巻ノ十五完璧なはずの報告書。 なのに毎回「根拠が不明」と言われるのはナゼなのよ
派遣先でテスト部隊のチームリーダをやっていたT川さん。より精度の高い成果をあげんとがんばる毎日ですが、なぜか上からはよくわからないクレームや無茶な作業指示ばかり……。
果たしてその真相やいかにという、これまたご無体なお話です。
根拠が不明が不明なワケ
「う~ん、なんでだろ?」
派遣先でチームリーダとして働くT川さん。様々な分析手法を取り入れて、より精度の高い成果物をと心がける毎日です。当然報告書の重要性も認識しており、彼の担当となる社員の方には、いつもきめ細やかな作業進捗の報告書をあげてあるはずでした。
ところがその社員さんの上司にあたる上級マネージャさんからは、いつも「作業内容が曖昧」「進捗が不明」なんてクレームがおりてくるのです。しかもそれだけじゃなくて、「こんな曖昧な理由でリソース不足だとは認められん、もっと作業を増やせ」と割り込みの仕事までくっついてくる始末。
これが、T川さんには不思議でした。
無茶な作業を割り振ってくる上級マネージャに腹もたちますが、それ以前にクレームの内容が気になります。これ以上ないほど明確に、しかも数値の根拠も添えたうえで報告を行っているはずなのに、どうしてそんなクレームが湧いてくるんだろうか。
ある日、その理由が判明します。
T川さんが報告をしていた担当社員さん。なんと彼が報告内容を改ざんして上に流していたのです。
「だって、ヘタに進んでると余計な作業がおりてきちゃうから、適当に遅らせたりと手を加えてるんだよ」
それが担当社員さんの言い分なのでありました。
引継依頼はどこ吹く風で……
しかしスジの通らない話です。だって「余計な作業がおりてきちゃうから」と改ざんされた結果、「根拠が不明」と余計な作業がおりてきているのです。なんだそれと思うじゃないですか。
そんなわけで、さらにつっこんでみることに。するとまぁ出てくること出てくること。結局その担当社員さんは、報告に添えた統計資料の見方がわからなかったのです。そうした資料をどう使うべきかもわからなかったのです。
それをそのまま持って行けば、会議でつっこまれても答えられない。困ることになる。だから数字だけ書き換えて、統計資料は無視してしまおう。それが、その担当社員さんの下した結論でした。
なるほど、上級マネージャにしてみれば、いつも根拠のない数字ばかり見せられていたわけですから、毎回のクレームも無理はありません。なるほどなるほどですよ。まったく腑に落ちたでありますよ。
そんなわけでT川さんは、転職を決意することになったのでした。
ほどなく決まった転職先には、普通だとマイナスと見なされるような、現職での不満をすべて伝えました。そして理想とする現場マネジメントについても熱く語ってみせました。その上で決まった内定なので、おそらくは大きくギャップを感じることはないだろう。T川さんはそう思います。
今はいよいよ退職日まで一週間を切りました。でも未だに引継指示はなく、新規の割り込み作業がふってくる始末。ただただ唖然としながら、新天地に渡る日を夢見るT川さんなのでした。
まったくもって、バカバカしい手段で自己保身にはしる輩ほど、こちらを脱力させてくれるものはありません。勝手に一人でやってろよですよ。オレはとっとと他所へ行くよ、つきあいきれんなのですよ。
そしてやっぱり他所へ行くことになったT川さん。
きっと新しい職場では、理想とするマネジメントを存分に試みて、良い経験を積まれていくことでしょう。
■著者プロフィール
きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/
■著書紹介
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