ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ二十七ボクは目指すさプログラマ。 ……のはずなのに、 なぜかオペレータで24時間交代勤務のめちゃ不思議

専門学校でコンピュータ全般やC言語などを学び、プログラマとして生計を立てようとがんばるY山さん。
就職難の中、どうにか開発会社で内定を取り、夢が叶うと思ったら……。
近づいていたはずのものが、実はそうじゃなくて愕然とした。今回はそんなお話です。

この道でがんばっても先はない、そう気づいた時に結論は出た

「3年がんばればプログラマになれる」
その言葉を信じてがんばってきたY山さんであるだけに、それをあっさりと否定する上司の言葉は衝撃的でした。「え!? オレだまされてたの!?」という気分。そりゃそうですよ、24時間交代勤務制という看護士さんのような日常に耐えてきたのも、「プログラマ」という職に就けると思ったからなんですもの。
「なんとか部署を変えてはもらえないですか?」
そんな風に交渉してみるも暖簾(のれん)に腕押しで効果なし。もともと「悪いことは聞こえない」というタイプの上司だっただけに、そこの協力は期待できそうもありません。
でもただひとつだけ、開発部署へと異動する道は残っていました。それは、「その職場で利便性の高いプログラムを作成して上司へ提出すれば、いずれ認められる可能性がある」というもの。
ならば……と思いたいY山さんでしたが、職場を見渡してがっくりと肩を落としました。利便性の高いプログラムもなにも、そもそも彼が派遣されている職場は、サーバの監視に携わるのみで「パソコンにさわれない」職場だったのです。
そうして彼の選ぶ道は、否応なしに固まっていったのでした。

辞めさせてください、とにかく辞めさせてください

さて、転職することに決めたY山さん。交代勤務だったので、必然的に彼の活動は夜勤明けということになりました。当然睡眠時間はままなりません。それでも人材紹介会社や転職フェアを頼りに、数社を受けてまわった結果、探し始めてから3カ月しないうちに、次の会社を決めることができました。 やった、拍手、パチパチパチ。
ところが話はそこで終わらないのです。なんと現職の会社が辞めさせてくれない。先輩方の話だと「1年間は辞められないよ」とのことで、上司に辞表を提出しても、受け取らないか受け取っても握りつぶすかのどちらかという始末。直接総務課に乗り込んだりもしてみましたが、これも功を奏すことはなく、最後は労働基準監督署に助けを求めるとこまで行きました。
「夜勤明けの身体で本社に行って話をしたり、無理に辞めようとしてみれば“裁判という言葉で脅されたり……。そんなドタバタで平均睡眠時間が2時間という時期が1カ月ほど続いたときは、精神面にくわえて肉体的にもかなり限界でした」……とはY山さん。
けっきょく彼が退職できたのは、それから半年後のことでした。1年まではかからなかったので、一応は苦労が実を結んだ形でしょうか。それでも理不尽ですが。
そんなY山さんは今、新しい勤め先でWindows用のアプリケーション開発をしています。小さな会社で、正直人手も足りてない様子ですが、プログラム書きに邁進(まいしん)できる毎日に、とても満足しているのだそうです。

オチの一コマ
本日の一句

意に染まぬ仕事に就かせて、こちらの願いは一方的に無視しておきながら、「辞めるな」とはまったくよく言えたもんだというのが第一印象でした。
だって本人は、そのキャリアで一生飯を食っていくしかないわけです。なのに希望を無視してしばりつけるなんて、その人の人生を狂わせようとしているのに他なりません。しかも無自覚に。
つくづく「会社という箱の怖さだなぁ……」と思わずにはいられない体験談でした。
Y山さんには、ただただ「お疲れ様でした」と言うばかりです。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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