第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる
Vol.165モデル/タレント 浜島直子
仕事は受け身ではなく全力で応えなければ
Heroes File Vol.165
掲載日:2017/4/20
女性雑誌のモデルやCMなどのほか、テレビやラジオの番組でも活躍する浜島直子さん。12年間務めた「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターとして、お茶の間には広く知られている。多くの女性たちから「はまじ」の愛称で親しまれている人気者。いつも前向きで、周りも気持ち良く巻き込んでいく明るさが魅力のはまじさん。その原動力になっているものって何だろう。
Profile
はまじま・なおこ/1976年北海道生まれ。雑誌『LEE』の専属モデル、テレビ番組「暮らしのレシピ」「あさイチ」などに出演。夫婦ユニット「阿部はまじ」で絵本を出版。2017年5月3日(水・祝)に「阿部はまじ×伊藤ゴロー『かたりとしらべ』」を北とぴあドームホール(東京)で開催予定。
はじけんばかりの笑顔。「はまじ」の愛称で多くの女性から圧倒的な人気を誇る浜島さん。雑誌『LEE』の専属モデルという枠にとらわれず、テレビやラジオ、そのほかさまざまな仕事にチャレンジしている。
近年では夫で映像クリエーターのアベカズヒロさんと創作ユニット「阿部はまじ」を結成し、イラストレーター平澤まりこさんと共に絵本を出版。2017年5月3日(水・祝)には音楽家の伊藤ゴローさんとコラボして、絵本の朗読と音楽の公演「かたりとしらべ」を開催する。
浜島さんがモデルになったきっかけは、高3の夏、出身地の札幌で開催された雑誌『mc Sister』のイベントで、編集長にスカウトされたことだった。
「高1の時、ティーン雑誌のモデル募集に応募したのですが不合格。それであこがれのモデルになる夢は諦め、長く働ける看護師になろうと決めていました。でもこのイベントに行って、一歩踏み出す勇気さえあれば夢が現実になるんだというチャンスに巡り合え、震えが止まらなかった。その感動は鮮明に覚えています」
上京に猛反対する両親は編集長の協力で何とか説得。晴れて同誌の専属モデルとなる。撮影現場はキラキラしていて華やかで、毎日がお祭り騒ぎのようで楽しかった。21歳で専属契約は切れたが、仕事が途切れることはなかった。
ところが、あるCMのオーディションで思い掛けないことが起きる。素直に質問に答えていた浜島さんに製作関係者が「今の君とは仕事したくないな」と言い放った。「なぜかまったく理由が分からず、ショックで相当落ち込みました。マネジャーにもその時の悪口を言ったり。でも、追い打ちを掛けるかのようにその日を境にスケジュールも白くなっていったんです」
いよいよ家賃が払えないかもという危機的状況に立たされた時、浜島さんは初めて真剣にそれまでのことを振り返ったという。「そこでずっと受け身だった自分に気づいたんです。なぜあの人はあんなことを言ったのか。それは私が聞かれたことにだけしか答えていなかったから。自分がどんな人間かを積極的に伝える努力もせず、仕事も与えてもらうのが当然だという態度だった。一事が万事、ほかの仕事もそう。だから仕事が減ってしまったんだと」
自分が人とどうかかわるかで仕事は決まる。そう気づいた浜島さんはそれ以降、求められることには全力で、かつ謙虚な気持ちで応えること、出会った人に感謝を伝えることを心掛けた。誰かを悪く言うのもやめた。すると再び仕事が入るようになっていった。
不満やグチは口に出すと笑い飛ばせる
23歳で結婚し、同時期に雑誌『MORE』のモデルとなって、CMなどのオファーも続く。公私共に順風満帆の浜島さんだったが、自身の中では何か新しいことに挑戦したいという思いが沸々と湧き上がっていた。
「25歳のころでした。結婚したからといって落ち着きたくなかった私は、以前から好きだったテレビ番組『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターなら、おしゃべりな性格も生かせるし、やってみたいって思ったんです」
