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ITエンジニアのキャリア戦略を考える

CTOを目指すべき? 転職ニーズから考える、新時代のエンジニア生存戦略

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最近耳にすることの多い、CTO(最高技術責任者= Chief Technical Officer)という言葉。転職サイトでも「CTO募集」の求人を見かけることが増えています。将来のキャリアプランとして、CTOというポジションに興味を持っているエンジニアの方も多いのではないでしょうか?

なぜ今、CTOのニーズが高まっているのか。その背景をはじめ、CTOになるために必要なスキル、これからの時代に求められるエンジニア像について、政府CIO(情報化統括責任者)補佐官を務める細川義洋さんに詳しくお話を伺いました。

CTOは単なる技術部門のトップではない?

――現在、細川さんは政府CIO補佐官を務められています。業務の中でCTOと呼ばれる立場の方と接する機会は多いのでしょうか?

細川 義洋のサムネイル

細川

政府CIO補佐官というのは、行政の中でIT技術をどう生かしていくかを考え、推進することが仕事ですから、周りにはCTOのような役割を担っているメンバーがたくさんいますし、またCTOという肩書きでテクノロジーの知識をベースに民間企業の経営に寄与されている方とお話しする機会も少なくありません。

――そもそも、CTOとはどのような役割を担うポジションなのでしょうか?

CTOの仕事は、AIやIoT、FaaSなどさまざまな技術を生かして、組織の仕組みや仕事のやり方、提供するサービスを変革することです。企業が抱える課題や目標を、テクノロジーを使って解決・実現していくポジションと言えるでしょう。

単に技術部門のトップとして「技術をどう生かすか」ということを考えるだけではなく、企業の課題や目標の部分、つまり「会社としてどうあるべきか」という経営方針を考えることも、CTOが担うべき重要なミッションです。

CTOとして本来の役割を果たすためには「T=Technical」の専門家として技術的な知識と視点を持ちながら、「O=Officer」の部分を強く意識して経営に責任を持つ姿勢が重要だと思います。

――経営的な視点が必要ということですね?

そうです。例えば、財務諸表を見て「ここのコストはもっと抑えられないのか?」「売り上げが伸び悩んでいるのはなぜか?」と、経営的な視点でさまざまな課題や問題点に気づけるようなスキルが必要です。

その解決策としてどのような変革が必要で、どんな技術で実現していくのか。グランドデザインを考え、実際にカタチにしていくのが、CTOの本来の役割だと思います。

――技術的なスキルは、どの程度必要なものでしょうか?

もちろん、プログラミングやインフラ、セキュリティなどの基本知識がないと話になりませんが、あらゆる技術について深く知っている必要はありません。最先端の技術に関してはネガティブな内容も含めて、自然と新しい情報が入ってくる人脈や環境をつくっておくことが重要です。

大切なのは、1つでも多くの「引き出し」を持っておくこと。そして、日々入ってくる情報を理解し、活用できる知識があれば問題ありません。情報への感度が高く、何をどう使うか的確に見極め、インテグレーションできること。それが優秀なCTOになるための条件と言えるでしょう。

多くの企業がCTOを求める時代になる

――CTOというポジションが注目されるようになった背景には、どのような理由があるのでしょうか?

シンプルに言うと、ITの重要性がますます高まってきているということだと思います。
現在、デジタル技術を活用して新しい価値を生み出そうと、経済産業省が中心となって「デジタルトランスフォーメンション(DX)」を推進していますが、こうした動きの背景には、多くの企業が「守り」と「攻め」の両面からIT活用を迫られている実態があります。

「守り」というのは、コスト削減や生産性向上を図ることで企業の体質をより強くする必要があるという意味です。例えば、国内の企業が人件費の低い新興国の企業と競り合おうと思ったら、ITによって生産性を上げて、人件費の割合を下げることは必須の課題です。

「攻め」というのは、イノベーションの必要性を指しています。今までにないサービスやプロダクトを生み出すためには、テクノロジーの力が絶対に欠かせません。しかも、ただ構想を描くだけでなく、スピード感を持って実現していかなければ、世界から取り残されてしまいます。そうした状況の中で、技術的な視点から経営に関する提言ができ、それをカタチにできる人材を求める企業が増えてきたのでしょう。それが、CTOがクローズアップされるようになった理由だと思います。

