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偶然? 必然?――過去のつながりに導かれてキャリアを築いた、セキュリティ業界の異端児

転職者プロフィール

LINE
セキュリティ室 アプリケーションセキュリティチーム
愛甲健二さん
(2015年10月入社/34歳)
【転職前】
ネットエージェント、FFRIにて主にセキュリティ製品の開発に従事。社外ではセキュリティ・キャンプ講師、カンファレンスでの講演、CTFなどのコミュニティー活動に積極的に関わる。

【転職後】
脆弱(ぜいじゃく)性診断、不正検知システムの開発/運用。社外活動も精力的に継続中。

自分を必要としてくれる場所で自分の能力を生かせる――エンジニアにとって最も幸せな働き方を体現しているのが、LINEのセキュリティ室で働く愛甲健二さんかもしれない。

IT業界、特にスタートアップ企業では、「自分はこれがやりたい」という強い意志を持って前進するエンジニアが多い。それを決して否定するわけではないが、愛甲さんはそんな姿勢とは正反対の自然体で、動きの激しいセキュリティ分野でキャリアを積み重ねてきた。「学生さんや他のエンジニアには、あまり参考にならないかもしれませんよ」とはにかみながら、今に至る道のりを語ってくれた。

ホームページで学び、ホームページで発信し始めた学生時代

ゲーム開発からプログラミングの世界に足を踏み入れるエンジニアは多い。愛甲さんも例に漏れず、中学生のころからプログラミングに興味を持ち、独学でゲームを作ってはコンテストに応募するなどしていた。コンピュータに興味があったため、大学でも情報系の学部に進学したが、趣味でやっていたときとは違い、面白さを感じられず、1年でもともと好きで得意だった理学部数学科へ転部した。

当時はインターネットが普及し始め、さまざまな趣味や関心を共にするユーザー同士が情報を交換する「ホームページ」が生まれ始めていた。

「もともとソフトウェアの内部動作というか、『これはどう動いているんだろう』という疑問を持つことが多かったのです。それで最初はセキュリティ分野というか、リバースエンジニアリングの技術に興味を持ち始めました」

InstagramやTwitterはおろか、mixiすら存在しなかったこの時代は、Web 1.0的なホームページや掲示板への書き込みが、興味関心を同じくする人同士が交流する主な方法だった。そのころ、愛甲さんがしばしばアクセスしては刺激を受けたサイトは、セキュリティに関する技術的な情報を集めた「Shadow Penguin Security」や、バッファオーバーフローのような典型的な脆弱性の仕組みを利用して問題を解き、レベルを競う「Hacker's Lab」だった。

「そのころは今と違って、セキュリティ技術を勉強しようにも解説サイトもCTFも何もありませんでした。そもそも、同じようにセキュリティに興味を持つ人を探すこと自体が難題で、ずっとほぼ1人で勉強していました」

情報を得るだけでは飽き足らなくなった愛甲さんは、自分で試して得た知見をホームページで紹介するようになった。「そうしたら、いろんな人から質問や問い合わせを受けるようになりました。その中に『本を書いてみませんか』という話があり、結局、大学時代にセキュリティ関連の本を3冊執筆しました」と、さらっと振り返る。

型破りの就職活動、好きなことをそのまま仕事に

「僕は理学部数学科卒で、今の若い人のようにきちんと情報処理を学んだわけではないんです」という愛甲さん。就職活動は、あまり普通の方法ではなかった。卒業まであと1カ月ほどに迫った時期になってようやく、「就職しないとまずいかな」と思い立ち、IT系企業3社に履歴書を送付したのだという。

そのうちの1社が「ネットエージェント」だった。驚くことに、1日後には「ぜひ話を聞きたい、すぐに面接に来てください」という返信が届き、スーツを着て出かけた。面接で話はトントン拍子に進み、その場で社長から「じゃ、明日から来てもいいよ」と言われて入社が決定した。

独学でプログラミングやセキュリティを学んできた愛甲さんは、ネットエージェントで初めて、業務としてセキュリティに取り組むことになった。

「大学時代からやっていた好きなことがそのまま仕事になったので、苦になりませんでした。むしろ社長をはじめ周りの社員とも話が合って勉強になったので、本当に楽しかったです」

