ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ三十三ただひたすらに学ぶこと。そして開いた、次への扉

今のままでは職を失いかねない。
死に体となった業界で、ひたすら規模縮小を繰り返す社にあって、「手に職もない」「業界以外のことをまるで知らない」自分自身に強い危機感を覚えるU井さん。
そんな彼が踏み出す第1歩は、あるパソコンソフトとの出会いがきっかけでした。

迷いなく入学試験を受けました

「ほとんどが手書き」という世界で仕事をしていたU井さんにとって、Excelとの出会いはまさにカルチャーショックでした。なんだこの便利なものは。データベースっぽくも使えるし、独自のフォームや関数だって作れちゃう。これはすごい、すごいすごい。
ぐんぐんのめり込んで、小さな請求管理システム……のようなもの……を作った時、彼の気持ちはほぼ固まっていました。
「これで食べていけないだろうか」
今の仕事は、毎日数字を右から左へ移すだけ。手に職もつかないし、業界以外のこともわからない。このままじゃ自分は何者にもなれない。いつかこの状態で社が無くなった時、ぽいと放り出された時、自分はいったい何が出来るというんだろう……。
U井さんには、いつもそんな危機感がありました。その危機感を打ち壊す鍵が、ここにあるように思えたのです。
迷いはありませんでした。
すぐさま彼は専門学校の入学試験を受け、合格が決まったその日に、退職届けを出しました。
「これで食っていけるようになりたい」
「このままじゃ自分に先はない」
そうした目的意識と危機感とが、U井さんの背中をぐいぐいと押し続けていたのです。

小さくても元請け!

当面の生活費や学費には、働いていた間に貯めた500万円を取り崩して充てました。でも、伊達に入学したわけじゃありません。勉強に向ける熱意は並大抵のものではなく、「人生の中でこれほど勉強したことはない」というほど勉強した彼は、見事特待生に選ばれます。
つまり学費はほぼ免除。
こうしてU井さんは、蓄えの中でやりくりする算段をつけながら、無事卒業の日を迎えることができたのでした。

さて、卒業にあたり、当然のことながら就職先探しに奔走したU井さん。企業選定にあたっては、ひとつだけ条件を決めていたといいます。
「小さくても元請けをしている会社がいい」
これが、その条件でした。
彼がSE職を志すにあたり、魅力的に感じた点は「お客様との対話」にあったというのです。その対話の中で、様々な業務業種業界に触れ、提案し改善を行いながら、自分の中にそれを生きた知識としてため込んでいく。これが、一番の楽しみでした。
就職先は潤沢にあったとは言い難いながらも、なんとか希望通りの会社を見つけた彼。
当初こそ「新卒ということで、5歳年下の同期たちと同額の初任給で悲しかった」ではありましたが、その後「先パイに追いつけ追い越せ」と頑張る姿勢を上司が評価してくれて、年相応の仕事をまわしてもらえるようになりました。もちろん昇給もワンセットです。
「きつくてしんどい仕事ではありますが、自分たちの作り上げたものがどこかで動いている、そう思うと嬉しさと充実感、そして責任感が湧いてきます」
そう締めくくるU井さんは、この仕事につけたことを幸せと感じながら、毎日を充実して過ごしているそうです。

オチの一コマ
本日の一句

社会に出てみると、「もっと勉強しときゃ良かった」「今、学校に戻れたとしたら、オレはもっと勉強するよ絶対」なんてことを思う人は少なくないと思います。私もそうでした……というか、そうです。
でも「じゃあ再入学するか?」といったらそれも難しくて、色々言い訳をこしらえては踏み切れない。そんなもんですよね。
それをやってのけたんだから、U井さんはすごいなぁ……と。そのまっしぐらさが、実に実にまぶしい体験談でありました。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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