ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ四十三「残業するな!!」「残業しろよ!!」 ゴタゴタが招く結果やいかに?

体育会系気質の会社で、誰も彼もが残業続き。日付が変わるまで働くなんかも当たり前。
そんな会社で、ある日もめ事が勃発しました。なぜかその渦中に置かれたH林さん。そして社長が下した結論とは……。
「ちょっと待てーーー!!」と思わず叫びたくなるような、そんな今回の体験談です。

残業体質と意地の張り合いと

入社してH林さんが一番はじめに驚いたこと。それは「ゆ、床で寝てる人がいる!?」というものでした。「死ぬほどビビりました」とは本人談。残業が当たり前の、日付が変わるまで働くのも当たり前の、そんな企業体質だったのです。給与は月に18万ほど。残業代は……あれ? どこ? ってな感じ。
彼の仕事は営業で、具体的には「ダイレクトメールやショップカードなどのデザイン・印刷業務を請け負ってくる」ことでした。そんなわけで、入社早々個人店舗まわりをしていた彼。もちろんアポなんかない、飛び込み営業です。正直「売れないよなこれは」と思いながら駆け回る日々でした。
定時内をフルにそうやって駆け回った後で自社に戻るわけですが、まだまだ仕事は終わりません。だってみんなして残業まっしぐらなんですもの。入社して間もない新人が「んじゃお先に」なんて言えないじゃないですか。
そんなわけで、定時後は先パイのお手伝いをと、やっぱり残業体質にどっぷりとつかることになるH林さんなのでした。
入社から1カ月と少しが経った頃、直接の上司である営業部長が、新しく入ってきた人に差し代わりました。今度の部長は「残業は無能の証」がモットーで、出てきた指示は「営業終わったんならとっとと帰れ」というもの。さすがにそれはと言っても聞き入れてはもらえず、H林さんは社内でただ1人「定時で帰る男」になってしまいます。
これに激怒したのが前の営業部長。「それでも残るのが新人ってもんだろが!!」……と。しかし今の営業部長も一歩もひかず、「お前の上司は誰だ」とH林さんを叱る始末。そうして気がつけば、彼を通して2人の意地の張り合いがはじまってしまったのでした。

実は少しホッとした……んだけども

この意地の張り合い……というかゴタゴタが、ほどなくして社長の耳に入ります。そこで社長の鶴の一声が出るわけですよ。なにをもめとるのだお前らは、とですね。
「じゃあお前、辞表を出せ」
……社長の下した結論は、もめ事の中心にいるH林さんに、「退職しろ」と迫るというものでした。えーなにそれーって感じの話なのですが、このもめ事にいい加減ウンザリしていたH林さんは、正直どこかほっとしてしまいます。そして「ああ、まだ入社2カ月か。んじゃ試用期間中だから1カ月後といわず、今すぐ辞めろ」なんてムチャな話に衝撃を受けつつも、まぁいいや……と受け入れてしまいます。
こうしてH林さんは無職となってしまいました。
入社2カ月ということで、失業保険の給付すら受ける資格がない彼。当然蓄えなどあるはずもなくて、とにかく次の職を早く決めねばと、手当たり次第に応募してまわります。だってそうしないと収入ゼロなんだもん。そりゃ焦りますってば。
約1カ月ほどの就職活動を経て、彼は機械関係の設計業務を主とする、小規模な会社から内定をもらいます。よかったよかった……なのかな?
「転職して、人間関係やお休み等々は問題ないんですが、残業当たり前の風土で、毎月70時間ほどサービス残業をやらされるのはシンドイです」
とりあえず今は下っ端として、雑用仕事に追い回される日々。「仕事と人間関係に満足してる分、複雑なとこなんですよ」とついため息が出てしまうH林さんなのでした。

オチの一コマ
本日の一句

しばらくは今の会社でキャリアを積むのが無難なのだろうけども、キビシイよなぁ……と思わざるを得ない体験談でした。いや、だって「毎月70時間サービス残業」って。
きっちり残業代を払ってくれる会社さんだと、通常残業代の時給って2,000円程度はあるもんじゃないでしょうか。つまりこの会社の場合、毎月14万円ほどをお布施として搾取してくれちゃってるわけだ。毎月14万円のローンを組んだとしたら……、たいていのもん買えちゃいますよね。
創業の志を同じくして燃える日々ってのなら別として、そうじゃない場合の残業当たり前って、けっきょくは身体がどこかで悲鳴をあげるものだと思います。つまり一生の仕事……にはならないんでないかと。
無理がきくのは若いうちだけ。その若いうちに、サービスを強いない会社で彼が落ち着けますようにと、今は願ってやみません。
しかし1社目の社長はひどいな。むぅ。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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