――そう考えると、グローバルに事業を展開している企業はCTOを求めるニーズが高そうですね。

そうですね。国際競争力を考えると生産性を高めなくてはいけませんし、海外の先進的な企業と勝負するためには、現実的にイノベーションを起こす必要がありますから、優秀なCTOを求める傾向は強いと思います。

ただ、グローバル企業に限らず、コストや生産性に課題を持っている企業の多くは、ITを活用して解決しようと考えています。「働き方改革」の流れで生産性の向上はあらゆる企業にとって必須の課題となっていますから、これからますますCTOのニーズは高まっていくでしょう。そうなると、企業側も意識を大きく変える必要があると思いますが……。

――「企業側も意識を変える必要がある」というのは、どういうことでしょうか?

今のところ、日本の企業では「IT」と「経営」が分離されていることがほとんどです。例えば、CTOという肩書きを持ちながら、その実態は情報システム部のトップで、経営には責任を持たないというケースも少なくありません。アメリカや中国ではITの価値が認められていて、CTOが経営の中枢に携わることが当たり前です。だからこそ、イノベーションを起こしやすく、世界的に有名な企業も数多く生まれています。

本当の意味でITを経営に生かそうと思うのであれば、日本の企業も「技術者が経営に口を出すことが当たり前」「口を出してもらわないと経営が立ち行かない」という意識を持って、「IT」と「経営」を融合させていくべきだと思います。

――日本の企業が意識を変えるために、何が必要なのでしょうか?

会社の中間管理職を例示する表現に「シッククラウド」という言葉があります。新しい意見や考え方を阻む「分厚い雲」という意味です。一般的に、社長をはじめとする経営陣は、経営に関する課題意識が高く、テクノロジーの活用にも積極的であることが少なくありません。また、中間管理職よりも下の世代の若手社員たちはITに対する感度が高く、ある意味では無責任に改善提案などを発信しやすい立場にあります。

その一方で、中間管理職は変化を恐れる傾向にあります。責任ある立場として、安全につつがなく業務が遂行されることを第一に考え、「昨日までやっていたこと」を優先的に受け入れてしまうのです。こうした意識や行動が、「分厚い雲」となって、新しいやり方や考え方を阻んでしまうわけです。本当の意味でITを経営に活用し、CTOが活躍できる風土をつくるためには、この「分厚い雲」をなくすことが重要です。

そのためには、例えば中間管理職の評価制度を改めるなど、新しいことに前向きにチャレンジできる仕組みをつくることが必要だと思います。減点法での評価制度では、「失敗しないことが重要」という考えの基、現状維持が優先されてしまいますから。

CTOを目指すなら「O」の部分を意識しよう

――最近では、CTOを転職サイトなどで公募しているケースも見受けられます。それだけ、CTOのニーズが増えているということでしょうか?

ニーズが増えていることは間違いありません。ただ、CTOは経営にかかわる重要なポジションですから、そうした人材を転職サイトなどで公募することは企業にとっても大きなリスクがあります。

先ほど日本では「IT」と「経営」が分離している企業が多いという話をしましたが、個人的な所感を言えば、恐らく本来のCTOの役割を期待して公募している企業は少ないのではないでしょうか。ある程度の知識・経験を持ったエンジニアを求めている企業が、それなりの立場を用意しているという意図で「CTO」という名称で公募しているケースが多いように思います。

――求職者としては、きちんと求人の内容を見て判断する必要がありますね。

求人の内容をしっかりと見極めることは重要ですが、応募する側としては「将来的にCTOをやってみたい」という想いで飛び込んでみても構わないと思います。いずれにしても、転職後すぐにCTOとして経営にかかわるのは容易ではありません。技術的な知識だけでなく、その企業が抱えているITとは直接関係ない課題にも気づけるようなスキルがあって、初めてCTOとして活躍できるわけですから。

