ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ二十五将来に待つはそこはかとない不安。 思わず叩いた転職のトビラ、その先に待つものは……

技術者として働いている以上、常につきまとう不安が「己の賞味期限」というものです。
本流から外れつつある技術に身を投じているなら、なおさら無視できないこの気持ち。N野さんもまた、そうした気持ちと向き合った結果、転職への道を歩むことになったのでありました。

COBOLへの危機感

N野さんが「このままじゃヤバいんじゃないか」、そう思うようになったのは入社から2年が経ったあたりのことでした。2000年問題が収束するにつれITバブルも終わりを迎え、彼のまわりではCOBOLの仕事が急速に減っていった。そんな時代のことです。
勤めていたのが孫請け企業であった関係から、元々彼は「元請けと自社との力関係」を敏感に察しており、「元請けっていいなぁ」という漠然とした思いを抱いていました。
そんな元請けから言われたままに、COBOLのプログラムをいじる毎日。「もっと上流工程に携わらないと……」「JAVAなんかの最新技術にふれていかないと……」彼の焦りは、徐々に色濃さを増していきます。
そして3年目が終わろうとする頃、彼は転職という道を選んだのでした。
N野さんの転職活動は、思いの外あっさりと終わりを迎えます。
それは退職して2カ月後のこと。とある企業に応募したら、その数分後に総務から電話がかかってきて、即面接が決定。
「はじめて中途を採るんですよ」
人事担当者の言葉を深くは考えないまま、彼はその会社へと入社を決めます。とある業界でトップシェアを誇る企業の、システム子会社でした。

即戦力のCOBOLループ

最新技術を身につけたい。そう思って入社した会社で、N野さんは「彼はシステムのことはなんでも知ってる」という紹介をされてしまいます。おかげで入社後に受けた研修では、聞きたいことも聞けない始末。
「オレはCOBOLしか知らんから、こんなVBとかデータベースまわりのことなんかわかんないんだよ~!!」という心の叫びは、むなしく宙をさまよいます。
そんな流れで研修もそこそこに即戦力として現場に回され、毎日夜10時を過ぎるまでの残業生活がはじまりました。配属された部署の現実は「中堅どころがほとんど辞めている」というもの。残業手当も夜10時を過ぎるまでは一律固定でスズメの涙。そして業務内容といえばCOBOL製のシステムコンバート作業や、COBOL製システムとの各種連携作業などなど……。結局COBOLとの縁は切れずじまいです。
しかもこいつが、バグだらけときたもんだ。
しかもこのバグが、なぜかN野さんのせいになるんだわ。

調べてみれば、彼にお鉢が回ってきたシステムは、3年間で20人以上が辞めていったいわくつきのシステムであったようです。 入社から数年が経ち、ふと周囲を見れば、中途の扱いは概してロクなもんじゃありませんでした。グループ会社再編にともなう給与改定とかいって、「採用3年目までは研修員扱いにする」と給与まで引き下げられる始末。新人ならまだしも、即戦力で使い潰しておきながらこの扱いには納得いきません。 そしてさらに数年が過ぎ、今は6年目が終わろうとしているN野さん。最近では「中途は半分使い捨てとして採用してたんだな」ということに気づき、他への転職を考えているといいます。

オチの一コマ
本日の一句

自分が新卒で入った会社でも、「中途は脇を固めるもの」といったセリフは何度となく耳にした覚えがあります。
新しい水に慣れる努力。自分の実力で周囲に認めさせる努力。そうした努力だけでは打破できない壁が、そこには存在しているようです。今の時世では、幾分ズレた考え方のようにも思えますが……。
そんなわけで転職時には、気になる給与や業務内容にばかり目をやるのではなく、そうした「中途という立場になることのリスク」についても、あらためて考えてみた方がいいかもしれません。そんなことを今さらながらに再確認した体験談でした。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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