ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ六十五放置プレイに悲しくなって、残業地獄に疲れ果て。「次はどの道」と思い悩む今日このごろ

せっかく入った会社で教育も施されないまま外部に出向させられて、その先でも放置プレイで学べない。
そんな境遇に置かれてしまったM脇さん。
仕方なしに退職の道を選んだのでありますが……。
経験という糧(かて)は誰にも平等に与えられるものではないのか……と、そんな怖さを感じる今回の体験談です。

だって悲しくなっちゃったんだもん

出社しても仕事がない。なにか手伝おうにも、確認できる人がいない。そんな、あまりに非生産的な毎日に、M脇さんが耐えられたのは半年まででした。
「食いつなぐ必要もあるので、無職期間はなるべく短めにと、すぐに転職活動を開始しました」
M脇さんの転職活動は、「転職サイトに登録して、めぼしい会社を見つけたらハローワークで紹介してもらう」というスタイルだったといいます。1社目の退職は「あまりに仕事がないこと」に嫌気がさしただけだったので、選んだ業種は前職と同じソフト開発の会社でした。
「やっぱりSEの仕事がしたくて」とは彼女の弁。
さて、故郷鹿児島に戻りたかったのもあり、「その方面に本社のある会社」という条件重視であたっていたM脇さん。いくつか絞った候補の中に、素晴らしくレスポンスの早い会社……面接を受けて3日後には採用通知が届く……なんて会社があって、それで彼女のキャリア2社目が決まりました。
「先方が採用と決めた理由は、多分私の人当たりが良かったからだと思います」
こうして福岡から鹿児島へと所をかえて、彼女の開発者人生はさらに続くことになるのでした。

独裁政治、ここにあり

M脇さんの2社目は、前職と本当に正反対の、残業残業また残業……という風土の会社でした。
とにかく1人で抱える仕事が多い。
会社の方針はすべて社長の言うがまま。社長の言葉は絶対で、その指導内容は私生活にまで及びます。
1カ月2カ月単位で出向先を渡り歩き、その間は外の仕事が終わっても自社に戻って社内の仕事。残業時間は100時間をゆうに超え、しかし「教育のキョの字もない」風土でもあったがために、それらすべてをハッタリと愛嬌とで渡り歩いていくしかありません。
「毎日午前2時とか3時に帰宅して、翌朝7時に家を出るような暮らしでした」
2年頑張りましたが、とうとう力尽きて退職。SEの仕事を続けたい気持ちはありながらも、さすがにしばらくは考える時間が欲しいと思った彼女は、とりあえずアルバイトで食い扶持(ぶち)を確保しつつ、次のことを考えようとしたそうです。
……そしたらバイト先がわずか10日で閉店しちゃったりなんかして。
やむなくM脇さんは、派遣SEとして短期の仕事を渡り歩きながら、口を糊(のり)しているのだとか。
「ちょっと地元にこだわりすぎたかも……」
「地域によって仕事の絶対量が違ってくるので、若く身体の無理がきくウチに冒険して、もっと大きなジョブを体験できるよう頑張るべきでした」
そう語るM脇さん。「今、身についてる技術というのが、本当に中途半端なのですよ」と、不安な気持ちを吐露(とろ)するのでした。

オチの一コマ
本日の一句

このM脇さん。25歳なんだそうです。
女性の年齢についてはなかなか断定しづらいものがありますが、ご本人が投稿文の中に書いていた、「自分ではまだまだ若いつもりでいるつもりですが」に、個人的には1票を投じたいです。若いです。まだまだこれからです!!
一度「しんどいなぁ」という体験をしてしまうと、頭より身体が先に拒否反応しちゃうってことありますよね。M脇さんが正社員に二の足を踏んでしまうのも、きっとそれじゃないでしょうか。
今は目の前の仕事を頑張って、興味の持てる内容を独学して、そしていつか身体の拒否反応が落ち着いたあたりで、次の身の振り方を考えればいいんじゃないかなぁと、そんなふうに思います。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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