@IT×マイナビ転職 キャリアアップ転職体験談 新春Special 2018:SIerに未来はない?

伝説の菌類、また現る

シュウヘイボク、シュウヘイ。すご腕のエンジニアだ。この類いまれなる才能を生かすべく、有名でカッコいい会社に転職して、ババーンとオリジナル製品をリリースして、ガーンとお金持ちになって、ヒャッハーな日々を……いや、そこまでいかなくてもいいから、ともかく今いるSIerを脱出したいんだ。

……だけど、転職活動は失敗ばかり。今日も面接で「キミにはSIerがお似合いだよ」なんて言われてしまって……。

そうだ、こんなときは「転職バー」に限る。バーテンダーのハルカさんに相談にのってもらって、あわよくばカウンター越しにキッス、なぁんて、なぁんて、なぁんて!!!

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シュウヘイ ハ、ハ、ハルカさぁ〜ん!

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ハルカさん あら、シュウヘイくん。どうしたの?

シュウヘイ どうしたも、こうしたもありませんよ。ボクはSIerから脱出したくて転職活動をしているのに、転職サイトやエージェントから紹介されるのは、SIerばかり。採用ページから直接、ユーザー企業や自社開発製品が有名な企業に応募しても、ほとんど書類選考落ち。やっと面接までいっても、「SIerを辞めない方がいい」とか「もう少しガンバレ」と説教される始末。ボクはもう、1日も早くSIerを辞めたいのに、どうしてうまくいかないんだろう!!!

謎の声 今の言葉、聞き捨てならんな。

シュウヘイ ん? カウンターの奥に誰かいる。もしや、クロウシタローさん???

ハルカさん シタローさんじゃないわ。彼は、プログラマーで、エンジニアの採用や生産性向上にも携わっていて、@ITの人気連載「また昭和な転職で失敗してるの? きのこる先生の『かろやかな転職』」や、話題になった記事「文系エンジニアはなぜ誕生したのか」の筆者でもある、自称菌類の……。

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ハルカさん きのこる先生よ!

きのこる先生 去年のリナさん同様の丁寧な解説をありがとう、ハルカさん。いやー、「転職バー」にアルバイトで入って1週間。シェイカーを振るのは案外難しいものだね。

ところで、そこの青年。シュウヘイとやら。さっきから話を聞いていると、「SIerはもう嫌だ」とか「1日も早く脱出したい」とか散々な言いようだが、なぜそんなにSIerを毛嫌いするんだい?

シュウヘイ だって、みんな「SIerは3K(「きつい」「帰れない」「給料が安い」)」だとか「SIerに未来なんかない」って言ってるでしょ。だから自社サービスを運営している会社に転職したいんです!

キミの「価値」はどこにある?

きのこる先生 いいかい。まずキミに知ってもらいたいのは、ソフトウェア開発のスキルは、人生をリカバリーできるぐらいスゴいものだということだ。そして、そのスゴさを獲得するのに適している手段の1つが、SIerで働くことかもしれないんだよ。例えば、e-Janネットワークスの野上さんのようにね。

きのこる先生 野上さんは東京のSIerに就職し、ややブラックな環境ながらも3年間の“修業”を行った。その後、起業、地元へのUターン、バンド結成などを経て、再度SIerに就職する。そこで出会ったあるプロダクトにほれ込み、プロダクトのベンダーの社長に直談判して転職。そのスキルを見事に花開かせた。プロダクトのエキスパートになることで自分の強みを見つけ、自分に価値、そして値段を付けることに成功した。

わたしは野上さんの成功ポイントを「強みの商品化」であると考えている。

この「強み」は、ビッグデータやAI、IoTなどの“はやりの技術”じゃなくてもいいんだ。これは多くの転職予備軍にとって福音になるはずだ。まずは自分の周りに、強みや価値につながるものはないか、目を向けてみよう。実はそういう強みを作れる環境に、まさに今いるかもしれないじゃないか。

シュウヘイ でも、今の会社は忙し過ぎて、考えることも難しくて……。取りあえずどこか、いいところに転職してから……。

それを聞いたきのこる先生の表情が、ビールベースのカクテル「ドッグズ・ノーズ」のように苦り切った。

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きのこる先生 喝!!!! 「取りあえずビール転職」はうまくいかないって、ハルカさんも言ってただろう。

「教育」してもらえたことが、宝になる

きのこる先生 SIerは労働条件ではブラックになりがちだけれど、「教育してくれる」というメリットがある。だから、文句ばっかり言ってないで、そこを利用するのもアリなんじゃないかなあ。

きのこる先生 沼澤さんの事例を見てみようか。

彼女は新卒で大手外資系SIerに入社し、金融システムをベースとしたプロジェクトに携わった。文系出身で「PCなんて全くダメ」だったのに、入社2年目には要件定義のために顧客と対等に語り合えるようになったなんてスゴイと思わないかい。

これこそ、SIerの良さだよ。時にはむちゃくちゃなことをやらせるかもしれないけれど、きっちり教育してくれるので、しっかりスキルが付く。そのスキルはつぶしが利くから、“経験を積ませてもらえる”んだ。

沼澤さんはその仕事を通じて、「お客さまの課題を解決する」そして「自社が持つ課題を解決する」ことに面白さを感じた。そして、自分の強みと興味を同時に実現できる場所に転職したわけだよ。自分の強みも分からず、やみくもに転職しようとしている誰かさんとは大違いだね。

次の丸井さんも、SIerで得たスキルを次のキャリアにつなげていった人だ。

きのこる先生 丸井さんは「実務経験なしでも、半年の研修でエンジニアに育てる」という募集に応募して、大手SIerに入社した。そこでプログラミングを学び、経験を積み、それを基に、ベンチャー企業で「企業と共に成長する」道を選んだんだ。

SIerにいれば、彼らのように技術を学び、経験を積むことができる。これは大きなプラスだとは思わないかね?

