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特別企画 IT企業ラボ探訪(2)

企業の競争力を支え 産学エンジニアのハブ役に 楽天技術研究所

国内最大のインターネットショッピングモール「楽天市場」をはじめ、オークション、書籍販売、証券取引、トラベルなど多彩なオンライン事業を展開する楽天。今回は、その技術戦略の中核を担う楽天技術研究所を訪問。注目を集めるRubyを用いた大規模分散技術の開発をはじめとする研究内容と対外交流活動やその狙いについて、所長の森正弥さんと各分野の研究を牽引する研究員の方々からお話をうかがった。

ネット企業に競争力をもたらす技術研究を

森正弥所長

楽天技術研究所の研究活動が本格化したのは、森所長が着任した2006年秋。市場環境が目まぐるしく変化するインターネットの世界では、コモディティ化されていない新しい技術こそが企業の競争力の源となる。このため、すぐに活用できる研究成果だけでなく、新しい技術を目指した長期的な研究を行うことが技術研究所の重要なミッションである。そこで現在、長期的な視点から取り組んでいる主要テーマは、インフラ環境としての“大規模分散技術”と、レコメンデーション機能につながる“言語解析・データマイニング”、そして、動画像や音声など“マルチメディアインターフェイス”の3分野。10数名の研究員も3チームに分かれ、それぞれの研究を進めている。
「楽天技術研究所のミッションは“インターネットを活用した人々の生活(リアリティ)を豊かにする”こと。3つのテーマは、インターネットが人々のリアリティにかかわるときに不可欠な技術といえるのです」と森さんは語る。

各分野のテクノロジストが進めるユニークな開発

3つのテーマの中で、最も早く成果を上げつつあるのが言語解析・データマイニングだ。このテーマのリーダー役を務めるのは竹中孝真さん。「楽天には膨大なデータ資産があります。それらを材料に、データの高度な解析技術やデータ計算の高速化技術を開発することでレコメンデーションにつなげています」。すでに開発された技術は、楽天ブックスのレコメンデーションエンジンなどに使われている。
また、マルチメディアインターフェイスのリーダーを務める平野廣美さんは「画像や音声の単なる寄せ集めではなく、マルチメディアとインターフェイスのあり方を考え直しながら、ユーザとシステムを結び付けときめき感のあるようなインタフェイスを研究しています」と語る。
一方、大規模分散技術分野では、オブジェクト指向スクリプト言語Rubyを使った分散フレームワークとグリッドシステムの開発が進行中。グリッドシステムの開発を担当する西澤無我さんは「大勢のユーザが高速にアクセスでき、同時に高速にデータを取得できるシステムです」と、その概要を説明する。

竹中考真さん 平野廣美さん 西澤無我さん

大規模分散環境で初めて利用されるRuby

楽天技術研究所の活動として注目を集めてきたのが、分散フレームワークとグリッドコンピューティング技術の開発である。Rubyが大規模データや分散環境で本格的に利用される初めてのケースだからだ。開発中の分散フレームワークは「Fairy」、グリッドシステムは「ROMA」と、それぞれ名づけられ開発が進められている。
「すでにプロトタイプが完成していて、α版が社内に公開されています。社内での活用を経て、2009年上期中にはオープン化する予定です」と、森さんは技術研究所の看板となった技術の公開を急ぐ。
そもそもRubyを利用するきっかけになったのは、森さんとRubyの開発者まつもとゆきひろさんとの交流である。
「まつもとさんと知り合ったのは、楽天技術研究所の技術顧問である米澤明憲先生の紹介でした。まつもとさんからはRuby普及のために企業で使ってほしいとの話があったので、フェローになって研究所に加わっていただき、開発を進めることにしました」と森さん。

現場では獲得できない学術的な知識が必要

楽天技術研究所の特色は、まつもとさんのような著名な技術者や学術界など、対外的な交流にも積極的に取り組んでいることである。たとえば、電気通信大学尾内・林研究室との動画・画像解析の研究における共同論文の執筆。慶応SFC井庭研究室とのロングテールの統計的分析による消費者行動研究の学会発表などの成果がある。後者の研究は、イギリスの複雑系ネットワークをテーマにした学会でも発表し、第一人者である研究者アルバート=ラズロ・バラバシ氏からの称賛も受けている。
「数名の研究員構成では、やはり限界があります。その意味でも交流から得られるシーズに期待できますし、我々のレベルを高めるのにもプラスです」と、森さんは効用を率直に語る。「やはり現場では獲得できない知識が競争力のためには必要です。私たちは、交流を深めながら学術社会の研究を実サービスに結び付けて産業化するという責任を果たしていきたい」。
学術界では、動画像や自然言語や人工知能といったそれぞれのテーマが、同じようにインターネットとの結び付きを強めているものの、それぞれの学会でばかり議論されているという傾向も根強い。森さんは、「楽天が交流の場を作れないかと持ちかけてくださる大学の研究者もいます。そうした声に応えながらハブ役が務められたらいいと考えています」と語る。2008年11月には、大学生や大学院生を対象にした「研究開発シンポジウム」を開催するが、このシンポジウムにも学会の枠や産学の壁を越えた交流に貢献しようという狙いが込められているという。

10年後を見据え、尊敬される存在に

「森さん。研究所を作るというのは10年仕事ですよ」と、ある先生に言われたエピソードを紹介しながら、森さんは次のように語る。
「気をつけるべきは、囲い込みと受け取られることを避け、学術の世界でも理解されるようにすること。我々は、シンポジウムやイベントなどを通じて研究成果を発表し、意見をもらい、技術で社会に貢献していく。その成長する姿を見てもらいながら、気に入られたり、尊敬されたりするようになりたいと考えています。」

楽天株式会社 楽天技術研究所 所長 森正弥さん
Profile
外資系コンサルティング会社に8年6ヵ月勤務。プログラミングからIT戦略、営業戦略まで多彩なコンサルを手がける。日本のIT社会の将来展望やR&Dとインターネットの結び付きを考えているとき楽天の開発担当役員と出会い、初の専任メンバーとして2006年9月に入社。所長として研究を統括している。「研究員はこれからも増員を考えています。そろそろFairyやROMAに続くプロジェクトを考えなければなりませんね」。
チーフテクノロジスト 竹中考真さん

システムインテグレータでSEとして活躍し、07年3月に研究所へ。言語解析・データマイニング分野のリーダー。

エグゼクティブ・サイエンティスト 平野廣美さん

研究所でAIの技術開発、技術行政などの多彩な経験を持つ。08年2月に研究所へ。マルチメディアインターフェイス分野のリーダー。

アソシエイト(理学博士) 西澤無我さん

大学院ではアスペクト指向プログラミングを研究。08年4月新卒で研究所へ。大規模分散技術の開発に参加。

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