「手を動かして良いモノを作る」に専念したい――転職を機に初志を実現したエンジニア
転職者プロフィール
ヴォーカーズ
Web開発エンジニア
平野令奈さん
(2015年3月入社/30歳)
【転職前】
独立系中堅SIerにて、業務系システム開発に従事。基本設計~開発、保守までの一連の工程に携わる
↓
【転職後】
保守、派生開発および、進捗(しんちょく)管理、メンバー管理を担当。ユーザー目線を大切にしながら開発にいそしみ、ムードメーカーでもある
自分の手を動かしてより良いモノを作ることに専念したい――転職を機に、社会人になるときから抱いてきたそんな「初志」を実現したのが「ヴォーカーズ(Vorkers)」のWeb開発エンジニア、平野令奈さんだ。2015年3月、まだごく小さな規模だったヴォーカーズに加わり、さまざまな保守、派生プロジェクトの開発やリリース管理に携わっている平野さんに、これまでの歩みを尋ねた。
「情弱」だった大学時代から抱いていた「モノ作り」への思い
「完全に文系で、どちらかというと『情弱』でした」――平野さんは自分の学生時代をこのように振り返る。小樽商科大学商学部でマーケティングを学ぶ中でWebやIT戦略といった単語に触れることはあったが、プログラミングの経験は一切なかったそうだ。「ただ、分からないからこそ『どういう仕組みで動いているのか』という意味でITに興味がありました」と言う。
平野さんが就職活動を行った時期は、折悪しくリーマンショック直後の氷河期。それでも、「モノ作りに携わりたいと思っていたので、広告系とIT系に絞って就活を進めました」と言う。最終的に中堅どころのSIerに就職が決まり、2010年、住み慣れた北海道を離れて上京。初めて、本格的にシステム開発に携わることになった。
今にして思うと、「文系、未経験者でも新人研修を通して学習できたので、初心者の自分にとってありがたい環境でした。『やさしいJava』という当時の私にとってはやさしくない本を教科書にしてJavaをイチから勉強しました。1年目は社員寮に住んでいたので、理系出身の同期に教えてもらいながら付いていきました」と平野さんは振り返る。学生時代のゼミで、論理的思考を組み立てる訓練をしていたことも一役買ったのではないだろうか。
研修が終わると、クレジットカード系のプロジェクトに配属され、まずは小さな派生プロジェクトでの設計から開発、テストまで、一通り体験することになった。こてこてのウオーターフォール型の開発プロジェクトで、「設計書が必ずしも正しいわけではなかったので、いろいろな人の頭の中にあるいろいろな事柄を聞き出しながら、付いていきました」と話す平野さん。その後も、さまざまなプロジェクトでスキルと経験を積み重ねていった。
結婚を機に考えた「私がやりたいことは何だっけ?」
幾つかの開発プロジェクトに携わり、「自分が作ったモノを使ってくれた方から『あれが役に立ったよ』と言わると、やはりうれしかったです」と、良いモノを作ることにやりがいを感じていた平野さん。それだけに、歯がゆいと感じることもあった。
一つは、モノ作りの内側に立てなかったことだ。受託開発だったため、どれだけ自分が良いと思った機能、良いと思ったシステムを作りたくても、決定権を持っているのは顧客側だ。
「いかに聞き出し、いかに伝え、自分たちが良いと思う方向に導くかに腐心しました」
もう一つは社内の評価軸だ。「前職では『評価』イコール『幾ら稼げるか』でした。良いモノを作ることよりも、いかにお客さまと顔をつないだり、営業に付いていって案件を獲得したりしたかといった部分で評価されたのです。ミーティングで名前と金額を並べて評価されたりするのを見て、少し違うのではないかと思っていました」と振り返る。
そんなもやもやを心にためつつ、5年ほど働いてきた平野さん。結婚が決まったことをきっかけに、「私がやりたいことは何か、それがこの会社にあるのかをあらためて考えました」と言う。さまざまな業務を一通り経験し、この会社でやれることはやり切ったという思いもあったことから転職を決意。転職エージェントに登録し、新たな職場を探し始めたそうだ。
ただ、退職のタイミングには配慮した。「プロジェクトの切れ目が見えてきたところで転職活動を始めました。同僚やお客さま、それまでお世話になった方々に迷惑を掛けたくなかったので」と振り返る。けれど、もし自分が誰かに相談されたら、「気にしてしまうのは無理もないけれど、自分がいなければいないで何とかなるもの。自分の人生と目の前のプロジェクト、どっちが大事なのかと後押ししたいですね」とほほ笑む。
「自分の手を動かし、良いモノを早く作る」に専念できる環境に
今となっては笑い話だが、「Webサービス系の会社の存在を、転職活動をして初めて知りました。漠然とB2Bではなくコンシューマーを対象にしていて、内側にいられる、自社でサービスやパッケージを持っている企業で働きたいという希望を伝えたところ、『Web系がいいんじゃないですか』と言われ、そこで初めて認識しました」と話す。
