14歳の時、カンヌ国際映画祭で最優秀主演男優賞を受賞。
その後、相次いで映画に主演し、順調にキャリアを伸ばしてきた柳楽優弥さん。
だがここ数年、メディアへの露出は確実に減っていた。
「それは自業自得。自分の行いが仕事を減らす結果になっただけ」。
若くして栄光と挫折を味わった柳楽さんが胸中を素直に話してくれた。
強烈な目力に惹(ひ)き込まれる。だが、以前のそれとは明らかに違う。鋭いだけではなく、芯の強さと優しさが増し、より真っすぐなものを感じさせる。
柳楽優弥さんが、今の事務所に入って最初に受けたオーディションが、デビュー作となった映画『誰も知らない』だった。その演技が評価され、カンヌ国際映画祭で最優秀主演男優賞に輝いた。当時14歳。日本人初、しかも史上最年少ということで世界を沸かせた。その後も立て続けに映画に主演。若くして一気に高みに上ってしまったわけだ。
「だからもう、天狗(てんぐ)なんてもんじゃない。わがままで生意気でした。ガキのくせして『やる意味がない』とか言って偉そうに仕事を断ったりして。それによって周りに迷惑をかけていることにも全く気づいていませんでした。10代の僕は、本当にタチが悪かった。今ここにいたら、ぶん殴ってやりたいほどです」
18歳の時に体調を崩し、一時休養したことも影響して、そのツケはしっかりまわってきた。19歳でタレントの豊田エリーさんと結婚し、長女が生まれた頃から、すっかり仕事が減ってしまったのだ。
「自業自得です。世の中そんなに甘くないぞっていうのが分かったのが、つい最近なわけです。もうちょっと早く気づけていたら、また違っていたかもしれないのですが」
とは言え、現実問題として妻と子どもがいる。男として働かずに家にいるのもどうか。そこで2010年10月から、柳楽さんはアルバイトを始めることにした。
最初のアルバイト先は車のディーラー。約10カ月間働き、合計3500台もの洗車を経験した。その後は飲食店での接客業も。
「21歳にしては常識がないまま来てしまったことに対して、コンプレックスに近いものを感じていました。でも、アルバイトのお陰で社会の常識や知識を身に着けることができたし、いろんな人と触れ合う中で、人として様々なことを学んだ気がします」
そして、俳優という仕事が心底好きなことにも改めて気づいた。
「洗車しながら『いつか必ずこの経験を俳優業で生かそう』と思ったり、ふとした瞬間に『次はこういう作品に出たい』『この表情を今度芝居で生かしたい』と思ったり。俳優という仕事のことを片時も忘れたことがなかった。もっと大切にしなくちゃと思いました」
そんな柳楽さんにこの度、舞台主演のオファーが舞い込んだ。本業で仕事が入ったことが、これほどうれしかったのは初めてのことだった。
やぎら・ゆうや 1990年東京都生まれ。映画『誰も知らない』でデビューし、カンヌ国際映画祭で最優秀主演男優賞を受賞。2012年5月3日(木・祝)から公演予定の、村上春樹原作・蜷川幸雄演出の舞台「海辺のカフカ」に主演する(共演:田中裕子ほか/会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール)。
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