解かなきゃいけないのかを明らかにするためだったんだけど。

— 田中:あの課題分析は印象に残ってますね。CMMI(ソフトウェア開発プロセスの改善モデルとアセスメント手法)だったんですけど、ああやって使うんだって。

— naoya:まぁね、コンサルっぽい手法ではあるからね。

— 田中:naoyaさんが今の不満に思ってることとか課題と思っていることを、とりあえず言ってみてって進めてくれて。その時は5人くらいいたのかな。

— 笹島:それくらいでした。

— 田中:そしたら、ワーっと出てきて。「じゃあ、次回までにまとめてみてください」とnaoyaさんに言われて、まとめてみたら、きれいに各課題が今どういう状態なのかを可視化できたんです。あのレールに乗っかってってる感が、今でも忘れられません。

— 笹島:naoya on Railsですね!

— 一同:www

— naoya:『一休』のメンバーにそれぞれ話を聞いていくと、みんな違うことを言うんだよね。この人は、バージョン管理の業務が重たいって言ってるし、次の人は技術的負債が溜まっているって言うし、あっちの人は組織の問題だって。なるほど、じゃあ、まずはそれらを1回テーブルに出して、どっから手を付けていこうかって話をしなきゃなって。そんな思惑から動き出した。

— 笹島:本当の問題はなんなのかって、メンバー全員でぶつけあってましたね。

— naoya:40人くらいの組織から代表者5人くらいが集まって課題を出していってたから、まずはそれらを整理して、40人全員にプレゼンしようって。そのための準備段階として資料を作ろうと。それを最初のマイルストーンにして、課題を洗い出し、それぞれごとにどういうアクションをとっていくかって話し合ったんだよね。

— 田中:ちょうど1年前くらいにやってたことですね。

— naoya:その中で、例えばバージョン管理がうまく使えてないっていうのがあったから、じゃあGitとGitHubを使いましょうとか、手動テストが多いけど工数減らせそうだし、それを自動化するためにCIを入れましょうとか、具体的なアクションが入ってくるんだけど、田中さんは最初にアクションが来ちゃう。

— 田中:アクションが最初にきちゃう僕ですけどw 色々と課題を整理する中でも、なんか情報共有とかも、かなり属人的な感じで閉じてて、それをnaoyaさんから良くないですねって言われて、まずは情報共有の課題から手をつけることになりましたよね。

— 笹島:当時はまだチャットツールも使ってなかったし。情報共有はメールだけだったからね。

— naoya:なんかエンジニアの組織なので、開発が非効率だというようなことを解決しようとすると、みんな、すぐ、GitHubだとか、プログラミング言語だとか、設計だとか、テクノロジーの話にいくんだよね、意識が。なんだけど、実はそもそもそういう問題があるってことをディスカッションする場が会社の中になかったりする。あるいは、他のエンジニアが普段どういう考え方で何をやっているのかを知らない。そういう状況で、仮に新しいツールを入れたとして、「みんなでこうやって使っていきましょう!」ってどうやって伝えるの?って。それこそ、開発組織改善プロジェクトをはじめるぞってなったときに、プロジェクトメンバーがこういうことをやってますっていうのを、どうやって知らせていくの?っていう。メールっていうのは、そういうことに使うツールとしては全然ふさわしくなくて、まずは情報共有の在り方を変えなきゃねっていうのを、僕は必ず最初にするんだけど。でも、最初、みんなピンときてなかったよね?

— 田中:あまり…

— 笹島:そうっすね。

— 田中:そこ以上にGitHubとか…

— naoya:それ、あなたが個人的に使いたかっただけでしょ!

