ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ六十三ふと遊びに寄ったらヘルプを頼まれ、気がつきゃフリーのデザイナー

SEという職に就いていても、それがその人のすべてではありません。会社以外でも色んな人とのつながりがあるのが普通で、時にその中から新しい職にたどり着くことも。
I原さんも、そんな1人。
人の縁が自然と“道”を作ることもあるんだね。そんなことを思う、今回の体験談です。

けっきょくそのままアルバイト生活に

入社3年目で会社を辞めて、ちょっと遊びにと立ち寄った編プロ(編集プロダクション)で、「お手伝い」として完徹2日に巻き込まれたI原さん。さすがにこれはとバイト料をいただき、じゃあ帰ろうかとしたところ「じゃ、また来週ね」と声をかけられました。
「気がつけばそのまま時間給のアルバイトとして、その編プロで働くことになりまして」とは彼の弁。 「なんで働き続けていたか、自分でもよくわかりません」とも語るように、そのままI原さんは、なんとなく流されるのに従って、2年もの間、ここでDTPデザイナーとして修行を積むことになります。仕事は決して楽ではなく、3日間連続での徹夜もごく当たり前な、そんな修羅場続きの職場でした。
しかし彼が26歳になった年、「祖母の体調が思わしくない」という知らせが実家から届きます。
「これはまずい、実家に帰れるようにしなきゃまずい」
「そもそも、3日徹夜なんて週1回以上は無理だ」
「趣味と仕事が一緒というのも、息つく暇がなくてきつい」
彼の中で、色んな思いが噴き出しました。とにかくこのままではまずい、なんとかしなければ……。
「SE職に戻ろう」
こうしてI原さんの、2度目の転職活動が幕を開けたのです。

カチンときて発憤したら……

求人サイトに登録して希望の会社を探す一方で、I原さんはSE時代の知人に連絡を取り、人手を探しているところはないか尋ねてまわりました。重視したポイントは「労働時間が決まってること」「健康保険がキチンとあること」「設計を重視した開発を行っていること」の3つです。なにげにこれまでの苦労が偲(しの)ばれて、泣けてくるような条件たちです。
けっきょく8社ほどを受け、うち3社で面接にまでこぎつけました。
……がしかし。
「データベース中心に作業していたとのことですが、最初に行う構築方法はそらんじていますか?」
「いえ、データベース構築後しかさわっていません」
「ふぅん、まぁその程度……と。この期間は編プロにいたというけど、なにかしてたの? たいしたことはしてないと思うけど
思わずI原さん、「カチーン!」……と。
これで発憤した彼は、その後すぐさま「自分で作ったものはなにか、それを応用してなにを作れるか」と自身の棚卸しを行います。それを自身のアピールにつなげ、さらには「後の仕事につながることならなんでも」と、ライターの真似事から図版製作からプログラムのテスターからと、とにかくなんでもかんでも出来る限りがんばります。がんばってがんばってがんばりました。
そうこうするうちにポツポツと仕事が入ってくるようになり。気がつけば個人事業主としてフリーのDTPデザイナーに……って、あれ?
そう、けっきょくI原さんはSE職に戻ることなく、発憤したその勢いのままそっちの世界で足場を固めることができてしまったというのです。
「今は、漫画雑誌のデザイン作業なんかを、契約してる編集部に出向いて行ってます。漫画は好きでしたが、まさか制作側になってしまうとは思いもしませんでした」
そんなI原さん。今は麻のアロハにジーパンとかの軽装で、楽しく働く毎日なのだそうです。

オチの一コマ
本日の一句

ライターの真似事とか図版制作とかプログラマ時代のツテだとか、なんかそれはいつの私ですかって感じで、とても近しいものを感じる体験談でした。
自分はなにができるのか。単純にそれを自問しても1回じゃ答えって出ないんですよね。問いかけながらなんでもやってみて、また問いかけて、その繰り返し。そのうちに自分の形がちょっとずつできてきて、そしたら足りないものも見えてきて、そうしてようやく血肉となる経験に昇華できていくんだろうな~と、そんなことを思ったのでありました。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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