ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ三十六転職はしてみたものの、なんだかとってもつまんない。 そうして気づいた、自分自身の適性とは

顧客と打ち合わせながらシステムを構築していく。ある意味、これはSE業の醍醐味と言っていいのかもしれません。
Y川さんもまた、そこに面白みを見いだした1人。そのため彼は、忙しい部署とは知りつつも異動を願い出たのですが……。
忙しさの果てに彼は何を思うのか。そんな今回の体験談です。

仕事そのものは面白いんだけど……

「脂肪肝」
それがY川さんの病名でした。超音波検査の写真には、まっ白に輝く肝臓が写っていました。もちろん全部脂肪です。
椅子に座りっぱなしの生活。コンビニ弁当ばかりで添加物満点・高カロリーな食生活。
それらが悪影響を与えていることは、想像に難くありません。
身体がまいっていくに従い、精神的にもきつくなってきました。仕事自体には面白みを感じていたのですが、いかんせん負荷が高すぎる。しかも周囲を見渡すと「開発をお願いしている協力会社要員の尻ぬぐいに、自社の社員が追い回される状態」なんてことに陥るのがデフォルトになっていて、その面白さにも陰りが見えはじめつつある状態ときたもんだ。
「システム関係の職に就くのは、もうやめよう」
退職を決め、転職エージェントへの登録を行った時、Y川さんはそこまで思い詰めていました。しかし地方であるせいか、それだとなかなか職は見つからず……。
であれば、「極力負荷の少ない会社を」と、彼は官公庁向けのソフトベンダにて、プログラマをやることになったのです。

はっきり言って、つまらない

新しい職場では適度に暇で、カタカタとプログラムを組んでばかりの、平穏無事な暮らしが待っていました。
「負荷の少ない会社を」と望んだY川さんにとっては、まさに希望通り。最適な会社……のはずなのですが。
「なんかアホらしくなった」
とは彼の弁。
プログラマといっても、やることは「親会社の言うとおりのプロダクトを、親会社の担当者の気まぐれに従って作る」だけ。創意工夫なんてどこにもないし、そもそもこの業界で面白みを感じていたはずの「顧客と打ち合わせながら」という部分が皆無です。
「ああ、そうか……」と。
この瞬間、Y川さんは自分の中にある「仕事をする上で、譲れないところと妥協できるところ」の存在に気づきます。あらためて自分の経歴を棚卸ししてみて、何がやりたいのかと自問する毎日……。
導き出された結論は、「仕事は多少きつくても、面白い方がいい」というものでした。
そうと決まれば、この職場に長居する理由はありません。「民間企業のシステムに携わる1次請けの会社」に狙いを絞り、彼は早々に転職活動を開始したのでした。
こうしてY川さんは、7年半在籍した1社目とは違い、2社目の会社はわずか1年少々で飛び出すことになります。
そして今。
「忙しさの中で体調をコントロールすることの難しさは感じる」としつつも、彼は顧客と打ち合わせながらのシステム構築にやりがいを覚える日々を送っています。おそらく3社目の会社生活は、少々長めのものになってくれることでしょう。

オチの一コマ
本日の一句

なんだかとっても「わかる、わかるよ~」な体験談でした。もっとも、自分の場合は痩せすぎでしたけど。
25歳を過ぎると明らかに体力が落ち始めて、30歳をこえたらガクンと無理がきかなくなりました。「もっとできたはずなのに」と過去を振り返って思うのは、結局体力勝負でごまかしてただけの仕事スタイルだったりして。徹夜ができなくなった……とか。
いくら好きな仕事でも、無理が当たり前では長く続くはずもありません。
好きな仕事だからこその自己管理。好きな仕事だからこそ無理無茶しない。それって大事なことだよね~と、今はすごく思います。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

著書紹介

キタミ式イラストIT塾「ITパスポート試験」 平成22年度キタミ式イラストIT塾
「ITパスポート試験」 平成22年度

出版社:技術評論社
定価:¥2,079(税込)
http://www.amazon.co.jp/dp/4774142026

★このコーナーが本になりました!

SE・エンジニアの本当にあった怖い転職話SE・エンジニアの
本当にあった怖い転職話

出版社: 毎日コミュニケーションズ
定価:1,470円(税込)

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena

勤務地を選ぶ

職種を選ぶ