ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ十四チームワーク良好! 会社好業績! でも辞めてやる!?

チームワークが良好な環境で、ガシガシ仕事に明け暮れていたH山さん。
おかげで会社は好業績。万々歳だと思いきや……。
なにがいつマイナスに働くかわかんないわねぇ……と、今回はそんなお話です。

歯車の噛み合う感触がタマランのです

小規模な会社にて6人体制のチームを組んでいたH山さん。
担当営業が顧客との橋渡しを行い、開発リーダが取りまとめとDB設計を行い、
H山さんがプログラム設計とメインプログラマを担当する。
そしてあとの3名は、固まった仕様を忠実にコードへと落とし込む……としておりました。
このチームがとてもうまく機能していたのです。

もうツーといえばカーってくらいに、
それぞれが自分の役割を心得てた。当然、それが仕事の面白さにも直結するわけです。
もう、やればやるほど自分のスキルが伸びていくのを実感するし、
集中して時が経つのも忘れちゃうしで、残業なんかも苦になりません。……残業代でなかったけど。
もちろん結果も上々で、開発結果は常に高評価を受け、
それが故に営業はどんどん仕事を受注できるようになっていきます。
深刻な不況まっただなかにあって、その勢いは他社さんからもうらやましがられるほどでした。

当然会社としては、この勢いを殺す手はありません。
続々と来る仕事を「よっしゃよっしゃ」と引きうけて、
人が足りない分は急遽募集をかけて増員を図ります。
見る間に社員数は以前の倍へとふくらみました。
うーん、まさにサクセスストーリー。

……さて、その最中にあって、あのチームは果たしてどうなったのでありましょうか。

解体、のち再結成へ

チームはあっけなく解体されてしまいました。
彼ら6名は、それぞれが独立したチームのリーダとされてしまったのです。
ガラがでかくなった分は、管理する人も多く必要になる。その結果の施策でした。
H山さんの感じていた「仕事の面白さ」は急速に失せていきました。

開発の実務に携わることもなくなり、今や新人の面倒を見るのが主な仕事です。
しかも急場しのぎで入った人たちだけに、あまり質もよろしくない。


「むう……」

そんな中、さらに会社は対外的な見栄えを気にするようになり、
「ISO準拠でうんぬん」とか「CMM標準化レベルをうんぬん」といった、
形式ばった仕事ばかりが降りかかってくるようになりました。

規則も増えて、社内の居心地も悪くなりました。
なにを決裁するにも、やたら手間がかかるようになりました。
そこにはもう、面白みを感じて時を忘れた、かつての職場風景はみじんともありませんでした。

ここに至って、いよいよH山さんは転職を意識しはじめるようになります。
ちょうど知り合いが起業していたので、その会社にまずはアルバイトとして入ることに。
もちろん、よい環境であれば、そのまま正社員になる予定です。

すると、「ここはいい環境だな」とH山さんが確信するやいなや、
まぁ他のメンバも移ってくること移ってくること。

今はかつての6人全員がそこの社員となり、再びひとつのチームとして、
前と同様に開発の面白さを実感しながら毎日を過ごしているそうです。

オチの一コマ
本日の一句

そうそう、会社ってガラがでかくなってくると、「ダメな人」にあわせた規則が増えてっちゃって、やたら窮屈になったりするんですよね。がんばった人が報われなくなってくのってオカシイダロ! と思うのですが、年齢に見合うだけの給与を保証しようとした時、多くの会社が避け得なくなる構造的な問題なんだろうとも思います。
そして今はH山さん自身がその壁にぶつかりつつあると。
お金は大事だけど、楽しく働ける環境も大事。うまい落としどころが見つかることを、願ってやみません。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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