-Bridge the Gap-
職場のお悩み相談室
1コママンガ

掲載日:2020/11/20


本来の仕事に関係ない
翻訳や通訳を頼まれたら、
どうすればいい?


本来の仕事は翻訳・通訳じゃないのに、外国人だからという理由でメールの翻訳や取引の通訳をしょっちゅう頼まれて困っています。ほかにも、海外からの研修生の面倒や社内の人への英語の授業まで頼まれたことも……。(P.K.さん)

専門知識を磨きたいのに、本来の仕事と関係ない業務ばかり頼まれると、自分が成長できていないと感じてしまいます。それに、翻訳・通訳に対する手当もなく、本来の仕事じゃないから特に評価もされなかった……。(C.H.さん)

  • 外国人の
    キャリア
    アドバイザー

    こういうのは困りますね……。
    外国人でも、みんながみんな英語の翻訳や通訳が得意なわけではありません。英語が母国語ではない外国人はたくさんいますし、更に母国語ではない日本語から訳すのって意外と大変なんです。

  • 某社の上司

    え!? そうなんですか? 外国人の社員はみんな普通に英語で話せる、翻訳・通訳ができると思ってました。

  • 外国人の
    キャリア
    アドバイザー

    たとえ英語ができる外国人でも、翻訳や通訳を任されるのが本意ではないという人もいますよ。
    語学の練習をしたい人は喜んでやるかもしれませんが、そうではない場合、自分の仕事に集中したいと思うでしょう。採用された職種の業務範囲外のことばかり任されるのは、気持ちがいいことではないですよね。

  • 某社の上司

    たしかに。自分に置き換えてみても、それは嫌かもしれませんね。

解説

ステレオタイプと仕事文化の違いが原因

外国人は英語や翻訳・通訳ができて当然だというステレオタイプ

日本企業では、「外国人なら英語ができるはず」という思い込みを持ってしまう人も多いようです。本来、翻訳や通訳の仕事ではないポジションであっても、採用のタイミングから、「語学力も生かしてほしい!」と期待することも多いでしょう。そのため、外国語が必要な場面になると、おのずと外国人社員に頼ってしまうことになるのです。

しかし、日本で働いている外国人には、中国、ベトナム、韓国など、英語を母国語としない人のほうが多く、必ずしも英語が得意とは限りません。

母国語ではない英語を母国語ではない日本語に訳すのは、大変なこと。母国語を日本語に訳すことだって、周りの同僚が思っているように簡単ではないのです。翻訳・通訳の仕事には専門的なスキルが必要となりますし、聞き慣れない専門用語やビジネス上の言い回しを訳すのは想像以上に労力がかかってしまいます。



総合力を持った人材を求める傾向にある日本企業

また、日本と海外の仕事文化の違いも、原因の一つと言えそうです。日本企業では、業務を限定せずにさまざまな仕事をこなす人材を求める傾向にあります。そのため、その人の担当ではなかったとしても、時として仕事を依頼することがあるようです。

一方、海外の多くの企業では、職務内容が明確に記載されたジョブディスクリプションが企業と従業員の間で交わされ、従業員はそこに書かれていない業務を行う義務がありません。メンバーシップ型の日本企業と、ジョブ型の海外企業という文化の違いがあるのですね。

このようなギャップによって、周囲の同僚や上司からすると何気ない頼み事であっても、当の外国人社員にとっては負担や不満を感じる要求となってしまうのでしょう。

体験談

こういった悩みを経験した
外国人はどう対処した?

上司に交渉・相談する

P.K./女性/33歳/出身地:タイ/職種:システムエンジニア(アプリ設計/汎用機系)

本来の仕事と関係ないことを頼まれた時は、上司と交渉しました。自分ができる範囲、工数、対応する場合本来の仕事にどれぐらい支障が出るかを伝えて、上司に納得してもらったうえで、対応することにしています。能力的にできない場合は、間違えたりして、会社に迷惑を掛ける可能性があるため、外部の翻訳会社にきちんと依頼したほうがいいと提案しました。

外国人キャリアアドバイザーコメント

自分の状況をロジカルに伝え、代替案を含めて提案しましょう

P.K.さんの対応はとてもいいと思います。「この仕事はできない」とバッサリ断ってしまうと、雰囲気を悪くしてしまいますしね。


ポイントは、ロジカルに状況を説明し、代替案まで提案することです。「私の専門分野ではないので、外部に依頼したほうが仕上がりも確実」というように、会社のためを考えているというニュアンスを含めると、「じゃ、次からはそうしよう」と考えてくれると思います。「私も対応したいのですが……」といった言葉を付け加えると、なお良いでしょう。

業務を遂行し、キャリアを広げる

K.S./女性/30歳/出身地:韓国/職種:コンサルタント(営業・マーケティング)

