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スキルの掛け合わせで「日本で5番以内」を狙う。ソフトウェアテストの権威・高橋寿一氏が語る、AI時代のキャリア生存戦略

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この記事でわかること

  • 「品質設計」の本質と、QCDを向上させる上流工程でのアプローチ

  • AI時代において、エンジニアが磨き続けるべき不変の基礎スキル

  • グローバルで通用する「戦略的な履歴書」の作り方とキャリア設計

システム開発において「ソフトウェアテスト」と聞くと、いまだに下流工程のバグ探しをイメージするエンジニアは少なくありません。しかし、システムが極めて複雑化し、生成AIによるコードの大量生成が可能になった現代において、「品質を設計し、保証する力」はプロジェクトの成否を分ける極めて重要なスキルとなっています。

米国トップ企業や国内大手メーカーなど、グローバルな開発現場の第一線で活躍し続けてきた高橋寿一氏は、品質の専門性を武器に「開発組織から不可欠とされるリーダー」への道を切り拓いてきました。

本記事では、高橋氏へのインタビューを通じて、単なる作業者から抜け出してプロジェクトを牽引するリーダーへと飛躍するためのマインドセットや、目まぐるしく変化するAI時代を生き抜くための実践的なキャリア戦略に迫ります。

高橋 寿一

株式会社AGEST チーフ技術アドバイザー

AGEST Testing Lab.所長/AGEST Academy学長/情報工学博士

フロリダ工科大学大学院にてCem Kaner博士、James Whittaker博士にソフトウェアテストの指導を受けた後、広島市立大学にてソフトウェアテスト研究により博士号取得。米国Microsoft、SAP Labs、ソニー株式会社を経て、株式会社AGEST チーフ技術アドバイザー、AGEST Testing Lab.所長及びAGEST Academy学長を兼任。情報処理学会及びIEEE会員。

著書に「知識ゼロから学ぶソフトウェアテスト 【改訂版】」「ソフトウェア品質を高める開発者テスト 改訂版 アジャイル時代の実践的・効率的なテストのやり方」があり、技術書然とした堅苦しさのない軽妙な語り口に心くすぐられるユーザーも多い。

株式会社AGEST

ソフトウェアテスト、品質コンサルティング、サイバーセキュリティまで幅広いサービスをワンストップで提供するQA専門企業。国際資格を持つ多数のスペシャリストが在籍し、開発初期段階から品質向上を支援する。AIを活用した独自のテスト管理ツール「TFACT(ティファクト)」による作業効率の改善に加え、独自のSBOM管理ツール「SBOM Archi(エスボム アーキ)」を活用したソフトウェア部品管理と脆弱性検知により、サプライチェーンの安全性も徹底。最先端の品質テクノロジーを探求する研究・教育機関も運営し、顧客の事業成長に貢献する最高品質のソリューションを追求している。

知名度より「技術力」で選ぶ。世界的企業でテストの道へ進んだ原体験

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岸 裕介
岸 裕介

高橋さんはMicrosoft本社やSAPといった、エンジニアなら誰もが憧れるようなグローバル企業でキャリアを積んでこられました。そもそも、どのような経緯で「ソフトウェア品質」という専門領域に足を踏み入れることになったのでしょうか?

高橋さん
高橋さん

実は、最初からテストの専門家を目指していたわけではありませんでした。元々はネットワークプロトコルを書いている、ゴリゴリの開発者だったんです。 当時はMS-DOSの時代で、私が使っていたMicrosoft製のコンパイラが信じられないほど優秀でした。「なんてすごいツールを作る会社なんだ、ここで働きたい」と実感したのがきっかけです。

ただ、当時の日本では、同社は今ほど一般に広く知られているわけではありませんでした。そのため、転職を伝えたら周りから「これから成長する外資系企業に飛び込んで、本当に大丈夫なの?」と本気で心配されましたよ(笑)。

岸 裕介
岸 裕介

今の圧倒的なブランド力からは想像もつかないお話ですね。それでも飛び込めたのは、やはり「技術への確信」があったからですか?

高橋さん
高橋さん

その通りです。エンジニアにとっての「良い就職」とは、世間の流行りや会社規模で選ぶことではないと思うんです。たとえ小さくても、その技術が本物で、自分が圧倒的に優れていると感じる会社を選ぶこと。それが後々の納得感に繋がります。

その後に在籍したソニーにしても、小学生の頃からソニー製品が大好きで、その「モノ作り」へのリスペクトが強かったからこそ、入社できた時は本当に嬉しかったですね。

岸 裕介
岸 裕介

技術力の高さや製品への純粋な愛情が、高橋さんのキャリアの軸にあるのですね。そこからどうやってテストの道へ?