愛甲さんはネットエージェントで、「PacketBlackHole」「OnePointWall」といったネットワークセキュリティ製品の開発に携わることになった。

「僕が入社したころのネットエージェントは全体で30人ぐらいという規模で、製品のコードを書く人も社長含めて2、3人とかで。僕と同時期に入ったもう一人が、ほとんど部下のいない開発部長の下に加わって『開発部』として動き始めました」

折しも、大規模な個人情報漏えい事件が相次いで発生し、セキュリティ対策への関心が高まりつつあり、会社も少しずつ大きくなっていった。ふと気付くと入社して5年ほどが経過し、開発チームも20人規模へと成長していた。

「最初に入ったころは、自分がいないと回らないという状況でした。大変ですけれど、でも新卒で入った人間が『君がいないと大変なんだ』と言われると、うれしくて頑張るじゃないですか。けれど5年もたって組織も整ってくると、僕がいなくても回るんですよ」

組織の在り方としては、誰かがいなくても回る体制を整えるのが正しいと重々分かっていても、寂しさは否めなかった。

ネットエージェントでの5年の経験を経て一通り業務としてのセキュリティを学んだという思いもあった。

「当時27、28歳だったんですが、一般にこの時期って会社を辞めたくなる時期らしいですね。で、僕も確かに辞めたくなった。そして、次の会社も決めず、『辞めたくなったので辞めます』と言ってネットエージェントを辞めました」

そして数カ月の間、無職生活を送ることを選択した。

LINE・愛甲健二さん

コミュニティー活動が縁で次の「厳しい」職場に

愛甲さんはネットエージェント在職時代、セキュリティ製品の開発業務の傍ら、カンファレンスでの講演やCTFといったコミュニティー活動にも携わってきた。その1つとして、「セキュリティ・キャンプ」の講師も行ってきた。自身は年齢制限との兼ね合いでついに参加できずに終わったセキュリティ・キャンプだが、バイナリ分野の講師を引き受けていた。

次の職場はその縁から決まった。

「同じくセキュリティ・キャンプの講師をしていた村上さんから『辞めたんだったら、うちでバイトしませんか?』って言われて、『……い、いいけど』となりまして」

それが、国産セキュリティソフト「yarai」などを開発している「FFRI」だった。学生時代によく見ていたShadow Penguin Securityの運営者が社長を務めていたことにも縁を感じた。最初はアルバイトで入って、仕事が面白かったのでそのまま入社したそうだ。

FFRIは、会社としてIPOを目指していた時期だった。

「FFRIはプロフェッショナル性が求められる、すごく厳しい会社でした。僕はyaraiのGDPという機能やマルウェアの検知エンジンの開発に携わっていましたが、社員がプロダクトをとても厳しい目で見ており、『この機能、全然良くない』『その品質じゃ出せない』と指摘されます。30を過ぎてガチで怒られることも度々ありました。けれど逆に、ああ、こういう会社が上場するんだなって納得しましたね」

その頃、いよいよサイバーセキュリティ問題は深刻化し、標的型攻撃の被害が国内でも報じられるようになった。愛甲さんはその最前線でプロダクト開発に携わっていたことになる。しかし、だんだん心に引っ掛かりを感じるようにもなっていた。

「セキュリティの世界はいたちごっこと言われますが、本当にその通りです。新しいマルウェアが出てきて、すぐに対策コードを書いて、リリースするとまた次が出てきて……というサイクルがとても早いペースで繰り返される業界です。ふと、僕はこれをあと30年繰り返すのか、と考えました」

もう1つ気になっていたことがあった。セキュリティ以外の分野を知らないことだ。

「そもそも情報系の学部を出ておらず、セキュリティ以外のコンピュータの世界を知らないことに少し危機感を覚えました」

過去の学び、過去の縁が不思議とつながり今の自分に

もやっとした思いを抱いていた愛甲氏の元にある日、ヘッドハンターからメールが届いた。

転職の誘いはこれまでもあったが、定型のお断り文や「私、実は朝起きられなくて」といったつれない返事をすれば諦めてもらえていた。しかしそのハンターだけは何度も食い下がったので、根負けした愛甲さんは話を聞くことにした。それがLINEからの求人だった。

