ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ六十七待遇にいっさいの不満なし!!そんな彼に忍び寄る、黒い影の正体とは?

良好な人間関係と、やりがいに満ちた仕事たち。毎日が楽しくて、満足している。 そんな「ちょっと待って、なによそれ幸せすぎ」な会社生活を謳歌していたY田さん……のはずなのに、ああそれなのに。 まったくもって、一寸先は闇よのぅ……と嘆息しちゃう、そんな今回の体験談です。

突然の方針変更に現場は大騒ぎ

東京本社でY田さんたちが参加していたプロジェクトは、インフラ部分の開発とアプリケーション部分の開発とがはっきりと分かれていました。Y田さんたちが請け負っていたのはインフラ部分。これを、さらにアプリケーション部分にまで食い込むようにして、システム1つを、丸々仙台の会社……つまり自社で請け負うところまで持っていきたい。それが彼らの共通目標でした。そしてそれは、一部ながら実現に向かいつつあったのです。
ところが……、そこへ突然降って湧いたのが「東京撤退」という報(しら)せ。もちろん現場は大騒ぎです。
なにごとかと聞けば、新しく親会社から天下ってきた新社長の指示だという話です。彼は現場の状況など知らず、また理解する気もなく、ただ「仙台でおっきな仕事が取れそうだから」と、社内リソースのすべてをそちらに振り分けると言うばかり。
「ようやくここまで苦労して信頼と実績とを積み重ねてきたのに」
現場の反発は相当なものがありました。現場メンバーで再三再四話し合いが行われ、上司がその代表として、社長との直接談判にまで及んだほどです。
でも聞く耳ナッシング。
こうして、突然180度変わってしまった自社の方針に基づいて、Y田さんたち現場メンバー全員が、東京撤退を余儀なくされることになったのです。

「東京に残って……」その言葉に心が決まる

自社の上司、東京本社の上司、仕事を共にしてきたその2人は、Y田さんにとってどちらも尊敬に値する人物でした。お世話になってきたし、「この人のために仕事を頑張りたい」と、そう思えるほどの関係だったのです。
東京撤退が決まったある日、この本社側の上司がY田さんに声をかけてくれました。
「できれば東京に残って一緒に仕事をしてくれないか」……と。
「とても光栄でした。なので、そう言われた瞬間に答えは決まってました」
そう語るY田さん。そもそも既に東京で家庭を築いている彼にとっては、生活の基盤はこの東京にあるわけで、さらには仕事の規模、人間関係、自己のスキル向上と考えた時に、「東京という土地にとてもメリットを感じていた」ともいう彼にとっては、まさに渡りに船というか、ありがたいことこの上ない話だったのです。
「実は東京撤退の話が出た時から、独自に人材紹介会社などを回ってました」
転職活動の過程で「フリーランスという仕事形態」を知ったY田さんは、その後東京本社と法人格のフリーランスとして契約を結び、以前と同じ仕事にかかわっているのだといいます。
「本社側の社員になる道も提示いただいたんですが、自分の力ひとつで勝負する人々への思い入れもあって」
そんなY田さん。これまでと同じ仕事をしながらも、「歯車としてではなく、仕事を頂いているという感覚が強くなった」そうです。これをプラス要素と捉えつつ、彼は今日も仕事に邁進(まいしん)中! なのでありました。

オチの一コマ
本日の一句

自分が今どれだけ幸せかってのは、どれだけ感謝の気持ちが持てるか次第なんじゃないでしょうか。
どんなに良い境遇に置かれても、文句ばかりの人はやっぱり文句を探すんですよね。ところがY田さんは、常に誰かに感謝してる。それは「感謝に足る人が周囲にいるからだ」と思うかもしれないんですけど、素直に感謝できるY田さんだからこそ、そんな人たちに恵まれたんじゃないかなとも思うわけで。
卵が先か鶏が先かの話になっちゃいますが、「感謝の気持ちって大事だなぁ」「感謝できるって幸せなことだなぁ」と、そう思わずにはいられない体験談でありました。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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