最初はエンジニアとして会社から求められる役割をこなしながら、会社の組織体制や業務プロセス、制度などを見て、良いところ・改善すべきところを考え、経営的な視点を養うと良いでしょう。

転職者の大きなアドバンテージは、他社に勤めた経験があるからこその知識・視点を持っていることです。他社と比較して分析できるため、現状のやり方に疑問を持ちやすく、「こうすれば生産性が上がるのでは?」「コストが抑えられるのでは?」と改善点も気づきやすいはずです。そういう強みも生かしながら、課題改善の意識を持って仕事に取り組むことで、少しずつCTOという肩書きに実態が伴っていくと思います。

――CTOとして活躍している人は、どのようなタイプが多いのでしょうか? 年代などの傾向はありますか?

若い世代のほうが先進的なイメージがあるのでCTOとして活躍している方が多いと思われるかもしれませんが、年代はあまり関係ありません。若手からベテランまで幅広い世代の方が活躍しています。

共通していることは、性格的に好奇心が旺盛で、現状をそのまま受け入れないタイプということでしょうか。現状の制度やシステムが良いか悪いかは置いておいて、「なぜ、こういう仕組みになっているのだろう?」「どうしてこの手順が必要なのだろう?」と現状に疑問を持つことが、CTOに欠かせない基本的な資質だと思います。

――これからCTOを目指す人は、常に疑問を持つ習慣をつけると良いわけですね。ほかには、どのようなスキルを身に付けておくべきでしょうか?

エンジニアであれば技術的な知識は普段の業務で身に付けることができますから、「O=Officer」につながるスキルを意識したほうが良いでしょう。

例えば、財務諸表の見方や業務プロセスの記述方法(BPMN)、財務以外の観点から経営を評価する手法(バランススコアカード)などを知っておくと、将来的に大きな強みになると思います。知識レベルとしては、それほど深くなくても構いません。財務諸表に関して言えば、自社と他社の決算報告書を見比べて、強み・弱みを見極められる程度の知識があれば大丈夫でしょう。数カ月勉強すれば身に付くはずです。

こうした経営に関する基本的な知識がなければ、「T=Technical」の部分を経営に生かすことはできません。CTOになるには、CEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)といった各領域の専門家たちと共通の土俵で議論できる知識を身に付けておく必要があります。

CTOになれば人生の選択肢が広がる

――エンジニアからCTOへステップアップしていくために、どのようなキャリアパスを意識すべきでしょうか?

エンジニアとしてのキャリアパスには、いくつかの方向性があると思います。例えば、プロジェクトを管理するマネジャーにステップアップする道もあれば、課題を抽出して解決策を提案するコンサルタントとして活躍する道もあります。

CTOというのは経営課題を見つけて解決していく仕事ですから、そのポジションを目指すのであれば、コンサルタントのような「提案者」としてのキャリアをなぞっていくのが良いでしょう。

そして、提案者として経験を積む中で、課題を解決するためにはITの力だけでなく、組織の在り方や会社の方針も変えていく必要があるという認識を持つことが非常に重要だと思います。

――キャリアのゴールとしてCTOへとステップアップした先には、どのようなメリットがありますか?

CTOというのは、とてもハイレベルな職種です。CTOになれば、入ってくる情報や付き合う人脈も広がり、見える景色も大きく変わるはずです。エンジニアという立場では出会えないような大企業の経営者や著名人と会うチャンスも増えると思います。そういう環境を生かして、どのような人生にするかは自分次第ですが、選択肢が広がることは間違いありません。

また、CTOとしてキャリアを積めば、その知見を生かしてアドバイザーや経営顧問としてさまざまな企業の経営にかかわることも可能になるでしょう。そうなれば視点がより多角的になり、更にいろいろな知識が広がっていくと思います。

「一流の人」と会うことが自分の志向を知る手掛かりになる

――CTOのニーズが高まっている背景には、IT活用の重要性が増している状況があります。これからの時代に必要とされるエンジニアとは、どのような人材でしょうか?

