ITエンジニアコラム:きたみりゅうじのエンジニア転職百景

巻ノ八十九海外で仕事漬け生活1年半。金は貯まるが使う場なしで、早く日本に帰りたいよー

いちサラリーマンとして仕事をする以上、転勤や出向は避け得ないといって過言ではないのかもしれません。
今回のO浜さんは、社命によって海外の工場で働かざるを得なくなりました。一応「1年くらいで」という話だったのではありますが……。
「会社って残酷よね」なんてつぶやきたくなる、今回の体験談です。

日本にいる時が100とすると、30くらいの生活なのです

さて、冒頭のマンガでも触れた通り、「町まで車で1時間くらいかかる工場敷地内」で生活していたO浜さん。宿舎内に同年代の人はおらず、誰も彼も年長者ばかり。一番年が近い人でも14歳は年上という状況にありました。
そんな中にあって、O浜さんが自由に車を使えるはずもありません。というわけで、勢い彼の日常生活は、大きな制約の中に置かれることとなってしまっていたのでした。
「仕事の方もプログラム内容について相談できる人がおらず、つらかったですね」
上司との約束は「1年くらいで交代」という話でした。他2名の先輩たちと、1年ごとに海外勤務を交代する段取りで進めていくと説明を受けていたのです。
水も自由に使えない。買い物も自由にできない。電気だって、不意の停電に備えて安穏と過ごすなんてできやしない……。
日本にいた時の生活レベルを100としたら、はっきりいってここでの暮らしは30あるかどうかという状態でした。
日々O浜さんの鬱憤(うっぷん)は募る一方。とにかく「1年くらいで」という上司の言葉を信じて、時が過ぎるのを待つばかりです。
海外に出された半年後、「交代予定だったはずの先輩たち」が部署を異動していました。
「おかしい」
そう思いながらも、約束を信じてひたすら1年が過ぎるのを、彼は待ち続けたのでした。

そして1年が経ちました

「それで、いつごろ私は帰れそうですかね?」
O浜さんがそんな質問を上司に投げかけたのは、彼が海外勤務になってちょうど1年が過ぎたあたりのことでした。
「待ちに待ったワクワクDAYがすぐそこに!」「抑えきれないこの思い!」とO浜さんが思ったかどうかは定かではありませんが、多分そんな心情だったんじゃないかなーと想像するわけです。だって1年待ったわけですもん。長いですよ1年は。
ところが。
「は? そんな(日本に帰る)話なんて、今出てないよ」
……と、上司の方はにべもなし。そう、会社は最初からO浜さんを日本に戻すつもりなんてなかったのです。
O浜さんが退職を決意した瞬間でした。
「とにかく日本に帰って、1年くらいのんびりしようと思いました」
退職するにあたっては、日本での住まいを確保しなきゃいけません。O浜さんは日本にいる友人に頼み、まずは住居を確保したと言います。続いて退職願い。海外事業部の社長を筆頭に、直属の上司や現地で仲良くしていた人たちから引き留め交渉がわんさとありました。
でも、「ここに居てくれ」という時点でO浜さんの答えは「No」しか有り得ないのです……。
こうして再び日本に戻ることができたO浜さん。海外に出て1年半が過ぎていました。
「海外に居る間は、出張費として現地でもらっていた10万円で生活していて、日本の給料は口座に振り込まれたまま手つかずでした。なので、離職期間中はそれを生活費に充てて、毎日自堕落な昼夜逆転生活をしてました」
その後O浜さんは離職9カ月目あたりから転職活動を開始。前職での経験が「dBASEというDOS版のデータベースソフト」を使う開発がメインであったがために、プログラマとしての経験に見なしてもらえず苦労したそうです。6社受けて1社を除いてはすべてアウト。5カ月かけて唯一内定をくれた「2次請け3次請けのSE会社」に、彼は就職を決めました。
……そして時は経ち、O浜さんも気がつけば今で在籍11年。SEとしてのキャリアが積めたことに満足感を覚えているのだとか。
ただその一方で、「給料が安いんです」とも。
今度は給与面も少し重視して会社選びしようかなーと、うっすら転職への気持ちが芽生えはじめてもいるO浜さんなのでありました。

オチの一コマ
本日の一句

よほどその仕事自体が好きであれば別ですが、本来は仕事って「自分の生活を豊かにするため」に従事してよいもののはず。それが生活レベル下げーの、軟禁生活を余儀なくされーので、我慢してばっかの生活になるのなら本末転倒ですよね。なんのための仕事かという話ですよ。
退職時には「引き留め」の声がたくさんあったみたいですが、その中にO浜さん自身を思いやった声はいくつあったんでしょうか。それを思うと、薄ら寒いものを感じます。きたみアイコン

著者プロフィール

自画像きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。あまりになんでもありでほとほと疲れ果てたので、他社に転職。その会社も半年であっさりつぶれ、移籍先でウィンドウズのパッケージソフト開発に従事するという流浪生活を送る。本業のかたわらウェブ上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
遅筆ながらも自身のサイト上にて、4コマまんがは現在も連載中。
http://www.kitajirushi.jp/

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