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剣道と和食。和のアイデンティティが海外での道を拓いた

【香港で働く!インタビュー】第1回:瀬谷和仁さん
香港の懐石料理店で料理人をつとめる瀬谷さん。約20年にもおよぶ海外キャリアを通して、和食文化が広がっていく過程を見つめてきた瀬谷さんに、お話を伺ってきました!

剣道で培った人脈が海外への扉を開いた

プロフィール
香港在住・和食料理人
  • 名前:瀬谷和仁(せや かずひと)
  • 年齢:48歳
  • 在住都市:香港
  • 在住歴:19年
  • 仕事内容:和食料理人
  • 専門ジャンル:懐石料理

学生時代から続けていた剣道がキッカケで、20代の頃にスイスで暮らす機会がありました。それが初の海外経験でした。帰国後は海外暮らしの経験を生かしてホテル勤めをしていましたが、スイス時代に剣道を教えていた友人から香港でレストランを出店したいので手伝ってくれないかと相談があり、当時エネルギッシュで、活気に溢れていた香港に可能性を感じて料理人への転身を決意しました。

その友人の店で4年ほど勤めた後、何店かお店を渡り歩いて生計を立てていました。そんな頃、縁があって香港島の「中環」(セントラル)地区の和食懐石「尚膳」(現なお膳)を知ることになり、和食の世界にチャレンジすることにしました。









勤務先が香港から撤退するも、意外な形での再オープン

中華、飲茶以外の各国料理が今ほど一般的ではなかった当時の香港。純粋な和食で挑戦した「尚膳」でしたが、経営が振るわず閉店することに。自分は「尚膳」で培った腕を生かして独立しようと頑張ったのですが、思うように物事が進まず、閉店後は苦しい日々を過ごしていました。しばらくして、「尚膳」の店主を務めていた方から、海外進出をした「大戸屋」の店内にショップ・イン・ショップの形で懐石料理のお店を出すことになった、形を変えて「なお膳」を再オープンするから、とお声がかかり、新生「なお膳」に思わぬ復帰をすることになり、今に至ります。

香港で再オープンした「なお膳」の雰囲気
<香港で再オープンした「なお膳」の雰囲気>

返還、ビザ緩和、激動の香港で和食への理解が徐々に浸透

香港に移り住んだ時はまだ返還前で、中国というよりはイギリス的な雰囲気が強かったのですが、自分が長く滞在したスイスや欧米の国と同じく、日本食といえば「寿司」「天ぷら」「すき焼き」のイメージが濃くありました。

1997年の返還以降、香港人の意識やあり方も変化を余儀なくされる渦中で、なぜか日本の文化が流行したのを覚えています。直後の98年頃だったでしょうか。回転寿司やカラオケ、日本のドラマなどが急激に身近になりました。残念ながら食材はまだそれほど日本のものが豊富に流通していなかったので、現地で手に入る食材を使って和食を再現していたのですが、この頃はまだ香港ではそんなに和食に対する理解は深くなかったと思います。

それからしばらくして、香港人が日本へ渡航する際のビザが免除になり、多くの人々が日本旅行を体験するようになりました。その流れで日本文化、特に食文化に対する理解と興味が高まりだし、日本で提供されたそのままの料理を香港でも求めるお客様が多くなりました。今では大抵の食材が香港でも手に入るようになったので、和食独特の繊細な味を忠実に再現することが出来るようになりました。料理を楽しんでもらうだけでなく、お店の食に対するこだわりを説明させてもらったりもします。お客様が笑顔でお帰りになる姿を見ると、日本文化の普及に少しでも役立てているのかな、と思えて楽しいですね。

瀬谷さんが香港で出している懐石料理
<瀬谷さんが香港で出している懐石料理>

和のアイデンティティがコミュニケーションの助けに

海外で働きたい思いが強く、何も分からずに日本を飛び出てしまいましたが、剣道家、和食の料理人という2つが自分のアイデンティティとしてあった事が大きな助けになりました。最初のうちは少しの英語と、日本語でしか会話はできませんでしたが幸い自分の周りの外国の方々は、「日本文化を理解したい」と思ってくれています。何とか会話をこなしていくうちに、言葉も少しずつ覚えていきました。香港は英語が通じるので、不自由はしないのですが、現地の人達と親密になりたいのならば、住み始めてからでも現地の言葉をちゃんと覚える方がいいですね。

香港の方と剣道
<香港の方と剣道(右側:瀬谷さん)>

今は生活の充実が優先

以前は独立して成功したいと考えていましたが、香港の高額な家賃やスタッフを雇うコストの高騰などを考えると、個人経営では難しいと考えています。今は家族の事や料理の勉強、趣味の剣道をしながら心身の充実をはかることが大事だと思っています。もちろん、他国や日本を視野に入れながら次へのチャンスにも備えたいと考えています。

海外で料理人を目指す方へ

秘訣はとにかくポジティブであること。日本とは文化も言語も異なるのは当たり前で、不安要素を挙げればキリがないものです。ネガティブな考えはとりあえず脇へ置いて、自分が何で勝負したいか、勝負できるのか、といった拠り所をしっかり持つことが大事です。自分の場合は、それが当初は仕事とは直接関係のない剣道であったりしましたが、料理の世界で勝負するようになった今、剣道の精神が自分を支えてくれていると思っています。

「自分」をしっかり持ち、磨けるものがあれば、どこにいってもそれを高める努力をすれば必ず道は開けると思います。

この記事を書いた人
香港特派員サムネイル
武田信晃(たけだ のぶあき)
新聞社の記者や香港現地邦人紙の編集者を経て、ジャーナリストとして独立。香港との関わりは2001年から。2004年より女性向けライフスタイルブランドのLiuciaをパートナーと共同で香港で立ち上げ、そちらの経営も行っている。会社を経営していることを生かし香港・中国経済や社会の変化をいち早く記事に反映させている。地球の歩き方香港Web特派員としても活躍中。著書に「ファーストフードマニア」(社会評論社。共著)。