面接の場にはLINEのセキュリティ部門の担当者も同席していた。一通り真面目な話が終わったところで、担当者が「実は私、Hacker's Labっていうサイトを運営していたんです。ご存じないと思いますが……」と言い出した。

大学生だった愛甲さんが挑戦し、最大レベルの攻略が見えてきたところで閉鎖されてしまった「因縁」のサイトだった。思わず愛甲さんも「あのサイト、レベル1はこういう問題でしたよね」「それですそれです、私、その管理をやっていて」……と思い出話が弾み、最後に「うちに入ってくれませんか」と言われてしまった。こうなると、むげに断れなかったという。

とはいえ、プロフェッショナルとしての仕事のやり方を学べるFFRIで働くことが本当に楽しかった愛甲さんは、悩みに悩みぬいたという。

「2カ月は悩みました。恐らく今までの人生で一番考えたんじゃないでしょうか」

けれども最終的には、転職を決意した。理由は、FFRIが一つの区切りとして上場を果たしていたこと、そして、自分がいなくても業務が回ると思えたこと、またその仕組みが整えられていたことだった。

今はLINEのセキュリティ室で、アカウントの盗用や、盗んだアカウントを用いた詐欺、スパムといったさまざまなAbuse(不正利用)を検知し、防止するためのシステム開発に取り組んでいる。LINEが主要ターゲットにする4カ国だけでも1億6000万を超えるユーザーが利用しているだけに、解析対象となるログの量は膨大だ。昨今注目を集める機械学習(ML)などの技術も取り入れながら、解析に取り組んでいる。

ここであらためて、昔取ったきねづかではないが、学生のころ学んだ数学の知識が生きているそうだ。

「全然真面目に授業に出ていなかったし、それまでは役に立たなかったんですけれど、LINEに入って初めて、学校で学んだことって人生で役立つこともあるのかなって思いました」

さまざまなサービスを開発しているだけに、セキュリティだけでなくさまざまな部署、さまざまなバックグラウンドを持つエンジニアと話をする機会も増えた。

「外から眺めることで、セキュリティという業界がどんなイメージを持たれていたのか、どういうふうに見られていたのかがとてもよく分かりました。それが一番の収穫かもしれません」

こう振り返ってみると、偶然か必然か、区切り区切りで過去の縁がつながり、必要とされている場所に呼び寄せられてスキルを発揮してきた愛甲さん。これからのことは正直「分かりません。セキュリティ専業に戻りたい気持ちも半分くらいはありますが、戻らなくても大丈夫だと思いますし」と笑う。これからも自然体で「自分が必要とされているところに行くかもしれません」とのことだ。

採用を担当した、セキュリティ室 室長 執行役員 林萬基(Leem mangi)さんに聞く、愛甲さんの評価ポイント

LINEはコミュニケーションアプリの会社として有名ですが、その他にも毎年さまざまなサービスをリリースしています。そしてセキュリティ室は、それら全てのサービスのセキュリティ診断(われわれはRisk Assessmentと呼んでいるのですが)を行わなければなりません。
当時、そのようなセキュリティの診断業務を行える人材がまだ少なかったため、優秀なセキュリティ技術者である愛甲さんに声をかけたというのが最初の理由です。
LINEのセキュリティ室は、技術力ももちろんですが、普段も(例えば趣味として)コンピュータサイエンスの勉強をしているような、心から「コンピュータが好き」な人を採用することにしています。セキュリティ技術と一言でいってもその範囲はとても広いため、常に学び続けなければ置いていかれてしまうからです。仕事とは直接関係なくとも、自分で知識や活躍の場所を広げられる人、そういうモチベーションを持っている人と積極的に仕事をしたいと考えています。
そういう意味でも、愛甲さんは学生時代からセキュリティの技術を積極的に学び、発信していましたし、知的好奇心で得た技術をそのまま仕事に生かすタイプの方だったため、弊社と合っていると感じました。

※企画・制作:@IT自分戦略研究所編集部
※JOB@ITの記事(2018年7月)に再編集を加えて掲載しています。

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