TeamViewer APAC地域統括プレジデント ソジョン・リー氏(写真撮影:齋藤 公二氏)TeamViewerは2026年2月12日、従業員のデジタル体験(DEX: Digital Employee Experience)に関する市場動向や最新トレンドについての記者説明会を開催、同社のデジタルワークプレイスソリューションで日本企業をどう支援できるのかを解説した。
TeamViewerは2018年から国内拠点を設け活動している。リモートアクセスソリューションで広く知られるようになったが、現在はエンタープライズ向けのDEXソリューションでも市場から高く評価されている。
日本は人手不足が深刻、効率的で効果の高い業務にニーズ
TeamViewerのAPAC地域統括プレジデント ソジョン・リー氏は日本市場の動向について「人手不足が深刻でそれに対応するために効率的で効果の高い業務のあり方が求められており、われわれのソリューションがニーズを満たしている」と話す。

TeamViewerのソリューションは、PCやスマートデバイスを中心にオフィスワーカーのリモートアクセスやリモートサポートを個人や小規模ビジネス向けに提供する「TeamViewer Remote」、エンタープライズ向けの「TeamViewer Tensor」、AR/VRヘッドセットやウェアラブルデバイスを活用してフロントラインワーカーのリモート保守や検査、監視などを支援する「TeamViewer Frontline」、DEXソリューション「TeamViewer DEX」、それらをプラットフォームとして統合管理する「TeamViewer ONE」などで構成される。
「日本市場では2025年に前年比60%の成長(ARR)を遂げた。ソニー、リコー、コニカミノルタなど電子・自動車・製造業を中心に数十社の顧客がいる。我々の調査では企業の59%が今後エージェンティックAIと自動化技術への投資を増やす方針だ。 TeamViewerも、エージェンティックAI、分野ごとに最適な製品の提供、統合されたプラットフォームの提供をテーマに日本企業をサポートしていく」(リー氏)
従業員のデジタル体験(DEX)やデジタルワークプレイスにおけるAIによる自律的な改善に注目
なかでもDEXやデジタルワークプレイスに関しては、AIを活用することで自律的な改善の取り組みが進みやすくなることに注目しているという。
「例えば、トラブル対応で困った従業員に対して、AIで適切な回答を素早く提供することができる。また、その対応内容をAIを使って学習して、対応の精度を向上させることができる。改善サイクルを自動的に回すことができれば、オートノマスなIT運用や従業員サポートが可能になる。今後は、製造業の工場などで働くフロントラインワーカーに向けて、AIを活用した自律的な改善の取り組みをサポートしていく」(リー氏)
「日本では75%の従業員が最新のAIツールやデジタルツールにアクセスできていない」
日本のデジタルワークプレイスはさまざまな課題に直面しているのが現状だという。
TeamViewerのチーフ・レベニュー・オフィサー マーク・バンフィールド氏は「大きく5つの課題がある」とし、こう話す。
「1つめはAIと生産性のギャップだ。日本では75%の従業員が最新のAIツールやデジタルツールにアクセスできていない。2つめはサイバーセキュリティ。日本企業の70%が重要情報を十分に管理できていない。3つめはモダナイゼーションの遅れ。ITのモダナイゼーションが先進的と言える企業は8%にとどまる。4つめはハイブリッドワーク人材。日本はハイブリッドワーク人材の割合が35%と高いため、デジタルワークプレイスの管理に特有のニーズが生じている。5つめはデジタル摩擦。日本の従業員の55%がデジタル摩擦で業務時間を失った経験があると回答している。日本企業は、個別ツールの導入にとどまるのではなく、AIを活用し、セキュリティを基盤とし、ハイブリッドワークに最適化された、包括的なデジタルワークプレイス管理へと転換すべきだ」(バンフィールド氏)

課題解決のため「TeamViewer ONE」として統合して提供
TeamViewerでは、Remote、DEX、Tensorの各ソリューションを「TeamViewer ONE」として統合して提供することで、こうした課題に対応できるようにする。
「TeamViewer ONEを開発したのは、ITチームがばらばらのツールを使っていて、ツール管理が複雑化し、手間がかかっていたからだ。IT環境とOT環境を含めてエンドポイントやソフトウェア、セキュリティパッチなどの管理を統合し、さらにリモートコントロールやユーザーエクスペリエンスへの対応も可能になる。TeamViewer ONEは、ITチームのシフトレフトを支援するものだ。これまでの『事後対応型』の組織から、影響が出る前に既知の問題を自動的に修正する『先回り型』にシフトでき、さらに、未知の問題を事前に予測し発生前に解決する『予測型』の組織に変革できるようにする」(バンフィールド氏)
そうした、先回り型、予測型のITチームへの変革を実現するために新たに開発しているのが、AIエージェント「Team Viewer インテリジェントエージェント(Tia)」だという。今後、AIエージェントがリモートアクセス/リモートサポートにおける対応状況や、DEXによる自動化の状況を自律的に把握しながら、問題を見つけ、自動で改善していくこともできるようになるという。
「Tiaは、ITネットワーク診断からエッジデバイス管理、システム構成・保守、パフォーマンス最適化、OTネットワークのトラブルシューティングなどさまざまな領域で利用できるようになる。1つのプラットフォームですべてをコントロールすることで、統合的な可視化と制御、AIによる先回り型対応、ビジネス価値とセキュリティ向上を実現できる」(バンフィールド氏)

日本市場での展開においては、国内パートナーとの関係も強化
日本市場での展開においては、国内パートナーとの関係も強化する。パートナーであるNSW 取締役 執行役員専務 竹村大助氏は「デジタル化が進み、複雑な環境になるほど、デジタル摩擦が生まれている」と日本の現状を指摘する。
「生産性の低下、従業員の不満、コストの増加などが目に見えない課題となっている。例えば、従来のIT運用は、チケットの発行、発生したダウンタイムへの対応、リモート対応などリアクティブであり、高コストで従業員の満足度を高めることも難しかった。こうした課題を理解できているCIOが3%しかいないという調査もある。求められるのはプロアクティブなIT運用だ。トレンドを監視し、AIで検知し、問題を自動で修復する。単に問題を解決するのではなく、問題を未然に防ぐことで効率良く、従業員の満足度を高めていくことができる」(竹村氏)

NSWでは、Tensorを中心に組み込みシステムやOT環境のメンテナンスやサポートを含めたシステムサービス開発も手がけている。竹村氏は「デジタルワークプレイスは単なるリモートワークの道具から、AIエージェントと共に働き、従業員体験(EX)を最大化する戦略的なインフラに進化していく。NSWでも、BPO、情シスDX、セキュリティといった既存サービスに加え、DEXをラインアップし、デジタルワークプレイスをサービスとして提供する」と、製造業などを中心に自動化や可視化をサポートしていくと話した。
TeamViewerの製品ラインアップは、ソフトウェア開発から組み込みシステム・機器開発、メンテナンスなど幅広い開発業務をカバーしている。NSWでもTensorを使ったOT領域でのソリューション提供のほか、金融システムの受託開発業務でRemoteを活用している事例がある。
システム開発から、機器メンテナンスまでさまざまな業務でAIエージェントの活用が広がりつつある。ソフトウェアエンジニアがAIエージェントを使いこなすのと同じように、フロントラインワーカーがVR/ARゴーグル上でAIの支援を受けながら作業をこなすのもそう遠くないようだ。
ライター