高橋さん
高橋さん

Microsoft社にご縁をいただいた際、当時の状況もあって、開発部門ではなくソフトウェアテストのポジションで力を発揮してみないかとご提案をいただいたんです。普通なら開発をやりたくて入社を希望するわけですから、戸惑う人もいるかもしれません。

でも、私は昔から「自分が書いたコードに責任を持つのは当たり前」という感覚で、開発プロセスにおけるテストの重要性を強く認識していました。だから、この領域を専門に極めるのも面白いと感じて、「ぜひやらせてください」と前向きにお受けしました。

岸 裕介
岸 裕介

開発者としてコードに真摯に向き合っていたからこそ、テストという役割の重要性を直感的に理解されていたのですね。

高橋さん
高橋さん

当時はまだソフトウェアテストの理論も今ほど体系化されていませんでしたが、実際の現場で「品質がいかにプロダクトの命運を握るか」を肌で感じた経験は大きかったです。また、開発者としての視点を持ったままテストの世界に入ったことで、「どう書けば壊れにくいか」、「どう検証すれば本質的な欠陥が見つかるか」を常に両軸で考えられるようになったのは、私の大きな強みになりました。

テストは下流工程ではない。日米の開発現場で直面した「圧倒的な差」

岸 裕介
岸 裕介

日本の開発現場では、いまだに「テスト=下流工程の単なるバグ探し」というイメージが根強く残っているように感じます。

高橋さん
高橋さん

そこなんですよ。ここ10年、日本での認識は大きくは変わっていないと感じる場面があります。象徴的なエピソードとして、かつて日本の大手メーカーと海外のメガテック企業が共同でスマートデバイスを開発した時の話があります。

海外側のソフトウェアエンジニアたちは当然のようにテストを自動化し、仕組みで品質を担保しようとしました。一方で、日本のハードウェア側の開発チームは、外部から200名ほどのテスターを動員し、マンパワーに頼った手動テストを行おうとしたんです。

岸 裕介
岸 裕介

同じ最先端のプロダクトを開発するプロジェクト内で、テストに対するアプローチにそれほどのギャップがあったのですね。AIや車載システムなど、失敗が許されない複雑な領域では、その認識の差が致命傷になりませんか?

高橋さん
高橋さん

もちろんです。海外のメガテック企業などでは、上流工程の単体テストだけで、1日に数百万ものテストケースを自動で回しています。プルリクエスト(PR)を出した瞬間に、膨大な検証がバックグラウンドで走る。これが彼らにとっては当たり前の世界です。

車載システムなどでも、実機を走らせる前にシミュレーター上で膨大なシナリオを網羅します。こうした「仕組みとしての品質設計」ができるかどうかが、今の時代、プロダクトの勝敗を分けるんです。

岸 裕介
岸 裕介

著書でも提唱されている「探索的テスト(※1)」は、あらかじめ用意された手順書をなぞるだけのテストや単なる自動化とは異なり、エンジニア自身がシステムの構造を推測しながら臨機応変にバグを探り当てる手法ですよね。言われた通りに作業をこなす段階から抜け出し、こうした一段上のスキルが求められる領域に到達するには、何が必要でしょうか。

※1 探索的テスト:事前に詳細なテストケースを作成せず、テスト対象のソフトウェアを実際に操作して学習しながら、テストの設計と実行を同時に並行して行う手法。

高橋さん
高橋さん

まずは「情報処理のエンジニア」としての基礎体力を磨くことです。探索的テストは、適当に触ることではありません。「このソースコードなら、きっとこういう実装ミスが起きやすいはずだ」と論理的に推測し、急所を攻める。

そのためには、情報処理の資格試験や大学で学ぶような基礎理論が不可欠です。海の中で、地形や潮の流れを読みながら釣りをするような感覚ですね。これが分かってくると、テストは驚くほどクリエイティブで楽しい仕事になりますよ。