— 田中:www

— 笹島:これまでは業務上コミュニケーションすることがないメンバーも社内にいたから、naoyaさんがそれを見かねて新しいツールの導入を提案してくれましたよね。

— naoya:最初に『Increments』がつくっているQiita:Teamと、チャットにHipchatを導入して、まずはとにかく、決まったことはちゃんとテキストでみんなに伝える手段は用意しようと。それではじめたんだよね。

— 田中:やってみて、情報共有の大切さがよくわかりました。このエンジニアはこういうところからアウトプットしてくれるんだっていうのが見えてきて…

— 笹島:そうっすね、人となりが見えましたよね。同じ会社に3年間くらいいるのに、プロジェクトの飲み会で初めてしゃべる人がいるなんてときもあるぐらいでしたから、そういうツールや場を通じて、その人の価値観に少し触れたりできるようになって、ものすごく新鮮でした。そして、チャットツール導入など色々なことを決めながら問題を整理して、4月のキックオフミーティングで、社内のエンジニアに開発組織改善プロジェクトについてプレゼンしましたね。

いざ、プロジェクトキックオフ!しかし、出だしでつまづく…!?

— 田中:2014年4月から、ちょうど期が新しく始まることもあって、プロジェクトをスタートさせますよ!ってアナウンスして、整理した課題とか、それらへの対応策とかを全体キックオフミーティングの場を設けて僕が話したんですけど…

— naoya:あれはビックリな出来事だったよねぇw まず、僕の失敗でもあるんだけど、開発組織の改善について話したのは、それまでこの2人を含めプロジェクトのコアメンバー5人だけだったからさ。改善したい!っていう情熱を持った人としか内容を詰めてなかった。その時、僕は彼らの意見が『一休』という会社の総意だと勘違いしてた。この人たちは、ただ、改善のやり方・ノウハウがわからないだけで、アプローチさえわかれば誰もがそれに乗っかるんだと勝手に思ってて。で、いざ、40人を前にプレゼンするとなったときに、まず最初に田中さんが話しはじめたら、なんか空気がピーンと張りつめてた。「アレ?なにかがおかしい!」って…・

— 笹島:重かったっすよねぇ…

— naoya:で、見渡して感じたんだけど…みんな、改善が嫌だってわけじゃないんだけど…なんて言えばいいかなぁ…

— 田中:言っちゃってください。

— naoya:いや、一人ひとりと話すと、みんな、改善はやるべきだって言うんだよね…うん、多分、さっき触れた、普段のコミュニケーションの場がそれまでなかったことが最大の原因なんですよ。要するに、何年もの間、みんないろんなことを結構表に出さずにやってきて、いいこともあったし、上手くいかないこともあったんだろうけど、それを吐き出す機会をあんまり持たずに走ってきて、いきなり突然、新しいことやるぞって言われたもんだから、驚いた感じが先に出ちゃったんだろうね。

— 田中:naoyaさんに来てもらって改善プロジェクトをやるっていうことは、ランチミーティングとかで事前インプットしてたんですけどね。まぁ、でも、その時にも結構厳しい意見をもらってました。「やったほうが良いことだと思うけど、それは理想論かもね」とか。だから実際のキックオフミーティングでは、本当にやるの?っていう空気がありましたよね。

— naoya:僕は当時まだ携わったばっかりで、プロジェクトメンバーとしか話していなくて、現場で普段からコミュニケーションが多くないという『一休』の姿を知らなくて、蓋開けてみたら、おや?みたいな。これはアカンやつや!って。で、急遽、会議を開いて、「いや、ちょっと方針改めたほうがいいかもね」って。

— 笹島:あの空気は今でも忘れられません。

日報事件勃発?!

「やってみようオジサン」が現れ、手探りしながら、少しずつ前へ!

— naoya:とにかく開発組織の改善で一番難しい問題は、技術的に何をどうやるかなんてことじゃなくって、変化を起こす時にそういう人と人の課題が噴出すること。確かに僕の誤算でもあるんだけど、なにも『一休』が特別じゃないんだよね。他の組織であっても、多かれ少なかれあることだと思う。みんな、新しいことはやりたいと思ってはいるけど、なかなか息が合わないっていうか。

— 田中:上司は自分のやることに対して結構ポジティブに受け止めてくれてたけど…まぁ、やりたいと思っても、それがなかなか思惑通りには進まないっていう今回僕らが経験したようなことは、よその会社や組織でもよくあることなのかなぁ。

