【カタカナ語編】「ナレッジ」とは、使うと自分が賢くなった気分に浸れる言葉である|#エンジニアあるある システム開発現場・実録IT用語辞典

【カタカナ語編】「ナレッジ」とは、使うと自分が賢くなった気分に浸れる言葉である

お疲れさまです。2カ月ほどCをやっていた後に急にJavaに戻ったら、どうも何かがしっくり来ないMWです。例外処理とか。便利屋をやっていると仕事が飽きなく良いのですが、頭の切り替えは割と面倒です。

この業界で長く暮らしていると、言語だけでなく、いろんな用語、特に不可思議なカタカナ語と絡むことが自然と増えてきます。

特に割と偉い人たちが出席する会議の席にいると、「あれ、これってどういう意味だったっけ」と一瞬考え込んでしまうような言葉がちらほら出てきたりします。

イノベーション、アライアンス、パラダイム、コンプライアンス、ソリューション。一応、意味は知ってるけど、パッと言われた時に思わず考え込んでしまう用語たち。ただでさえ、外来の言葉がそのまま使われることが多いうえに「それ、日本語で言えばいいんじゃない?」と思ってしまうような「カタカナ語」も点在するので、とても覚えきれない量の小難しい言葉たちが、開発現場には存在してしまっています。

そういった言葉を駆使するのがうまい人と話すと、良い頭の体操にはなりますが、心の中で日本語で話してくださいと思ってしまうことも多いです……。

#エンジニアあるある 実録IT用語辞典【カタカナ語編】INDEX

「ナレッジ」とは

英語で書くと、Knowledge。つまり、知識。

この言葉単体で使用することもあるが、ナレッジマネジメントという言葉で使われていることが多いような気がするもの。

ナレッジマネジメントは意訳すると、個人が持っている知識を上手に管理して、人の入れ替わりなどが発生しても業務に必要な情報がスムーズに伝達できるようにしよう、みたいな意味になるもの。

これを小難しく、ナレッジマネジメントによる暗黙知の可視化と共有が急務である、みたいな中身があるんだかないんだか分からない言葉で表現すると、なんとなく自分が賢くなったような気分に浸れるかもしれない。

けど、こういった小難しそうな言葉を使っても、周囲にはあまり理解してもらえない(しゃべっている本人も分かってないで使ってる場合とかは特に)恐れがあるので、どんな時でもできるだけ噛み砕いた言葉を使うことがおすすめされる。

エンジニアが日ごろ働いている時にナレッジなるものを意識するタイミングとして、「引き継ぎ」が挙げられる。

引き継ぎ時には自分の脳みそにだけため込まれたそれなりの量のナレッジを、他のメンバーや新任者と共有しなければならないのだが、何カ月とか何年とか時間をかけてため込んだ知識を数週間で共有するなんて芸当が、どうやれば可能なのかは不明なことが多い。

「ペンディング」とは

未決定とか保留という意味で使われる言葉。

Excelで作られたタスク管理表の進捗状況の欄に、「未着手」、「実装中」、「完了」などの項目と並んで、この言葉が載っているのを見たことがあるもの。 セルの幅、意味の伝わりやすさから考えてなぜ「保留」と書かないのだろう? という気持ちを起こしてしまったりするもの。

ペンディングは大きく分けて2種類ある。

1つは問い合わせの答えが返ってくるまで動けないとか、何らかのタスクが終了してからでないと実施するかどうかも決められないといった、根拠を持ったペンディングである。これは、諸問題が解決されればいつかステータスが「実装中」や「完了」へと変わることもある、希望があるペンディングである。

もう1つは、優先順位が低かったり、工数の割に効果が薄かったりなどの理由で、「やりたい気持ちはあるけど、とりあえず放置しよう」という扱われ方をするケースである。これは、誰もその作業に取り掛かることなくタスク表の中でひっそりと眠り続ける、希望のないペンディングである。