岸 裕介
岸 裕介

エンジニアがその「釣りの楽しさ」を味わえるようになるには、まずは正しい知識に基づいた「潮の読み方」を学ぶ場が必要ですね。

高橋さん
高橋さん

おっしゃる通りです。しかし、そうした高度な専門性を体系的に学べる場は、これまでの日本には少なすぎました。そこで私たちが設立したのが、世界標準の品質技術を習得するための教育機関『AGEST Academy』です。

国際的な規格や理論をベースにした「最適解」を知ることで、エンジニアは初めて、勘に頼らないクリエイティブな仕事ができるようになります。Academyを通じて、その基礎体力を底上げしていきたいと考えています。

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世界トップレベルのトレーニングプログラムを通じ、グローバルスタンダードとなる先端技術の獲得とエンジニア育成を目指す「AGEST Academy」の取り組み。(提供:株式会社AGEST / 会社説明資料「先端技術獲得・活用」より)

理想のリーダー像は「管理者」ではなく「コードを見る優秀な開発者」

岸 裕介
岸 裕介

多くのエンジニアが、年次を重ねるとマネジメント側に回り、現場から離れていく傾向があります。高橋さんが考える、組織に本当に必要な「リーダー像」について教えてください。

高橋さん
高橋さん

「リーダーとはどうあるべきか」これは永遠の課題ですが、私がこれまで見てきた「本当にすごいリーダー」には共通点があります。

かつて世界的な大ヒットを記録したコンシューマー向けハードウェアの開発を牽引し、現在は日本の次世代モビリティのソフトウェア領域をトップとして率いているような、卓越したエンジニア出身のマネージャーたちが私の周りにいました。今の日本の高度なモビリティソフトウェアは、彼らのような存在がいなければ成り立っていないと言っても過言ではありません。

岸 裕介
岸 裕介

日本を代表するような巨大プロジェクトを牽引してきた方々ですね。彼らに共通する「凄さ」とは何だったのでしょうか?

高橋さん
高橋さん

彼らは、どれだけ組織のトップに立って偉くなっても「コードを見ることを好む、優秀な開発者であり続けた」という点です。ただの進捗管理者、いわゆるエクセルを見てハンコを押すだけの「課長・部長」ではないんです。

マネジメント層になると自ら手を動かすのをやめてしまう人が多い中、彼らは最新の技術動向を自ら学び、現場のエンジニアと同じ目線で技術的な議論ができる。だからこそ、現場から圧倒的なリスペクトを集められるし、プロジェクトに潜む致命的なリスクにもいち早く気づくことができるんです。

岸 裕介
岸 裕介

なるほど。コードの中身まで解像度を高く保っているリーダーだからこそ、現実のプロジェクトにおいて「品質」への妥協が許せなくなる場面もあるかと思います。一方で、ビジネス側からは「納期・コスト」が優先され、両者はトレードオフだと言われがちです。リーダーはこのジレンマをどう解消すべきでしょうか。

高橋さん
高橋さん

私は「品質とスピードは二兎を追える」と確信しています。要求仕様の段階で矛盾を見つけ、PR(プルリクエスト)の段階でコードのバグを潰す。上流で品質を作り込めば、手戻りが減り、結果的にコストも下がりスピードも上がります。

QCD(品質・コスト・納期)を担保できないと言い訳する組織は、大抵、後半のシステムテストで力尽きているんです。「品質リスクを論理的に説明し、上流で解決する」。これがリーダーの役割です。

岸 裕介
岸 裕介

上流で解決する。口で言うのは簡単ですが、それを組織全体で仕組み化するのは並大抵のことではありませんよね。

高橋さん
高橋さん

その通りです。ですから私が現在籍を置くAGESTでは、その理想を具体的なメソッドとして体系化しています。それが、開発の全工程に品質を組み込み、AIで加速させる『QA for Development』というアプローチです。

AIを単なるツールとして使うのではなく、開発サイクル全体の中に正しく配置する。この「仕組みとしての品質設計」が機能して初めて、リスクを恐れずにハイスピードな開発を続けることができるんです。

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DevSecOpsのサイクルにAI領域を加え、上流工程(Left-loop)から継続的に品質を担保するAGESTの「QA for Development」の概念図。(提供:株式会社AGEST / 会社説明資料「AGESTが目指す姿」より)