日本国内の法人営業に配属されましたが、ほどなくして韓国支店を立ち上げることが決まり、国内の法人営業の仕事と並行して、韓国語や英語の書類の翻訳などを任されるようになりました。最初は私にできるだろうかという不安もありましたが、働きぶりが認められ、海外営業のセクションに異動し、日本と韓国のブリッジを担う役割に専念。新たな専門性とキャリアを築くことができました。

外国人キャリアアドバイザーコメント

新たな専門性を獲得できれば、キャリアの選択肢が広がる

K.S.さんの体験談は、自分の職務外の仕事を経験することで、新しいキャリアに踏み出せた事例ですね。


慣れないビジネス文書の翻訳は、母国語の韓国語であっても困難だったはずです。しかし、そこに一生懸命対応した結果、国内営業から海外営業へキャリアチェンジを果たし、日本と母国をつなぐやりがいを実感されたことでしょう。K.S.さんのように新たな専門性と経験を獲得できれば、キャリアの選択肢がいっそう広がります。

新しい仕事を探す

C.H./男性/36歳/出身地:中国/職種:海外営業

前職ではマーケティング部に所属していましたが、本来の仕事とは異なる中国語の資料の翻訳や顧客とのやり取りの通訳にかかりきりになっていました。不満を感じながらも対応していましたが、マーケティングの仕事に集中できなかったため、評価が下がってしまいました。翻訳・通訳に対しては評価されることもなく、専門知識も磨けないと感じて、転職することにしました。

外国人キャリアアドバイザーコメント

悪循環を断ち切るためには、転職も選択肢の一つです

一度引き受けてしまうと、頼む側は「これからも翻訳や通訳はC.H.さんにお願いすればいい」と思ってしまいますよね。そうすると余計に断りにくくなってしまい、C.H.さんのように本来の仕事に割く時間が圧迫され、評価が上がらないという悪循環を断ち切れなくなってしまいます。


そんな状況になったなら、我慢するのではなく、まずは上司に相談してみましょう。それでもダメだったらC.H.さんのように転職を決断し、環境を変えることもありだと思います。今後のキャリアを考えても、専門分野に専念し、専門性を磨ける環境で働くほうが良いと思います。

アドバイス

日本独特の仕事文化を理解することも大切

「外国人は語学力がある」というイメージだけで、慣れない翻訳や通訳の仕事をお願いされるのは困ったものです。


しかしながら、日本の多くの企業には明確なジョブディスクリプションがなく、仕事の範囲が定められていないため、職務外の仕事を依頼されるケースはよくあることです。


そうした日本独特の仕事文化を理解し、日本の企業で働くのなら仕方のないことと、ある程度割り切って引き受けてみることもありだと思います。その際には、査定の面談時に翻訳・通訳の仕事を行ったことをしっかりとアピールし、評価の対象にしてもらうように掛け合いましょう。

上司にロジカルに相談し、それでもダメなら転職の道も

ただし、何でもYESと受け入れるのは間違いです。自分の能力を超え、過度の負担が生じてしまう場合には、遠慮なく上司に相談をしましょう。


ポイントは「やる」か「やらない」か、ハッキリさせることではなく、自分のできる範囲やレベル、要する時間、自分の本来の仕事に生じる支障などをできるだけ具体的に伝え、できれば「こうしてはどうですか」という代替案を提案して、双方の落としどころを探ること。


それでも無理な依頼が続くようなら、配置転換の希望を出したり、キッパリと転職を考えることも手だと思います。

会話例

上 司
Aさん、この英文書の翻訳をやってくれる?
Aさん
できれば引き受けたいのですが、自分の仕事が立て込んでいまして。
POINT「引き受けたいのですが」など対応したい気持ちをアピールするワンクッションを入れる
上 司
そう? いつだったらできそう?
Aさん
自分の仕事は今週いっぱいかかってしまいます。
この文書を翻訳するとなると、専門用語を調べながらの作業になるので、おそらく1週間は必要ですから、提出は再来週以降になってしまいます。
POINT現状の作業や必要な工数もしっかりと伝える
上 司
そっか。どうしようかな……。
Aさん
翻訳の専門業者に頼んでみてはどうですか?
プロに任せれば品質もいい
ですし、納期も交渉できると思いますよ。
POINT代案を提示する
上 司
そうだね。今回だけじゃないし、そうしてみようか。

まとめ

「自分の能力や仕事範囲を考慮したうえで業務を依頼してほしい」と、考えている外国人が少なくないようです。「どうして専門外のことばかりやらないといけないの?」と不満に思ったり、頑張って引き受けたのに評価に結び付かず、フラストレーションを溜め込んでしまったりと、悩みを抱えながら日本で働いている人も。


もしあなたがそうした状況になってしまっていたら、一人で抱え込まずに、上司や周囲に相談してみてください。あなたの気持ちを理解して状況が改善するかもしれません。その際は相手方にも配慮した言葉遣いやコミュニケーションに気を付けるとなお良いでしょう。お互いを尊重し、配慮しあうことで、仕事に対する考え方のギャップも少しずつ埋めていけるのではないでしょうか。

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