ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ四十二好きこそ物のなんとやら。 「1からやり直そう」と、それが私の生きる道

目指して入った業界が、自分の思惑と違っていた。そんな時、「この先どうするか」と、採るべき道は様々です。
「この際だから、もっと自分に合う仕事を」と考えたC葉さん。その道にためらいはなかったのか……。そんな今回の体験談です。

待遇の悪さがイジメに化けて……

資格手当なんかスズメの涙で、とにかく低い給料とありえない労働時間。そして労働基準法違反をごまかすためにと、マネージャ監視のもとで残業時間を申告させられるというもの悲しさ。C葉さんが働いていたのは、そんな職場でした。
しかしC葉さんがこの職場で感じていた「やってらんない」という一番は、そうした待遇面ではありませんでした。
イジメ……が酷いんです。この職場。
上から下まで、皆一様に待遇が悪いこの職場。がんばったからと給与が上がる見込みもないこの職場。
当然そんなとこ、空気がよどんできちゃいますよね。
C葉さんの職場も、それは例外じゃありませんでした。そしてこの職場では、そうした待遇面で鬱々(うつうつ)とたまるうっぷんばらしをするためにと、「新人イジメ」が横行していたのです。
「オレの判断で、お前にゃ講習受けさせてやんねーよ」
運悪く、そのターゲットとされてしまったC葉さん。失敗があればやたら大きく喧伝(けんでん)されて、キャリアパスとして必要な社内の資格試験は受けられないよう根回しされて……。
この会社にいる限り、彼に「出世」という2文字はないも同然でした。
「だったら、この際もっと自分に合う仕事を探してみよう」
この仕事は体質的に合わないとも感じていた彼は、こうして退職の道を選ぶことになったのです。

「何がしたいのか」と考える良い機会

「最初の就職は、『大きくて有名』なんて理由で安易に会社を選んでしまった自分がいます」
そんな風に過去を振り返るC葉さんは、転職活動に際して「自分は何がやりたかったのか」「どんな仕事で食べていきたいと思うのか」ということを否応なしに考えさせられたといいます。だからこそ「1からやり直すことができたのだ」とも。
そう、C葉さんの転職活動は、まったく別業界へと彼をいざなうことになったのです。
C葉さんは、もともと市販の電子キットを作るのが好きでした。
『自動車のように大きくて力のいるものよりも、机の上で細々と作業して完成させる方が自分には向いているんじゃないか』
そんな風に思った彼は、電子・電気関係に狙いを定めて、地元のハローワーク通いをはじめます。求人数が少なくて苦労はしたものの、たまたま手にした募集に「マイコン応用機器設計・製作」とあり、しかも勤務地は自宅からの徒歩圏内。「これは!!」と申し込んでみたところ、人柄の良い社長に迎えていただき、無事採用が決まりました。
「入社して1年くらいは、書くコードすべてにダメ出しが入り、違うだろがーと毎日のように言われてました」
でも、根気強く教えてくれる先輩方がいて、なにより成長の実感が心地よくて……。
そんなC葉さん。今は転職して10年ほどが経ちました。忙しい業界と感じることも多々ありますが、イジメもなく、後輩からも頼りにされて、責任感とやりがいのある日々を送っているそうです。

オチの一コマ
本日の一句

自分も「マウスってこれ? ディレクトリってなに?」という状態でSE業界入りした過去を持つ身なので、「好きこそ物の……」はよくわかります。この業界が自分にとって、「高価で買えなかったコンピュータを、思う存分いじくることのできる職場」であったからこそ、なんとかやってこれたんだろうな。そんな風に思うからです。やっぱ興味の持ちようで、身につく深さって違いますものね。
そうそう、このC葉さん。今では雑誌に寄稿するほどの技術者さんになっているのだとか。「好き」というのも、やっぱりひとつの才能なんだろうな~と、ただただ感心するばかりです。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

著書紹介

キタミ式イラストIT塾「ITパスポート試験」 平成22年度キタミ式イラストIT塾
「ITパスポート試験」 平成22年度

出版社:技術評論社
定価:¥2,079(税込)
http://www.amazon.co.jp/dp/4774142026

★このコーナーが本になりました!

SE・エンジニアの本当にあった怖い転職話SE・エンジニアの
本当にあった怖い転職話

出版社: 毎日コミュニケーションズ
定価:1,470円(税込)

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena

勤務地を選ぶ

職種を選ぶ