AI利用を目的化しない。生成AI時代こそ問われる「技術の基礎体力」

岸 裕介
岸 裕介

生成AIの普及で、コード生成のスピードは劇的に上がりました。AI時代において、テストエンジニアやQA(品質保証)の役割はどう変化していくのでしょうか。

高橋さん
高橋さん

AIについては、まず「目的と手段」を履き違えないことが重要です。最近の面接で「AIを使って自動化したい」と言う人が多いですが、企業が求めているのはAIを使うこと自体ではなく、「低コストで高品質なプロダクトを出すこと」です。

AIが膨大なテストケースを生成できても、それが的外れならかえってコストが増えるだけ。優秀な人がピンポイントで探索的テストを行う方が、よほど効率的であることも多いんです。

岸 裕介
岸 裕介

AIに頼り切るのではなく、人間がAIを「使いこなす」ための視点が必要だということですね。

高橋さん
高橋さん

かつてMicrosoftの同僚に言われた印象的な言葉があります。「俺のコードはお前がテストするが、お前のテストコードは誰がテストするんだ?」と。AIが書いたコードの品質をAIがチェックし、そのチェック機構をまた誰かが……という無限ループに陥らないためには、最終的に「何が正しいか」を判断できる人間の知性が必要です。

岸 裕介
岸 裕介

なるほど。AIに代替されないために、エンジニアが今こそ磨くべきスキルは何でしょうか。

高橋さん
高橋さん

トレンドの記事を追いかけて右往左往するのをやめて、技術の本質に立ち返ることです。AIの中身も結局は複雑な行列計算であり、ソフトウェア工学の原理原則は数十年経っても変わっていません。

クイックソートの知識や、ウォーターフォールの構造を知らずして、アジャイルやAIを本当の意味で使いこなすことはできません。変化の激しい時代だからこそ、こうした普遍的な知識がエンジニアの『基礎体力』となり、市場価値を決めるんです。

戦略的に履歴書を作る。グローバルでも価値を発揮できるキャリアパス

岸 裕介
岸 裕介

高橋さんご自身のキャリアについて伺います。多岐にわたるご経験の中で、人生設計における転機となった決断は何でしたか?

高橋さん
高橋さん

自分が他者とどう差別化できるかです。Microsoftに入ったときにそう思ったのかもしれません。当時の世界No.1企業には、飛び級で入社してくるような若き天才プログラマーや、世界のトップ大学院を首席で卒業したようなエリートが世界中から集まっていました。「これは正面から勝負はできない。何か勝つ方法を考える必要がある」と考えたんです。

岸 裕介
岸 裕介

世界トップクラスの天才たちと同じ土俵で正面衝突するのではなく、自分の「勝てる領域」を冷静に見極めてシフトされたのですね。

高橋さん
高橋さん

皆さんも転職を考えることがあると思いますが、人生設計に取り組み、努力し切ることが重要だと思ってます。私は20代でアメリカの大学院を出て、3ヶ国語をしゃべることを目標としました。

転職するときも、短期間での離職を繰り返さず「一貫性のある経歴」を築き、そこに誰もが知る大企業での経験を重ねることで、「圧倒的な説得力を持つ履歴書」を作るといったキャリアパスを戦略的に考えていました。

岸 裕介
岸 裕介

グローバルで誰もが知る企業を渡り歩くことで、経歴自体が強力なパスポートになったのですね

高橋さん
高橋さん

当時の世界トップ企業だったMicrosoft、ヨーロッパ最大のソフトウェア企業SAP、そして自分が純粋に製品を愛していたソニー。単なるネームバリューを追ったわけではなく、「世界で最も要求水準の高い厳しい環境で実績を残した」という事実を作ることで、自分に対する市場の信頼を盤石にしたかったんです。

この圧倒的な経験と実績があれば、次にどんな挑戦をするにしても、自分の実力を証明する強力なパスポートになりますからね。アメリカの大学院を出た時、私の周りは全員アメリカに残り就職しましたが、クラスで唯一自国に帰りました。

岸 裕介
岸 裕介

それはなぜでしょうか? シリコンバレーなどに残った方が最先端の開発に携われそうな気もしますが。

高橋さん
高橋さん

アメリカにいれば「少し優秀だけど、英語にハンデのあるエンジニアの一人」に過ぎません。でも、日本という市場に舞台を移せば、「最新のソフトウェア工学を英語で学んだ博士」として、他にはない強力なポジションを築くことができます。自分の希少価値が最も高まる場所を戦略的に選べば、キャリアの構築はぐっとスムーズになるんです。

だからこそ部下にも、「ただ漠然と転職するのではなく、自分の市場価値が最も際立つような『説得力のある履歴書』を戦略的に作りにいきなさい」とアドバイスしています。

「日本で5番以内」を目指す。掛け合わせで勝つキャリア論

岸 裕介
岸 裕介

エンジニアとして長く活躍し続けるためには、指導者やメンターの存在も重要になってくるのでしょうか?