シュウヘイ えーっと。ボク、技術はもうそれなりに付いてますし、とにかく今の会社はトラブルが多いし、イヤなところがいっぱいあるから、もうちょっと洗練されていて、給料も良くて、人員も過不足なくて、炎上していないとこに転職したいんですけど。

きのこる先生 なぬぅぅうううう!

キミはイヤなことから逃げることばかり考えているけれど、そこを“良くしていく”努力はしたのか! 今みんなで乗っているその船の、火を消そうとしたのか!!!

シュウヘイ ひいぃぃぃぃぃ。

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逃げるのか、戦うのか

きのこる先生は顔を「ブラディメアリー」のように真っ赤にして、「キミに齋籐さんの爪の垢を煎じて飲ませたいものだな!」と怒りをあらわにした。

きのこる先生 齋籐さんは、後進のエンジニアを育てる「エンジニアの母=MoE(Mother of Engineer)」と呼ばれている人だ(注:男性です)。

その出自は、とある大手SIerだ。技術スキルもコミュニケーションスキルもあったので、「火消し職人」として活躍した。炎上プロジェクトという火中に入り込んで、栗をひろい続けたんだ。それが周囲の信頼を生み、齋籐さん自身もチームで何かをやり遂げることへの喜びを知り、「火中の栗はウマいんですよ!」と笑えるほどになった。

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きのこる先生 「きれいじゃないところをきれいにする、きちんとやり切る」ことは力と自信を生む。採用人事は必ず「この人は、やるべきことをやり切ったのか」をチェックする。シュウヘイは、今の仕事、役割をやり切ったということをアピールできるのか?

シュウヘイ ううぅぅ……

きのこる先生 シュウヘイの「グチャッとしているところから逃げたい」という気持ちは痛いほど分かるよ。でも、逃げた先がグチャッとしていないという保証なんかどこにもないんだ。

キミは「何を」したいんだい?

ひとしきり菌をバラまいたきのこる先生は、一転「ミモザ」のように優しい表情でシュウヘイに問い掛けた。

きのこる先生 今、エンジニアがすごく転職しやすいって知ってるかい? 「Web系企業に限ると、エンジニアの有効求人倍率は9倍」という説もある。だからシュウヘイも、「内定を取るだけ」だったら簡単だよ。でもね。そんなタイミングだからこそ、エンジニアは「自分は何をしたいのか」をきっちり定義することが必要なんだ。

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シュウヘイ 定義、ですか。でも、何をすべきか、何をやりたいかが分からないときは、どうしたらいいのでしょうか。

きのこる先生 そんなときには、きのこる先生特製「ひとりブレスト」「ひとりSWOT分析」「オレオレマインドマップ」がお勧めだ。

きのこる印の「ひとりSWOT分析」

きのこる印の「ひとりSWOT分析」

きのこる先生 わたしは、エンジニアほど幸せな職業はないと思う。

「転職」はあくまでも、エンジニアとしてやりたい理想を描き、実現するための「手段」の1つだ。だからシュウヘイも、「SIerから脱出したい」「炎上プロジェクトから逃げたい」だけではなく、エンジニアとして何がしたいのか、そのためにはどんなスキルや経験を積むべきなのか、そのためにはどんな仕事を経験すべきなのか、そこまで考えて仕事探しをしたらいいんじゃないかな。

シュウヘイ ボクは、ハルカさんとお付き合いできるようなエンジニアになりたいなあ。そのためにも有名でカッコいい会社に転職して……。

きのこる先生 (タメイキ)……まあいい。今日は考えるのは置いといて、ハルカさんが作ってくれたカクテルを飲もうではないか。カモン、ハルカ!

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ハルカさん きのこる先生お疲れさま。シュウヘイくんには、ハルカの特製カクテルを作ってあげるわね。名前は「ハートブレイク」、意味は……分かるわね?

さあ、召・し・上・が・れ。

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きのこる先生&ハルカさん カンパーイ!!!

シュウヘイ きゃ、きゃんぱぁい……。

カクテルを作るきのこる先生

きのこる先生のワンポイントレッスン

シュウヘイはSIerを毛嫌いしているけれど、教育してくれる、経験を積めるなど、SIerにも良い部分はたくさんある。

成長の過程に応じた場所で働くのも大切だが、もっと大切なのは、自分が何をやりたいのか、どんなエンジニアになりたいのかを明確にすること、オリジナルの「価値」を持つこと、それを説得力を持って人に説明できるストーリーにすること。そして、ツラいことがあっても逃げずに戦う勇気と、「ここまでやり遂げた」という実績に基づく自信だ。

好景気の今だからこそ、自分をしっかり持って、ぶれない軸を作るんだよ。


※制作:@IT自分戦略研究所 編集部
※撮影協力:NIGHTFLY
※写真:中尾太貴
※@IT Special の記事(2017年12月)に再編集を加えて掲載しています。
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