ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ五十六ビジネスに共感したい!……と、 それが彼の選んだ、転職理由

本連載「巻ノ九」にて、転職寸前まで行きながらちゃぶ台返しをくらったO川さん。
それから5年。より経験を積んで、思うところができたのですよと再び転職活動に乗り出した。
果たしてその決断、吉と出るか凶と出るか。そんな今回の体験談です。

もっとビジネスに共感したい!

お客さんと開発との仲立ちをする仕事は、O川さんにとって、思いの外新鮮で楽しい経験となりました。
お客さんに近い立場で話を聞けるので、「彼らがビジネスとして本当に欲しているものは何か」が理解できる。単なるご用聞きではなく、ビジネスを構成する面子の1人として、システム面からいかにサポートすべきかを考えることができる。
これがとにかく楽しかった。
2年ほど続いたこの仕事は、O川さんに大きな充実感をもたらしていたと言えます。
ところがその仕事が終わり、自社に戻ってまた新しい仕事についた時、つまりは開発側へと戻った時、彼は「こちら側からではお客さんの"本当にやりたいこと"が、まるで見えないじゃないか」と愕然とします。会社としては「いいからお客さんの言った通りのものを作ってればいいんだよ」「それ以上先に踏み込んでいくのはコンサルタントの仕事で、オレらの領分じゃねぇよ」というスタンスなので、誰もそれに違和感は覚えません。
「これではつまらない」
もっとお客さんのビジネスに共感し、踏み込んだ提案をしてシステム化を行い、プロジェクトの成功をともに喜びたい。
もっと、もっとそんな仕事を……。
こうしてO川さんは、再び転職活動へと身を投じることになったのです。目指すはユーザー系企業。それも、ITシステムを武器にビジネスを行っている会社です。

メールの主は、見知った顔の誰かさん

さて、転職サイトや人材紹介会社に自身の経歴を登録して、求人を漁っていたO川さん。いくつか候補は出てくるのですが、どれもこれも事業内容にピンと来るものがなく、「ビジネスに共感したい!」という第一条件を満たすことができません。
「そういう会社を見つけること。それが今回の転職で一番苦労した点でした」と彼自身が言う通り、今回の転職活動はスタート地点付近で足踏みしたまま、なかなか前に進むことができなかったのです。 そんなある日のこと。O川さんの職務経歴を見て、「この人良さげだな」と送られてきたスカウトメールの中に、「あれ?」と見覚えのある名前がありました。
「あ、あの時の会社だ!?」
そう、かつて2年ほど「お客さんと開発の仲立ち」をしていた仕事。O川さんにとって、かなり楽しく、充実感をもたらしてくれていた仕事。そして今回の転職に挑むきっかけとなった仕事……。
実はその時の仕事は、人事システムに関するものだったのです。そして、スカウトメールを寄越してきた某企業はまさにその会社であり、そこに明記された人事担当者さんは、まさにその時お世話になっていた方だったのでした。
まったくの偶然ですが、この偶然は双方にハッピーな結果を生むこととなります。
「これも何かの縁」と優先的に交渉を行った結果、話はトントン拍子にまとまって、それから1年。今じゃO川さんは、200台超のサーバを擁するシステム全体の管理者となり、同時に社内で走る個々のプロジェクトに対しても、システム面のアドバイザーとして関わる立場になりました。社長からも「ウチの中心メンバーだ」と言われるまでになり、「会社から必要とされてる!!」と実感する日々。
「転職には、最大限に満足しています!!」
そう言ってO川さんは、満面の笑みを浮かべるのでした。

オチの一コマ
本日の一句

きっとこの世の中って、色んな偶然がいっぱい転がってるんでしょうね。その中にはチャンスもあればそうでないのもあって、とにかく色んな偶然が雑多に混じり合って出来ているのだと思います。
そうした偶然がポンと転がってきた時に、それをチャンスにできるかどうか。それはやっぱりO川さんも言う通り、日頃の努力のたまものなんだろうなーと、ちょっと思わず我が身を振り返って反省しちゃったりもして、げふんごほん。
「最大限満足のいく転職」、おめでとうございます!!きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

著書紹介

キタミ式イラストIT塾「ITパスポート試験」 平成22年度キタミ式イラストIT塾
「ITパスポート試験」 平成22年度

出版社:技術評論社
定価:¥2,079(税込)
http://www.amazon.co.jp/dp/4774142026

★このコーナーが本になりました!

SE・エンジニアの本当にあった怖い転職話SE・エンジニアの
本当にあった怖い転職話

出版社: 毎日コミュニケーションズ
定価:1,470円(税込)

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena

勤務地を選ぶ

職種を選ぶ