希望がないほうのペンディングの類義語には「次フェーズでやる」「予算が出たらやる」などがある。

「タスク」とは

Windowsが持つタスク機能や、OSの処理単位としてのタスク(プロセスと同じような意味合い)など、さまざまな意味で使われている言葉。エンジニアが今後やらなければいけない(もしくは現在行っている)作業項目を指して、タスクと呼ぶこともある。

主な使用場面として、新しく作業を振られた際に「今、3つタスク抱えてるから、これ以上は勘弁してください」と回答したり、大量の作業を同時並行で進めなければならないような状況に陥った時に「人間の頭は複数のタスクを同時にこなせるようにはできてないんですよ」とボヤいたりする状況などがある。

「WBS」とは

テレビ東●系列で放送されている経済情報を中心としたニュース番組で、マーケティングなどを担当している人たちは好んで視聴している場合が多いようだ。午後11時からスタートするため、これを見ることができる時間に帰宅できるかどうかが人間らしい生活をしているかどうかの分かれ道になるかもしれない。

というWBSを思い浮かべる人も多いかもしれないが、システム開発においては「Work Breakdown Structure」、すなわちプロジェクトマネジメントにおいて必要な作業や成果物を洗い出して計画を作る際に使われる手法を指す。

洗い出した項目、必要になる成果物を分類・整理したもので、すべての項目を消化するとプロジェクトが完了するように作成される。

あくまで手法の1つであって、WBSを作成している現場だからといって作業がちゃんと洗い出せているとは限らない。そこはどうしても担当者のスキルに依存してしまうところである。

ただ、まともに作業項目の洗い出しもできていない現場で働いた経験のある人は、現場にこれがあるのを見かけると、せめて努力はしているのだなという、ちょっとした安心感を抱くこともある。

「ウィン・ウィン(Win-Win)」とは

まれに開発現場でも使われることがあるビジネス用語。

2つの会社間でビジネスをする時に、お互いの会社が儲かる(もしくはメリットがある)取引ができた場合を「Win-Win」、自分だけが儲かって相手が損をする場合を「Win-Lose」、相手が儲かって自分が損する状態は「Lose-Win」、両方儲からなかった場合は「Lose-Lose」と呼ぶ。

クライアントからもらった要件を見た時に「これ、そのまま実現するとサーバの負荷が酷くて使い物にならないだろうな」とか「こういうUIはユーザから嫌われるから、きっと作っても誰も使ってくれないだろうな」という第一印象を抱いたけど、とりあえず言われたとおりに作ってみた、という体験をしたことがあるエンジニアは、「Lose-Lose」のことはよく知っていると思われる。

逆に良い要件と、良いクライアントと、良いリーダーと、良い実装者と、妥当な予算に恵まれて、お互いが十分な儲けを享受できるという見たことも聞いたこともないようなプロジェクトを経験したことがある人は、「Win-Win」がどういう関係なのかについても知っているかもしれない。

3,000万円の予算で十分黒くなる案件に9,000万円ふっかけても、相手がそれ以上に費用対効果を得てくれれば、それはそれで「Win-Win」。

赤字になりそうな状況に責任を感じた社員が土日出勤フルマークのサービス残業ラッシュで強引に黒字に持っていったとしても、それで両方の会社が儲かったならビジネスとしては「Win-Win」。

ただし、残業ラッシュが影響してプロジェクト終了後に社員が長期休暇を取ったまま帰ってこなくなったり、大量離脱したら、長期的に見ればLose。

というように、「Win」になるか「Lose」になるかの判定にはいろんな要素が絡んでくるので、一概に儲かったからWinとも言い難い。

しかし判定基準はさておき、お互いに得をして笑顔でいられればいいという考えが、ビジネス的に大切だということについては、予算を大幅に超過した状態でお客さんとミーティングを持った時に感じるもの凄いプレッシャーを知っている人であれば、強い実感を持って頷いて頂けるものだと思われる。

「ルーズ・ルーズ(Lose-Lose)」とは

Win-Winの対義語。

例えば業務効率化を目指してシステムを新規開発したのに、ろくに下準備もせずに情報も、体制も、考えも不足してる状態で作り始めてしまったせいで、業務が余計に煩雑になるような代物が出来上がってしまった、というありがちな状態に出くわしたら、それは「Lose」発生フラグが立っている状態と言ってよいだろう。