大切なのはスピード感だと思います。今や、半年前には聞いたこともなかった技術が一気に広まり、浸透する時代です。3Dプリンター、VR・AR、AIなど、ちょっと前まで最先端の技術とされていたものが、すでに一般社会で定着しています。エンジニアとして活躍するためには、そうした時代の流れにスピード感を持って対応していかなくてはなりません。

そのために重要なことは、割り切って情報を取捨選択することです。どんどん進んでいく最新技術の情報をすべて網羅するのは簡単なことではありません。自分のやりたいことを見定めて、必要な情報をキャッチアップし、意識的に乗り換えていくことが大切だと思います。

もちろん1つの技術領域で力を発揮し続けることも価値のあることです。ただ、常に最新の技術やサービスを組み合わせながら新しいモノをつくるほうが、エンジニアとしては楽しいのではないでしょうか。

――特にこれからエンジニアを目指そうと考えている若い世代は、どんなことを意識すべきでしょうか?

新しく出てくるさまざまな技術・サービスに迅速に対応するためには、基盤となる知識が必要です。プログラミング、データベース、通信・ネットワークなどの基本的な構造は、基礎知識として学んでおくべきだと思います。

私のキャリアの中でも、オブジェクト指向の開発言語が登場した時にエンジニアとして大きく意識を変える必要がありましたが、プログラミングの基礎を身に付けていたお陰でスムーズにキャッチアップできたという経験があります。若いうちに身に付けた基本的な知識は、将来CTOになった時にも、新しい技術を理解し、的確に判断する基盤として役に立つはずです。

――やはり、これからの時代にエンジニアとしてキャリアアップしたいのであれば、CTOというポジションを目指すべきなのでしょうか?

決してエンジニアの頂点にCTOがあるわけではありません。あくまでも選択肢の1つとして考えるべきだと思います。エンジニアの中には経営に興味がある人もいれば、興味がない人もいます。自分で手を動かすのが好きな技術志向の人は、無理してCTOを目指す必要はないでしょう。

ただ、技術者としての道を突き詰めるよりも、CTOとして経営にかかわったほうが大きな収入を得られる可能性は高いかもしれません。

――技術志向のエンジニアは、どんなキャリアプランを持つべきでしょうか?

会社の経営やマネジメントに興味がなくても、技術に特化したエンジニアとして現場で働き続けることはできると思います。

ただ1つ心配なのは、IT業界全体で人手不足が続いている状況を考えると、現場で必要とされるがあまり、いつか疲弊してしまうのではないかということです。ずっと現場で手を動かし続けるにしても、時には人に任せたり、後輩に教えたり、リーダー的な振る舞いができたほうが長く活躍できるのではないでしょうか。

必ずしもPM(プロジェクトマネジャー)や管理職を目指す必要はありません。プログラマー仲間を集めて一緒にモノづくりをしていく。そんなイメージで、仲間たちをリードする役割を果たしていけば良いと思います。

――自分が技術志向なのか、マネジメント志向なのか、CTOを目指すべきなのか。適性を見定める方法があれば教えてください。

有効なのは、その領域の「一流の人」と会うことです。有名なCTO、実績のあるPMなど優秀な技術者の講演を聞きに行ったり、可能であれば一対一で話してみると良いと思います。

例えば、CTOの話を聞いてみて、「この人にはかなわない」「この人とは話が合わない」と思ったら、「O=Officer」の適性はないかもしれません。逆に、「この人には近付けそう」「この人とは話が合う」と感じたら、似たような志向を持っているということです。

一流の人と会うことで自分の適性や強みが自覚でき、これから学ぶべき領域や目指すべき方向性が分かってくるはずです。社内の上司など身近な人でも構いませんが、より大きな刺激を得るために、できれば外部の一流と会ってみると良いでしょう。

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細川義洋のサムネイル2

細川 義洋(ほそかわ よしひろ)
ITコンサルタント、政府CIO補佐官

システム開発・運用の品質向上や企業のIT戦略立案の支援を行いながら、著述、講演も行う。現在は、政府CIO補佐官としてデジタルガバメントの推進やIT化による行政改革などに取り組むほか、行政におけるAI活用の研究を行っている。近著に「ある日突然AIがあなたの会社に」(マイナビ出版)、連載コラム「転職バーのハルカさん」(@IT×マイナビ転職)がある。

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