— 笹島:最初は少し辛かったっすね。やりたいのは俺たちだけなのかなぁって。

— naoya:それで地道にコミュニケーションしていこう、周囲を巻き込んでいこうって、改めて取り組み直したんだよね。課題の解決をトップダウンでやるぞって落とすんじゃなくって、40人のメンバーそれぞれが課題ごとのチームに分かれて、当事者意識を持ってもらうように変えていった。

— 笹島:コードレビューとかリリースの自動化とか情報共有とかバージョン管理とかテストとかのチームに分かれましたね。

— naoya:うまくいったチームと、なかなか進捗が出ないチームとか色々あったけど。最初のギクシャク感、半端なかったもんね。今回のプロジェクト名を「ISHIN(維新)」にしたわけだけど…まあ、これも初見の印象がよくなかったかもねw

— 笹島:なんか、俺たち改革する人たちと幕府側みたいな。後から聞いたんですけど、他のメンバーたちが「俺たち幕府側だよなー」ってw 今だから笑い話で聞けるけど、その時はまじで辛かった。

— 田中:最初のキックオフでQiita:Teamを使って情報共有しますって伝えたら、今までオープンなSaaSのツールを使ってなかったから、そういう情報を載せていいのか?とか不安の声があがったり…

— 笹島:セキュリティは大丈夫なんですか?とか。あと、日報事件もありましたよねw

— 田中:ありましたね。まずはツールに慣れてもらう意味合いから、誰もがトライできる日報を「書きましょう!」って僕が言っちゃったんですよね。

— naoya:そしたら、みんなが「日報を書け!」っていう業務命令だと思っちゃって。みんながすごい勢いで日報書き始めちゃったんだよね。突然、40人が日報を書き始めるもんだから、ログインして見に行くと「日報」っていう記事が大量に並んでて。まったく情報共有ツールとして機能しなくなっちゃったw

— 田中:しかも、最初の頃はみんなも日報に面白がっていろんなこと書いてくれてたけど、だんだんルーチン化してきちゃって、無機質な日報が並ぶようになっちゃって。

— naoya:本日の所感に「特になし」みたいな。1日会社で仕事して、なにも思うところはないのかってw

— 田中:で、ある時に「これ、あまり情報共有ツールとして機能してないよね?」ってことを言われて…。やらされてる感もちょっと感じていたから、「日報は書くことが目的じゃないからって。必須だとかあんまり考えないで、伝えたいことがある人はその時に書こう!」って話をしたら、今度は日報がパタリと止まるっていうw

— naoya:書き込みがなくなっちゃったよね。難しかったね、いろいろと。

— 笹島:画像なんて一切ないテキストだけのやりとり。それで、また盛り上げなきゃ!と思って僕が画像投げたら、みんなexitしちゃう。寂しかったですねー。なんでですかって訊いたら、いや、なんか変なのが見えたんでってw

— 田中:最初のギクシャク感、半端なかったね。

— naoya:まぁ、あれだよね。組織全体が変化に対して不安を覚えちゃったから、「情報共有します!」って新たなツールを使う宣言をした時、別にみんな本当にセキュリティ云々を心配したわけじゃなくって、多分、心の底にあったのは、本当に僕たち変わって大丈夫なの?っていう不安だったと思う。それを口に出さないとやってられなかったってとこなんだろうね。日報が業務命令に聞こえてしまったのも、そもそも今まで活発なコミュニケーションがなかったから、どうやってオープンなコミュニケーションを取ればいいのかわからなかった。そこで、素直に「僕は不安です」って人前で言える人は普通いないので、セキュリティ大丈夫ですかとか、言われたから書きますけど…とか、そういう形で表出してしまったんだと思うんだよね…これも、あるあるな話だよね。

— 笹島:そうっすねー。

— naoya:でも、それでも当時の部長が、まずはやってみよう!ってアナウンスするようになったんだよね。

— 田中:毎朝言ってましたね。

— 笹島:そうっす。「やってみようオジサン」になってました。まずはみんなやってみよう!って。それ録画して、YouTubeで流し続けたらいいんじゃないかって冗談交じりに言ってたくらいw

— naoya:で、一番最初のブレイクスルーはなんだったっけ?

