ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ五十三高い時給に楽なお仕事、けれど抱くは大きな不安

いくつかの職歴を経て、とある官公庁のシステム運用に携わることとなったM瀬さん。
仕事は楽で、しかも金はいい。
おそらく多くの人が「いいじゃん」と思うであろうこの待遇。けれど彼が感じたのは「不安」の二文字でした。
仕事を通して得るものとはなにか。そんなことを考えさせられる今回の体験談です。

大手SIでの監視業務なのだ

18歳で社会に出て、数社を渡り歩いたM瀬さん。そんな彼が、派遣社員として大手SIに入り、従事することになった仕事は、とある官公庁のシステム管理業務でした。
「時給は良かったんですけど、人間的に……えっと、個性あふれる人たちばかりの職場でもありました」とはM瀬さん。
個性的……といえば聞こえはいいんですが、「すごく臭い人」「話しかけても一切無視の人」とか、そんな人ばかり。しかもその面々が、後から入ってきた人に対していじめを行うというのだからタチが悪い。それでまともな人は早々に辞めちゃって、なんだかアクの強い人たちばかりが残ると、そんな図式にあったようです。
さてさて、そんな職場なわけなので、M瀬さんもやはりいじめにあいました。しかしまだ若かった彼、我慢できずにブチ切れてしまったそうです。そしたらそれ以降はターゲットから外れるようになったんだとか。不幸中の幸いというかなんというか……。
この職場での仕事は、「監視室で監視ツールが稼働しているパソコンに、エラーがあがってきたら対応する」というものでした。しかしそもそもエラーが滅多にあがってこない。さらには、あがってきてもその履歴を残すだけで、特段何か対応を行う必要もない。
後は日がな1日、本を読んだりネットを見たりして時間を潰すだけ……。
「暇すぎる」
「このままここにいて、オレの将来大丈夫なんだろか」

それが、この職場に対してM瀬さんの抱いた感想でした。

出戻って気づいた適性とは

なんだかな~とモヤモヤを抱えながら働いていたある日のこと。以前働いていた会社の人と話す機会がありました。
そこで、今の仕事について話をしてみたところ、「だったら戻ってくれば?」と言うではないですか。
もともとそこを辞めた理由は仕事内容ではなくて、上司の性格的なものが原因でした。技術者としてはかなりの技術を持った人なんですけど、なんかいつもキレてるんです。以前その人が、何かの営業電話をたまたま取ってしまった時などは、なにも言わずに電話を切って、その後電話機を壁に投げつけたりしていました。いや、怖いよお前……と。
出戻った場合、そこでやる仕事は社内SEとして、システム周り全般の何でも屋さんになると思われます。今の暇すぎる状態よりは多少忙しい方がいいし、色んなことにチャレンジできるだろうし、ユーザーと直接やり取りできるというのもいい……。
こうしてM瀬さんは、かつての会社に出戻ることに決めました。現在の職場に対しては、派遣の契約期間が終わる1カ月前に辞意を表明し、新しい会社に対しては総務部長と顔合わせ程度の面接を行って、ともに滞りなくスムーズに事が運んだといいます。
さて、こうして元の会社に戻ったM瀬さん。件(くだん)の上司は相変わらずキレているそうですが、以前ほどのブチキレ加減ではないようです。現在は社内のパソコンセットアップからネットワーク敷設からアカウント管理から雑用まで、本当に「何でも屋」として過ごす日々。正直忙しく、休日に呼び出されることも少なくないですが、障害や問題解決した時の「ありがとうございます」という声にやりがいを感じる毎日なのだとか。
「以前、アキバのパーツショップで働いていたことがあるんですが、その時の経験と照らし合わせてみても、どうやら私は人と接する仕事が好きなようです」
そんなM瀬さん。もちろん今回の転職に対しては、満足しているそうです。

オチの一コマ
本日の一句

楽で給料が良ければそれでいいかといえばそうでもない。仕事というのは、単にお金を得るためだけのものじゃなくて、自分を育てるための投資でもあるんだという側面を実感させる体験談だと思います。
将来安泰だ、遊んで暮らせるぜーってくらいに高給ならばまた違うんでしょうけどね。
お金を取るか、自身の成長を取るか。それはどちらがいいと一概に言えるものではないし、歳を取ればまた変わってくるものでもあるしと、難しい命題です。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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