ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ二十三 オレの仕事はなんでも屋!? 何もかもを押しつけられて、イヤ気がさした彼でした

予算がまるであてがわれない広告部。金はないのに広告をうてってんで、悪戦苦闘のF川さん。
しかしその結果彼がうけた評価とは……。
怒りがストレートに伝わってくるような、今回はそんな体験談です。

営業が売るから会社が成り立つんだ

広告部で働く……というか、1人で広告部として社内外の広報・広告活動を一手に引き受けるF川さんは、「広報・広告費用は0円。それで広告を載せるのが一流の広告部だ」というポリシーの会社で、「どないせいっちゅうねんホンマ」とげっそりしながら働いておりました。
そんな状態にあっても、常に営業の売上が低い理由は「Webページでの告知ができてない」とか、「広報活動がダメだから」とか、「広告を掲載してないから」とかとかとか。
つまりは全部彼のせい。
そして彼の給与はそのとばっちりを受けて、営業以上に低く抑えられたもの……が常なのでした。
なぜかこの営業からは、「どんな商品が売れるか」「販売先はどこか」「どんなキャッチコピーをうつべき品か」なんて声があがってきた試しはありません。いえいえ、それどころか「そんなん全部マーケティング、広報の仕事」とこっちに丸投げされるのです。
販売先を見つけてくるのが広報の仕事?
挙げ句は会議のたびに営業部長から「新しい販売先から電話がないので売れません、広報のせいで販売先が見つかりません」と糾弾される始末。
広告部という名の「何でも屋」にしたてあげられて、そのクセもっとも待遇の悪い現状……。F川さんのストレスは、日々ふくらんでいくばかりでした。

同じ馬車馬のように働くのなら……

広告をうつのに必須の「どんな製品か」という情報は、待っていたって下りてきた試しはありませんでした。そのためF川さんは、いつからか製品開発の現場に入って協力するようになり、誰よりもその品を熟知するよう心がけていました。
そして、なんだかんだいっても営業が売ってくれなきゃ話にならないのも理解しています。だから熟知した製品の情報は、会議のたびに、開発が進むたびに、こまめにメールやプリントアウトした資料などを渡すようにして、皆の足並みが揃うようにも気を配っているつもりでした。
日頃のがんばりの甲斐あって、某情報誌や全国新聞、TV等にも紹介いただくことができています。普通に考えれば盤石の体勢。順風満帆の状況が作れているはずです。
ところが、販売直前になって営業からは「こんな機能の商品は売れないよ。客先が欲しいのはこんなんじゃないのに、なんで調べないの?」という言葉が。そして、その客先なるものの電話番号をぞんざいに口頭で伝えて去っていくのです。
会議では「まともな広告活動もしていないのに、文句しか言いません」とまたまた糾弾の声。反論しようにも「お前の問題点を議題にしてるんだから黙ってろ能ナシが。口出す暇があれば仕事しろ」と取り付くしまがありません。
どうせここまで何でも屋をやらされて、忙しく馬車馬のように働いて、それでこの始末なんだったら……。
こうしてF川さんは、退職の道を選びました。そして、自分自身が納得できる形で馬車馬のように働こうと、知人とともに会社を興して今に至ります。
新しい会社では、Webページ製作や印刷物デザイン業、果てはお客さんとの付き合いが深まった結果のパソコン教室など。多岐にわたる業務の中で、休み返上で働く毎日です。
でもF川さんは言い切ります。
「自分のパソコン知識をフルに使える現状に、とても満足しています」……と。そして「売上」という怖いほどリアルな成果を肌に感じながら、日々を楽しんでいるのでした。

オチの一コマ
本日の一句

自分が昔勤めていた会社も、こういう「売れないのは○○のせいだ」という体質の営業グループを抱えてました。
売ることに集中すべき部署が、売れない理由ばっか毎日探してるわけだから、そりゃそっち経由の売上は伸びないわなぁ……と思ったのをよく覚えています。
その中で腐ることなく改善策を練り続けてきたF川さんはエライ! 無料で各種媒体に載せちゃったのもエライ! さらには「自分でやる」と会社まで興しちゃうところもエライ!
そのバイタリティ……というか実行力は、自分も見習っていきたいと強く思います。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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