— 田中:なんだかんだでやっぱりGitHubですかね。

— naoya:田中さん念願のGitHub。

— 笹島:8月でした!


▲北寄貝の串焼きとうなぎの白焼。北寄貝のコリコリした食感がたまりません。

いよいよモダンな開発環境への第一歩。

ブレイクスルーとなったGitHubの導入!

▲あまりの美味しさに頬が緩む田中さん。


— naoya:まぁ今でこそGitHubで開発しましょうっていうのは、世の中的にも急激に浸透したけど、それでもまだ早い方だったかな、導入したの。承認もトントン拍子で進んで。でも、あの状況で、こういういいものがあるから、みんなで使おうぜってポンッと渡しただけじゃ、多分、そのまま放置で使われないだろうから、どうしようか?って作戦考えて、ハンズオンするところからはじめようって。

— 田中:ええ。

— naoya:「要するにこのツールはこう使うんだよ」っていうのを、プロジェクトメンバーが他のエンジニアと一緒に作業を通じて教えるっていう会を何度かやって、ソフトランディングな感じで進めたよね。あるから使えというトップダウンじゃなくって。

— 笹島:僕、すごい覚えてるのが、これまで使っていたsvn(Subversion)をGitに移行しますってなって、スケジュールを各メンバーにヒアリングして、「そうですねー大体3ヶ月後くらいですかねー」って話してたんですよ。田中ともみんな業務抱えてるからそれくらいかね、なんて。で、naoyaさんに話したら「なんで3ヶ月もかかるの?開発を速くするために頑張ってるはずなのに、さっさと入れた方がいいに決まってるじゃん」って。そりゃそうだなって納得して、じゃあ1ヶ月後を目処に頑張ります!って。

— 田中:あのときって、プロジェクトで3ヶ月ごとに目標を立ててやることにしてたんですよ。3ヶ月たったら、一度キチンと振り返って、取り組みや結果を検証しながら。で、課題分析とかで4・5・6月が済んで、次の7・8・9月の目標のひとつにGitHub導入もあったからね。で、9月の中旬くらいに移行しますって話をnaoyaさんにしたら、「なんでこんなに遅いの?」って突っ込まれて…

— naoya:でもさ、俺が、「なんでGitHub入れるのに3ヶ月もかかんの?」って言って、このぐらいもっと早くって戻したら、じゃあ1ヶ月でってことになったんだよ。それでやってみたら、ちゃんとできたじゃない。

— 田中:8月の下旬に入れて9月末にはもうデリバリーというか…移行そのものは2週間くらいで進められて、後は個別に対応するって感じでしたね。

— 笹島:Gitへの移行は、リーダーたちがいろいろシミュレーションを繰り返して、こういう風にやったらうまくいくんじゃないかって検証しながら進めました。いろいろ迷惑かけたけど、チームとしてもすごくいい経験になりました。

— naoya:最初は4月の段階でのつまづきとか、自分たちがうまくやれるのかっていう不安だとか、やり方を知らないだとかで、いろんなことに時間がかかった。で、僕がしびれを切らして、そろそろエンジンかけようかってなって、GitHub導入のケツを叩いてやってみたら、すぐできて。結果的に言うと、この導入へのチャレンジがうまくいったのが大きくて、要するに「やったらできた」と。みんながずっと、それは理想論だとか、他の会社だからできるとか言ってたことが、実際にやってみたら、なんだこんな簡単なことじゃないかって。それに実際使ってみたら、これはいいねってみんな納得できたからね。

— 笹島:ホントですね。

— naoya:その辺りから、なんとなく自分たちはやっていけるかもしれないって空気が出てきて、よくなってきた感じだよね。

デプロイの自動化も果たし、現場に笑顔が広がっていく

— 田中:GitHub導入後に行った、デプロイの自動化もインパクトありました。

— 笹島:今までビルドしてファイルをつくって、それをステージングや本番にコピーして、アプリケーションプールをリサイクルして、はい、どうぞ!っていう感じだったんですけど、それが自動化されたわけですからね。

