ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ二十一スピンアウトをした先で、またまたスピンアウトってちょっと待て

実力のある先輩や同僚たちに囲まれて、かなり勉強になる毎日を送っていたU村さん。しかしある時、実力派社員たちと上層部たちとのいさかい事が社を割る事態にまで発展し……。
行き着いた安定の形とはいったいどんなものなのか? すがすがしいような苦笑いが浮かんじゃうような、そんななんとも楽しい転職体験談です。

レッツスピンアウトだ!

UNIX系のポーティング作業や技術計算分野など、とにかく硬派な技術系の会社でキャリアをつんでいたU村さん。周囲には実力のある人が多く、給与だって業界的には上の方。忙しくて1日12時間働いたりもしてたけど、「そんなもんでしょ?」と充実した毎日を送っていました。
ところがある日、「スピンアウトだ!」と社を割るまでに発展するいさかい事が社内で生じます。
理由は「新しい設計手法や技術をどんよくに取り入れて行こうとする」実力派社員たちと、「実績のある従来のやり方を通そうとする」上層部とで生じた溝が埋まらなくなってしまったこと。
U村さんから見れば「言葉の違いだけで、見ているゴールは同じ」はずだったのですが、どちらも引かずにいた結果、社員の1/3が新会社を設立する……という事態にまで発展してしまったのでした。
ここでU村さん、かねてより考えていた「お堅い業務システム系開発」から「ゲーム&コンテンツ系開発」への転身を考えます。いや、考えただけでなく、実際に転職紹介の業者に斡旋をお願いしたりもいたします。
ところが出てくる話出てくる話、とにかく業界的に給与水準が違いすぎる……。
そんなわけで転身は断念。彼女は他の同僚たちとともに、新会社へ籍を移すことになったのでした。

レッツまたまたスピンアウトだ!

新会社に入ってU村さんが一番驚いたのは、まさに希望通りの仕事がそこに転がっていたことでした。その会社には、ネットワークゲームのSDK開発や、ネットワークゲームそのものの開発、VRMLというバーチャルリアリティ技術のSDK開発など。「もしゲーム業界に転職したとしたら、自分の価値はこのへんかな」と思っていた分野の仕事がゴロゴロしていたのです。
当然ハッピー。
そんなわけでまたまたU村さんは、この会社でもバリバリ仕事に勤しみまして、充実した毎日を送っていたのでした。
……そうして3年が過ぎた頃。
「スピンアウトだ!」
なんとまたまた社内の若手が上層部と対立をはじめ、社を割って新会社を設立することになったのです。
「おいおい、またかいや……」
正直そんな風に思ったU村さん。いい加減嫌気がさしたので、どちらにもつくことはなく、仲のよい同僚&総務の人とくっついて、こちらはこちらで自分たちの新会社を設立してしまいます。
まさに群雄割拠。戦国武将たちの世界ですな。
そんなこんなでさらに5年が経ち……。
気がつけば1社目の仲間たちは、それぞれ小さな会社の社長になっていました。
「社長になってみるとその苦労がわかるのか、逆に昔の仲間ともうまくやれるようになるらしいです」 とはU村さん。今は皆で仕事を融通しあいながら、いい関係を保っているそうです。

オチの一コマ
本日の一句

一読して「なんじゃそりゃあ」と、感心しつつも思わず笑ってしまった体験談でした。
会社を割るという話の場合、多くはドロドロと陰惨めいたものになりがちです。ところがこの話の場合、それが微塵も感じられません。むしろ微笑ましさすら感じます。
なんというか、己が腕を頼りに生き、己が行動で現状を打開しようという人たちの話だからこそ、聞いててすがすがしいんでしょうね。
「実力のある先輩たちと仕事ができて勉強になった」とU村さんが言うのも納得の、実に楽しい転職体験談でした。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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