高橋さん
高橋さん

「この人には到底かなわない」と圧倒されるような、本物の一流から指導を受ける経験は非常に重要です。私の場合、修士論文の指導教官がまさにそうでした。探索的テストの生みの親であるCem Kaner博士と、先進的なテスト手法を世に知らしめた名著『How Google Tests Software』の著者であるJames Whittaker博士です。

私の論文の最終発表の場では、Kaner博士が恐ろしいほど鋭いツッコミを次々と浴びせてきて、それを見かねたWhittaker博士が絶妙な助け舟を出してくれるという構図でした。こうした世界トップレベルの頭脳とのタフなやり取りは、自分の限界を引き上げてくれる本当に貴重な財産になっています。

岸 裕介
岸 裕介

「この一流の人たちから学びたい」といった基準で身を置く環境を選ぶことが、結果的にエンジニアとしての成長に繋がるのですね。最後に、現在キャリアに迷っているエンジニアに向けて、アドバイスをお願いします。

高橋さん
高橋さん

キャリアに迷った時は、まず「エンジニアの市場価値とはそもそも何で決まるのか」を本質的に考えてみてください。物の値段と同じで、人材の価値も結局は「需要と供給」のバランスで決まるんです。だからこそ、「今AIが流行っているからとりあえずAIをやる」と安易にトレンドに飛びつくのはおすすめしません。

私が過去にマネージャーをしていた時代、部下にはよく「どんな技術でもいいから、常に自分のスキルが日本で5番以内に入るようにしなさい」と言っていました。そうすれば絶対に食いっぱぐれることはありません。対象はソフトウェア領域のどんな技術でもいいんです。極端な話、それがCOBOLでもGo言語でも構いません。

岸 裕介
岸 裕介

日本で5番以内ですか。一見すると非常に高い目標に思えますが、特定の技術領域を細かく絞り込めば、十分に現実的な目標になり得ますね。

高橋さん
高橋さん

その通りです。例えば、私は「ソフトウェアテスト」という分野がまだメジャーではない時にそこを志し、トップレベルに達しました。そして次に必要なスキルは何かと考えた時に「英語」を選んだんです。エンジニアで英語が得意な人は少ないですから、英語とコンピュータの両方ができる人材になれば、一気に市場価値が高まるわけです。

岸 裕介
岸 裕介

一つの領域で圧倒的なNo.1になるのが難しくても、複数のスキルを掛け合わせることで、自分だけの強力な希少価値を生み出すことができるのですね。

高橋さん
高橋さん

ただ、今の時代に私と全く同じ道を歩むのはナンセンスです。重要なのは、今の時代に合った需要を感じ取り、その知識と技術を戦略的に習得すること。1つの技術でトップに立つのは至難の業ですが、需要のある2つの技術エリアを「そこそこのレベル」まで引き上げるのであれば、死ぬほどの努力は必要ないかもしれません。

テクノロジーは常に進化しますが、ソフトウェアの基本は変わりません。基礎知識と実務経験のバランスを保ちながら、たとえ今の仕事がつまらないと思っても、まずは真摯に取り組んでみてください。その経験が5年後、10年後に「掛け合わせの武器」として役に立つことがほとんどですよ。

ライター

岸 裕介
大学卒業後、構成作家・フリーランスライターとして、幅広いメディア媒体に携わる。現在は採用関連のインタビュー記事や新卒採用パンフレットの制作に注力しながら、SaaS企業のマーケティングにも携わっている。いま一番関心があるのは、キャンプ場でワーケーションできるのかどうか。
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編集

田尻 亨太
株式会社できるくん 記事制作ディレクター 17年にわたり複数の会社で一貫して編集・ライターとしてのキャリアを重ねる。2020年に採用やマーケティングを支援するコンテンツ制作会社VALUE WORKSを設立。記事制作を通じてあらゆる顧客の採用や集客を支援。2025年6月に株式会社ユーティルに事業譲渡し、現在はグループ会社の株式会社できるくんで、記事制作できるくん取材できるくんを立ち上げ中。