ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ八十三父の定年が、長い夏休みの始まりでした。……って違う、Uターン就職の転機でした、なのです

いつかは田舎に帰るぞと思いつつ東京に就職し、忙しく毎日を過ごす。いつの間にやら時が経ち、「あれ? そういえばオレはいつ帰るんだ!?」となってから改めて「田舎に帰るか」「このままこっちで働くか」と考える。
よくあるパターンといえばよくあるパターンです。
今回のK口さんは、迷わず「帰る」と決めた1人。彼はなぜ迷うことなく決められたのか。そして帰った結果どうなったのか。
そんな今回の体験談です。

とりあえずはぶらぶらと

父親の定年を機に「田舎に帰るぞ」と決めたK口さん。忙しいながらも、待遇・給与・人間関係ともに良好で、「とても充実していた」と語る彼。しかしその一方で「田舎に帰る」ことに対しても、特に不安はなかったと言います。
「UNIXやネットワークに関してかなり自信を持っていたので、なんとかなるだろうと思ってました」
社内では、前々から「いつかは田舎に戻りたい」と公言していました。そのため、退職の意向を春先の面談で上司に申し出た際も、惜しまれこそしましたが、「残念だけど……がんばれよ」と気持ちよく送り出してもらうことができたそうです。
こうして、順風満帆に退職ロードを駆け抜けたK口さん。地元に戻ってまずやったことは「ぶらぶらする」ことでした。
「少しゆっくりしながら考えようと思って……」
ハローワークに行くでもなく、本当にただぶらぶらと、のんびりのんびり過ごすK口さんなのでした。

転職後、1通のメールが届きました

ぶらぶら過ごす無職生活も、1カ月ほど経つと飽きてきました。そんなわけでK口さんは就職活動を開始。コンビニで求人雑誌を買ってきて、自身のスキルが生かせそうな会社探しを始めました。
「そしたら、これがまったくなくてですね」
ないと言っても「ああそうですか」では済みませんから、なんとか見つけ出すしかありません。K口さんは内心「おいおい」と思いつつ、端から端まで丹念に文字を追いました。
やがて、どうにかそれらしき実績を持つ会社を1つだけ発見。早速応募して、翌日には面接に至り、さくっと採用が決まりました。
「気さくな社長さんで、業務経歴の説明が済んだ後は『ロボットとか作ってみたくない? ゲームなんかも作ってみたいんだよね~♪』などと互いの夢の話になり、意気投合して盛り上がりました」
その話の中で、先方の社長さんはK口さんの「特定の社風や慣習に染まってない、無色透明なところ」が気に入って採用を決めたそうです。もちろん、UNIXやネットワークに対しての知識が、大きな武器となったのは言うまでもありません。
さあ、こうしてK口さんは、新しい職場で心機一転、がんばるわけですよ!!
……ところが。
この会社に転職して1カ月後、彼のもとへ古巣の会社から「助けてドラえ○~ん」と1通のメールが届きます。彼が担当していた昔の案件に仕様変更が入り、現担当ではカバーしきれないので手伝ってもらえないか……という話でした。さてどうしましょう。
それからさらに2年が経ちました。
気がつけばK口さんは、福岡に住み、福岡の会社に籍を持ちながら、東京で働いていた頃と仕事も仕事仲間も変わらないという不思議な生活を送っています。ただ、今の会社は創業8年目とまだ若い会社であるだけに、従来と同じ仕事をこなす一方で、人事や採用・教育面にも深く関わることができ、いつかは自分で育てた子達をチームとして編成し、ともに大きな仕事をやってみたい……なんてことを夢想する今日この頃なのだとか。
「転職してますます仕事が充実しています」
そう笑うK口さんなのでありました。

オチの一コマ
本日の一句

いただいた体験談をもとに、できるだけ脚色なく本文を構成しています。そのためか、本文だけを単純に見ると「なんと順風満帆な」なんて感想を持つかもしれません。でも、その裏にはK口さんの献身的な仕事っぷりや、苦労を苦労と喧伝(けんでん)しない彼の人柄の良さが隠されていると思うんです。
自信が過信とならず、頼りになるが嫌味はない。そうでないと、仕事や人が彼の後をついてまわる現状にはなり難いんじゃないかと、そんな気がするんですね。
せっかくの技術を持っていても、自信がないとそれは生かせないし、かといって過信になってしまっても、これもやっぱり生かせない。そんな「自信を持つことの大切さと難しさ」を知る体験談だったのではないでしょうか。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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