「Vorkers」というサービスは知っていた。「特に見ようと狙ったわけではないけれど、会社の口コミなどを検索するとたどり着く先がVorkersでした。ニッチだけれど良いモノを作っているな、他の口コミサイトと比べても中身がちゃんとしているな」と感じていたこともあり、当時、エンジニアがまだ数人しかいなかったヴォーカーズに転職することにしたという。
広い意味では同じ「IT系」にくくられても、Javaを用いた基幹系のプロジェクトとWebサービスとではやはり違う。
「前職のプロジェクトで少しだけPHPに触れていた経験はありましたが、ヴォーカーズ入社後に一通り仕組みの説明を受けたとき、『このままではまずいぞ』と感じ、本当に真剣に勉強しました」
本を買って独学で学習し、周りにも尋ねながら新しいやり方に慣れていったそうだ。
新たな世界に飛び出してみて、「目からウロコ」の新鮮な体験もあった。
「ここでは、日々開発し、週に4日、しかも1日に3~4回はリリースします。前職ではリリースって『一大事』で、手順書を作り、その内容をレビューして、作業中もクロスチェックして……という具合だったのが、ヴォーカーズでは、もっと軽やかにリリースしています。カルチャーの違いが新鮮でした」
「リファクタリングしてもいい文化」も新鮮だった。
「前は、お客さまからお金を頂く以上、それがいかに意味あることかを説明しない限りリファクタリングはできませんでしたし、実際ほとんどありませんでした。けれどヴォーカーズでは、ソースレビュー時に『こういう書き方をすればもっと高速になる、ソースが短くなって保守性が高まるので、ここはリファクタリングしましょう』といったコメントが返ってきます。ゴミがたまらず、見つかった問題を日々きれいにしていけている実感があります」
何より、モノ作りに専念できることにやりがいを感じているという。
「エビデンスのための資料を作る、関係者を調整するといったことに費やす時間がなくなりました。日々、いかに良いモノを作っていかに早くアウトプットするかに集中できる環境なので、とても楽しく働けます。『良いモノを作ろう』という意識を持った人ばかりなので、社内政治のようなものに時間を取られることがありません」
成長を楽しみつつ、働き方の選択肢をもっと増やしたい
現在、4~5人ほどのエンジニアをまとめる立場でリリース調整などのタスクに携わる平野さん。
仕事は充実しているが、仕事“だけ”の人生というわけではなく、「月間フレックス」や「フリーバカンス」といった制度を活用してプライベートの時間もフルに楽しんでいる。
平野さんにとって次のチャレンジは、新しい働き方の模索だ。まだ30代になったばかりの平野さんにとって、育児や親の介護といったライフイベントは、この先十分に起こり得ることだ。
「せっかく、開発リーダーに近い場所で仕組みを作れる立場にあるので、時間ではなく成果で評価される仕組み、時短やリモートでの働き方を作れるといいのではないかと考えています。自分のためだけではなく、この先新しい働き方を希望する人材が活躍できる仕組みや環境を整えていきたいです」
自分も会社も成長のまさに真っ最中にあり、その変化を内側で味わう醍醐味(だいごみ)を感じているという平野さん。だからこそ、この先も自身や仲間が長く活躍できるための「前例」作りに取り組みたいという。
採用を担当した、CIO兼エンジニアチーム責任者 小澤博之さんに聞く、平野さんの評価ポイント
ヴォーカーズ(Vorkers)は転職・就職のための情報プラットフォームを提供しています。エンジニアメンバーは現在約20人規模ですが、平野さん入社当時、自社サービスの開発運用は外部ベンダーに依存しており、社内のエンジニアはまだ数名というタイミングでした。
会社全体として、あらゆる施策のスピードアップが要求されていた中、エンジニアチームのコアメンバーとして、チームのワークフロー整備、ナレッジの蓄積などあらゆる課題に柔軟に対応してもらう必要性がありました。
平野さんの前職SIerでの経験、かつきめ細かなコミュニケーションスキルはチーム内のみならず社内全体のコミュニケーションハブとしてヴォーカーズ入社当時から素晴らしいパフォーマンスを発揮してもらっています。
四半期ごとに編成されるプロジェクトごとにスピード感を持って取り組む施策の他、現在もEngineering Productivityという活動の中では、日々のリリース関連タスクの改善対応、CI、QAに関するさまざまな課題に取り組んでもらっており、今後もチーム内にとどまることなく会社全体に良い影響を与えてくれることを期待しています。
※企画・制作:@IT自分戦略研究所編集部
※JOB@ITの記事(2018年9月)に再編集を加えて掲載しています。
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