第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる
Vol.91歌手/女優 秋元才加(AKB48)
短所も、生かせる場はある
Heroes File Vol.91
掲載日:2013/1/25
アイドルグループAKB48「チームK」のメンバー、秋元才加さん。デビュー当時、自分は正統派アイドルではないのでは?と苦悩したこともあったというが今では個性を武器に、グループ活動のほか映画、ドラマ、舞台をはじめ、バラエティー番組にも出演するなどマルチに活躍の場を広げている。
Profile
あきもと・さやか 1988年千葉県生まれ。2006年「第二期AKB48追加メンバーオーディション」に合格。11年ダンス・ボーカル・ユニット「DiVA」結成。また、女優として映画やドラマに出演するなど幅広く活躍。2月11~17日に東急シアターオーブにてミュージカル「ロックオペラ モーツァルト」に出演予定(大阪公演もあり)。
厳しくて優しいファンが育ての親
キリッとした、エキゾチックな顔立ち。AKB48の中でも、ひときわ大人っぽさが光る秋元才加さん。
どんな自分にもなれる――。高校2年の終わり、雑誌で見つけた「AKB48追加メンバー募集」記事の中にあった、この言葉に心を動かされた。
「小さな頃から目立つことが好きで、芸能界に憧れていたものの夢はまだ定まっていなかった。このグループに入ればいろいろ挑戦できる、というのが私にはすごく魅力的でした」
オーディションに合格後、ダンスや歌のレッスンを受け、わずか1カ月後には東京・秋葉原の「AKB48劇場」のステージに毎日立つという生活が始まった。
「まともに歌ったり踊ったりできないような状態で、いきなり本番。しかもお客さんとの距離が近い分、ダイレクトに感想が伝わってくる。今日は良かったと褒められて喜び、ここが悪かったと指摘されて落ち込む。その繰り返しでしたね」
それだけではない。人気の有無もはっきりと実感した。デビュー当初、ファンとの握手会で他のメンバーは長蛇の列なのに、自分の所は1人だけということもあったという。
「誰も来ないからと下を向いていたらすごくダサいと思って、ずっと前を見て立っていました。あの1時間は本当に長かった(笑)。でも、そういう時期があったからこそ心身共に鍛えられました。そういう意味でAKB48というのは、本当にファンの方々に育ててもらっていると思います」
実際今も、「この本は読んでおくべき」「この映画がお薦め」などとアドバイスを受けることが多いそうだ。
どんな仕事でも全力で頑張った
正直、悔しくて心が折れそうな時は何度もあった。しかし、全員に平等に仕事が回ってくるわけではない。何より自分の代わりはいくらでもいる。
「だから落ち込んだり、イライラしたりしていても仕方がないんです。まずは、大勢いる中で自分の名前を覚えてもらおうと努力し、どんな仕事でも全力で取り組みました。ハングリー精神は人一倍強かったかもしれません」
そのかいあってデビュー5、6年目から、単独でのドラマや映画、バラエティー番組への出演依頼が入ってくるようになった。「実は、正統派のアイドルに見られないことがコンプレックスだったんです。でも、個人の仕事が増え、短所と思えることが逆に生かせる場所もあるんだと、自信が持てるようになりました」
そして今、さらに大きなチャンスを手に入れた。ミュージカル「ロックオペラ モーツァルト」への出演だ。
ミュージカルで新たな自分を引き出す
ミュージカル「ロックオペラ モーツァルト」はフランスでブームを呼んだ話題作。今回の日本版はブロードウェーで活躍するフィリップ・マッキンリーさんが演出を手がけ、モーツァルトとサリエリの2役を山本耕史さん、中川晃教さんが交互に演じるということで注目されている。
そんな中、秋元さんが演じるのは、モーツァルトをけなげに愛し、支え続けた妻の役だ。
「芯の強さを奥に秘めた控えめな女性の役は初めてですが、これを乗り越えたら、また新しい自分が切り開けそうな気がしてワクワクしました」
大きな舞台だけに緊張感はあるが、「舞台が好きで観(み)に来てくださる方々、そしてAKB48のメンバーも驚かせたい。いい意味でみんなを裏切りたいと思っています」と意欲満々。とは言え、まだ「女優」と名乗るのは恥ずかしいと笑う。「女優を名乗るのはまだ夢物語。芝居もできるんだということが認められるよう、ひたすら頑張るだけです」
AKB48のメンバーは仲間でありライバル
AKB48に入って7年の秋元さん。2010年から12年までは「チームK」のキャプテンも務めた。「キャプテンと言っても、同じチームの大島優子の行動力とムードメーカーの宮澤佐江に支えられ、何かあれば私が発言するという感じでした(笑)。でも一人ひとりが個性を発揮できるチームにしたかったので、そのための努力はしました」
メンバーはかけがえのない仲間。でも同時にライバルだという気持ちも忘れてはいない。「メンバーの一人が新しいジャンルに踏み込んだ、大きな仕事を獲得したという話を聞く度すごくうれしい。でも『いつか私だって』と闘志も燃えます。メンバーの活躍はとてもいい刺激になる。私の成長を引き上げてくれるよう」
以前は何か新しいことを始める時、「つまらなかったらどうしよう」「向いていなかったら……」とためらうこともあった。しかし今はまずやってみる。向き不向きもやってみなければ分からないと思うから。
「バラエティー番組で私を見たある監督が声をかけてくださり、ドラマ出演が決まったことがあります。その時、何でもやってみると、必ず次につながるんだと実感しました。だから、これからも与えられたこと全てをチャンスだと思ってベストを尽くしていきたいです」
かつて秋元康さんに「お前はみにくいアヒルの子だ」と言われたそうだ。そして今、白鳥となりつつある。明るくキュートな笑顔の向こうに熱いプロ根性を秘めている。今後どこまで成長するのか、期待されるところだ。
ヒーローへの3つの質問
現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?
薬剤師。もし芸能界入りが難しければ、薬学部を受けたいと思っていました。薬を調合している姿に何となく憧れていたのと、国家資格だから一生使えていいなと思ったからです。
人生に影響を与えた本は何ですか?
世阿弥の『風姿花伝』。芸の道のことがいろいろ書いてあります。3年前、ファンの方に頂いたものです。
あなたの「勝負●●」は何ですか?
舞台初日が開ける間際などに祖母や両親に電話をかけます。ずっとそばで私の成長を見守っていてくれた家族だからこそ、声を聞くだけで安心できるんです。
Infomation
秋元才加さんがモーツァルトを一途に愛する妻役を熱演!
フランス発、記録的大ヒットミュージカル「ロックオペラ モーツァルト」
フランス国内&ヨーロッパツアーなど計305回の公演を実施。約150万人もの観客を魅了したフランスのミュージカル「ロックオペラ モーツァルト」が、ついに日本で上演される。主演のモーツァルトと宿敵サリエリの2役は、何と山本耕史さんと中川晃教さんが交代で演じることに。そして、モーツァルトの妻コンスタンツェ役を演じるのは秋元才加さん。「ロック色の強いミュージカル。ぜひライブを観に行く感覚で足を運んでください!」
日程:2013年2月11日(月・祝)~17日(日)
会場:東急シアターオーブ
演出:フィリップ・マッキンリー
出演:山本耕史、中川晃教、秋元才加、鶴見辰吾、キムラ緑子、高橋ジョージ、他
公式サイト:http://www.mozart2013.jp/
※大阪公演
公演:13年2月22日(金)~24日(日)
会場:梅田芸術劇場メインホール