オーディションではプロデューサーとの質疑応答が40分ほどあった。最後に「まだ君には伝える技術はないけれど、伝えようとする心があるから、ミステリーハンターは君に合っている」と言われ、1週間後に海外ロケが決まった。
「オーディションで受けた質問は、以前悔しい思いをした別のオーディションで『今の君とは仕事したくない』と言われた時とほぼ同じでした。違うのは私の答え方。具体的な話や自分の思いなど情報を意識的に付加し、1ではなく10で答えるようにしたんです。あらためて自分次第で人の心を動かせるんだと確信しました」
実際、ミステリーハンターは浜島さんの個性に合っていた。モデルなのに見栄えは気にせず、汗をかきながら懸命に伝えようとする姿は反響を呼び、仕事の幅が広がって、テレビ、ラジオの番組レギュラーや、ゲストとトークする雑誌連載など、話す仕事が増えていった。
ただ、海外ロケへ出ると2週間は戻れない。それが2カ月に1度訪れる。夫としてはやはり寂しい。「当然ですよね。だから一緒に居られない分、何かしなければとハンバーグや豚の角煮などをたくさん作り、1食分ずつ冷凍しておきました。そうしたら、彼も気持ち良く送り出してくれるようになりました」
「ごめんね」「ありがとう」。何かしてもらう度にこの二つの言葉を口に出すことも心掛けている。「感謝の気持ちは声で伝えないと。それは仕事だけでなく、家庭でも同じですよね」
38歳で出産、現在は2歳半になる息子の母でもある。子育てはフリーランスの夫と協力しながら行っている。「私も仕事に追われ、落ち込んだりイライラすることがあります。そんな時は夫に包み隠さず話します。不満やグチは口に出すことで笑い話にできるし、どうでもいいかなと思えるようになるので。ただ、自分のイライラのしわ寄せが子どもにいくのは避けたい。それだけはかなり気を付けています」
背伸びせず、真摯(しんし)に前向きに、人にも仕事にも向き合う。だから、浜島さんの爽やかな笑い声は周りを幸せにする。
ヒーローへの3つの質問
現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?
モデルになる前までは看護師になろうと思っていたので、看護師かな。患者さんとおしゃべりばかりしていて、婦長さんに怒られているかも(笑)。
人生に影響を与えた本は何ですか?
さくらももこさんの漫画『神のちから』。高校時代に読んで、あまりにもばかばかしくて面白くて一気にハマり、バイブルのようにして毎日学校に持っていっていたら、学年主任の先生に没収されてしまって。悔しくてもう1冊買ってまた読んでいました。後に雑誌『MORE』で、さくらさんの漫画『ちびまる子ちゃん』に登場する「ハマジ」と同じ「はまじ」ということで、さくらさんとの対談が実現したんです。以来、さくらさんとは温泉に一緒に行かせていただいたりしていて、そのご縁を作ってくれた大切な一冊でもあります。
あなたの「勝負●●」は何ですか?
納豆! めかぶとシラスと黒ごまをかけて毎日食べています。ってことは、毎日が勝負っていうことですね(笑)。
Infomation
阿部はまじ×伊藤ゴロー
「朗読と音楽の会『かたりとしらべ』」
浜島さんと映像クリエーターの夫アベカズヒロさんとの夫婦ユニット「阿部はまじ」は、『森へいく』『しろ』の2冊の絵本を出版してきた。今回、このユニットがギタリストの伊藤ゴローさんとコラボし、「朗読と音楽の会『かたりとしらべ』」を開催する。会場は元プラネタリウムの北とぴあドームホール(東京)。浜島さんはこう語る。「絵本『森へいく』『しろ』の雰囲気で、私の朗読の速度や声の高さに合わせ、あたかも一緒に呼吸しているようにゴローさんが曲を紡いで演奏してくれます。そのコラボを楽しんでほしいですね。今回はほかの絵本の朗読もしますし、ゴローさんの演奏タイムも別枠で設けます。ゴールデンウィーク、遊びにきてください。お子さんがいる方はぜひ一緒に!」
日時:2017年5月3日(水・祝)午後1時30分開場、2時開演
料金:2,500円(税込み)
出演:浜島直子(朗読とおはなし)、アベカズヒロ(映像)、伊藤ゴロー(音楽)
問い合わせ先:ミルブックス(電話03-3311-3503)