— naoya:俺も昔まったく同じプロセスでやってたw

— 田中:今までは誰かが手作業でやることだったんで、お願いしなきゃいけなかったからね。バグ出したりとかして、ステージングにデプロイしなきゃいけないと。その時に頭下げてお願いするってね。

— 笹島:しかも、その作業できる人が限られている。開発者とデプロイする人が違うんで…

— 田中:だからお願いしなきゃいけないんだよね。開発者にとっては精神的な負担になっていたよね。それを自動化できたから、カジュアルにできるようになり、ステージングに対するデプロイの精神的な負荷はかなり減ったよね。多分、みんなもそう思ってるだろうから、目には見えないかもしれないけど、大きな効果だよね。

— 笹島:いやぁ、あれはみんなすごい笑顔になってると思いますよ。今までは「すいませんっ!バグっちゃいましたっ!デプロイ、お願いしてもいいですか?」って。デプロイまでに、1、2時間かかるわけですよ。それがデプロイってHipChatでつぶやくだけで、デプロイされるんで、本当最高です。

— naoya:そういうのを継続的デリバリーって言うんだけど、ソフトウェアをお客さんに届けるまでに、なるべく属人性を排除して、誰でもデリバリーができるようにすることによって、継続的に価値を提供し続けるっていう方法論なんだけど、それができるようになったのは、『一休』という会社にとってプラスだよね。自信もついたでしょ?

— 田中:そうですね。これができるようになってから、なんかいいじゃんこれって雰囲気になって、突然感ありましたけど、盛り上がり始めましたね。

— 笹島:あれ、大きかったですね。

— naoya:大きな理由が2つあると思うんだよね。まずは、やれないと思ってて、やってみたらそんなに大変じゃなかったっていうことと、そんなに大変じゃないことでもやると、こんなに自分たちの開発の現場にインパクトがあるんだってことを肌感覚で実感できたこと。これで変化することをポジティブに受け止めることができるようになったんじゃないかな。


▲お酒のメニューを見て悩むお二人。そろそろ日本酒が登場するようです。

次回予告

田中氏が発起人となり始まった開発組織改善プロジェクト (=ISHIN)。出だしこそ不調だったものの、GitHubの導入やデプロイの自動化などを経験し、「やればできるんだ!」と社内の雰囲気は明るくなっていった――そんな『一休』に降りかかる次なる課題とは何か?【後編】では、CTO不在の中、開発組織改善を進めるにあたり大切なこと・重要なことを、経験談を交えて赤裸々に語っていただきます!乞うご期待!


⇒【後編】の記事はこちら

今回ご登場いただいた笹島さん・田中さんが働く『一休』では、エンジニアの採用を行っています。会員数300万人以上を誇るサービスの開発に挑んでみたいという方は、ぜひ求人情報もチェックしてみてください。

この企業の求人情報をチェックする

取材協力

鮨心(すししん)
〒106-0047 東京都港区南麻布4-12-4 プラチナコート広尾 1F
TEL:03-3280-3454

このエントリーをはてなブックマークに追加

「飲み会で探る
エンジニアのホンネ」
バックナンバーもチェック!

インタビュアー紹介

伊藤直也

ニフティ、はてな取締役CTO、グリー統括部長を経て2013年9月よりKaizen Platform, Inc. 技術顧問。ブログやソーシャルブックマークなど10年間、ソーシャルメディアの開発と運営に携わる。著書に『入門Chef Solo』(達人出版会)『サーバ/インフラを支える技術』『大規模サービス技術入門』『Chef実践入門』 (技術評論社) など多数。

このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事はいかがでしたか? ★をクリック!(必須)


適職をディグる! ジョブリシャス診断(適職診断)
履歴書の添削を受ける

「知っトク」メール

基本のノウハウだけでなく、市場動向も踏まえた「今、知っておきたい」転職情報を読めるメールマガジンです。毎週月曜日配信です。

新着求人メール

新着求人の中から、あなたの希望条件に合った求人やお勧め情報をお届けします。
毎週2回、更新日(火曜日・金曜日)に配信です。

  • マイナビ転職 グローバル
  • マイナビ転職 ITエンジニア
  • 女性のおしごと