上記例の状態ではまだ「Lose-Lose」ではなく、「Win-Lose」や「Lose-Win」になる可能性も残されている。
「そちらが言ったとおりに作ったのですから、とにかくお金を払ってください!」と言って話を通せば、開発会社側的に「Win-Lose」の関係に持ち込める。
逆に「責任持って作り直してくれ」と言われて、修正費用を開発者側が一方的に被るという状態になると、開発会社側の激しいLoseになる。

どちらの状況も開発現場にいるとよく見かける光景だが、それに比べてWin-Winな光景を見かけることが少ないような気がするのは、気のせいだろうか?

「バズワード」とは

意味があるようでない言葉。もしくは明確な意味を持たないあいまいな言葉。
日々生まれては消える怪しげな新語や、十分に翻訳されていない外来語が飛び交うIT業界には特別多く潜んでいるもの。

専門家が口走ったちゃんと意味のある言葉が、発言者の手を離れて独り歩きしていくうちに、徐々に意味があいまいになり謎の言葉と化していくことで発生する。

もしくは元々意味なんて考えてない状態で、営業戦略の1つとして発してたそれっぽい言葉が、そのまま広まってしまうことでも発生する。

英語での会話能力がある人やその翻訳者が、日本語で言うより英語で言ったほうが意図が正確に表現できると思って使った外来語が、英語力のない人々の間で意味は分からないけどなんとなくそれっぽい言葉として使われてしまうなんて形で発生する場合もあるらしい。

【使用例】
ソリューションのユビキタス化によりトータルでの開発効率を高め、よりスケーラビリティの高いWEB 2.0サービスの実現を可能にした。

【意味】
上記例文は明確な意味は持っていません。あえて訳すなら「24時間365日働ける環境を用意したから死ぬまでユーザの要求に答え続けろ」もしくは「それっぽい言葉を並べてお茶を濁しておこう」といった意味になると思います。

「Web 2.0」とは

バズワードと呼ばれたことのある、代表格の1つかもしれない言葉。

この言葉の提唱者は動物マークの(もしくは1冊4〜5, 000円するのが当たり前なエンジニアの財布の天敵として知られる)書籍でお馴染みのオライリーの創始者、ティム・オライリー。

旧来のテキストや画像をただ配信するだけのコンテンツに対して、ユーザによる編集や評価、リッチなユーザインターフェース、データの分散と蓄積などを取り入れた新しい形のサービスを指して、Web2.0と総称したもの。

定義自体はちゃんとしているので、バズワードと呼べるような代物ではないはずなのだが、実際に会議で「Web2.0志向のサービスです」と言って見せられた代物が、ただJavaScriptをゴリゴリ書いただけの微妙な代物だったり、Flexで頑張って作ってあるけどコンテンツ内容はすてきなくらい旧態依然とした内容だったりするようなちょっと勘違いのある事象に遭遇すると、「やっぱこれ、バズワードだわ」という印象を抱いてしまう。

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注意!!

この連載記事には必ずしも正しいとは限らない内容が含まれています。この記事を信じたことによって発生した障害に対して、筆者及び株式会社マイナビは一切の責任を負いません。ご容赦ください。

※この記事は2007/11/23〜2009/08/28に連載された内容を再構成しています

著者プロフィール:MW(えむだぶりゅー)

Java、PHP、C、C++、Perl、Python、Ruby、Oracle、MySQL、PostgreSQL関連の業務経験がある、典型的な広く浅い役に立たない系のウェブ(時々クライアント)アプリのエンジニア。 週に1日休みがあれば、ほか6日間は終電帰りでも全然へーきな体力と、バグが出ても笑って誤魔化す責任感の無さを武器に、今日も修羅場った開発現場の風景を横目で見ながら、適当に仕事をこなす日々を送る。
著書「それほど間違ってないプログラマ用語辞典」(発行:毎日コミュニケーションズ)

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