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ドS美人面接官 vs モテたいエンジニア 転職十番勝負! @IT自分戦略研究所編集部×マイナビ転職

第2回 おじぎをしたら、物理的に落とされちゃいました

野望を胸に秘めて転職を志す、とあるエンジニア(28歳)がいる。

本命のX社の面接に落ちた彼が今回向かったのは、第2志望のY社。今度こそ、面接を突破することができるのか……。

あなたはナンパをしに来たんですか
それとも面接を受けに来たのかしら

(面接会場のドアの前で)あー、不安だなあ……。こないだは本当にひどい目に遭ったからなあ。でも今回は、会社のWebサイトをタッチパッドがすり減るくらい何度もスクロールして読み込んだし、見落としはないはず!

(コンコン)

どうぞ、お入りください。

(ガチャッ)……!(身を縮める)……よし、マサカリは飛んでこない……失礼しまえええっ!?

イラスト

どうなさいましたか?

あの、こないだお会いしましたよね……。X社で面接官をやっていた人ですよね? ええと、ここはY社ですよね……?

ナンパだとしたら、ずいぶんとレガシーなスキルしかお持ちでないのね。あなたはナンパをしに来たんですか? それとも面接を受けに?

あっいえいえいえ、すみません。人違いです……。うーん、そっくりなんだけどなあ……。

どうぞおかけください。

ああっはい、よろしくお願いします。(一礼する)

わ――――っ!!(床がぱかっと開き、椅子ごと床下の穴に落ちる)

(落とし穴の縁から顔だけのぞかせて)これで面接は終了です。お疲れさまでした。キチョハナカンシャは不要です。地下2階の通用門よりお帰りください。はい撤収ー。

※就活生が多用する「本日は貴重なお話をありがとうございました」という呪文

ユーザーエクスペリエンスの最適化を検討した結果
このような不採用通知になりました

ちょ、ちょっと待ってください! 今までたくさんの面接に落ちてきたけど、こういう意味で落とされたことなんて一度もないですよ! IT企業なのになんでこんなに物理なんですか!

(落とし穴の上から声のみ)経験の貧しさを面接の場で話すのは最大級の自殺行為だということを理解してないようね。「謙遜は美徳」というドメスティックな価値観を信仰するのは結構だけれど、面接や自己PRにおいては、悪手もいいところよ。

この仕掛けは、ユーザーエクスペリエンス(UX)の効果を最大化させた結果です。「落ちた」という事実を、言葉で聞くだけじゃなく、体でも実感できたでしょう? うっかりほかの人に話したくなるような、記憶に残る貴重なエクスペリエンスだったでしょう? それが「サービスの価値提供」というものよ。

ソフトウェアに携わる人々は、物理現象を軽く見過ぎています。大事なのは、不採用通知の体裁といったユーザーインターフェイス(UI)の改善ではなく、「自分は落ちた」というショックを鮮烈に豊かに体感できるUXの実現なのよ。

あの、普通にすごく痛くて悲しいだけなんですけど……って、うわあああ! 骨っ! 人骨が!!

それは演出用の小道具。弊社のデザイナーとコラボレーションして作り上げた力作よ。エンジニアとデザイナーが、お互いに歩み寄ってものづくりに励む弊社の姿勢、お分かりいただけたかしら。

だからなんで物理なんですか……。いや、というか、落とすのが早過ぎじゃないですか! 前回もそうだったけど!

前回って何のこと? レガシーな上におざなりなバージョン管理ね。

イラスト

ギギギ……(ガリガリと骨をかじる)

あっほら、アルパカもいるし! ……そ、それはそうと、ぼくのどこがいけなかったんですか!?

まるで進歩が見られないわね。相変わらず、コメントアウトで放置された未実装のメソッドに中途半端な名前で残された参照先のない変数並みに無用な人材だわ。

進歩がうんぬんとか、明らかに前回を踏まえてますよね?

あら、私はもう話をしなくてもいいのかな? 帰っちゃってもいいのかしら?

お、お願いします! お話を! 聞かせてください! あとこのアルパカを遠くに……!

あなたのあいさつには「相手への敬意」がないのよ
そんな自己中エンジニアに良いサービスが作れるのかしら

で、何を聞きたいのかしら。

納得いかないですよ! どこで失格になったのか具体的に教えてほしいです! 角度ですか? 角度がいけなかったんですか、おじぎの! 募集要項のどこかにおじぎの角度について明記されていたのに、見落としちゃったっていうことなんですか!?

目の付けどころが悪い上に、取り乱し方が凡庸で面白くないわ。どっちの面でも失格ね。

……角度じゃないんですか?

角度の問題じゃないし、そもそもあれはおじぎじゃない。

おじぎじゃない!?

あなたがおじぎをする前に、私が机の向こうで、素早くキャスター椅子を滑らせて横に移動したことに気付かなかったでしょう。あなたは誰もいない空間に向かって頭を下げていたのよ。

ここは当然、相手の位置が変わったのに合わせて自分の体の向きを変えるか、少なくとも頭は相手の方に向けるべきところ。あなたは「あいさつ」というプロトコルにおいて、存在しないポートにパケットを投げる愚行をしでかしたのよ。

イラスト

ああああ……。

「なんとなく形だけ押さえておけば、あいさつとして通用するだろう」という考え自体がダメね。現実を静的な変数の集合と見なして、パラメータを埋めるだけで満足しているようでは、弊社が求めるエンジニアとしての要件を満たしていません。

現実ハード過ぎる……。

現実は動的なプロセスなのよ。IT技術もユーザーの心も、刻一刻と変化するもの。マニュアルどおりに対応すればオーケーと思っているような人に、「エンジニア」と名乗ってほしくはないわね。「仕様書に書いてありませんでした」「その仕事は管轄外です」なーんて言い訳を、よもや現職で使っていないでしょうね、あなた。

ぎくぎくっ。

あなた、そもそも「あいさつ」の定義を考えたことがあるのかしら?

面接においてあいさつは最も重要なファクターの1つ。「これから面接というガチンコ勝負にて、正々堂々と戦うことを誓います」という意思表示、そして相手への敬意を示す行為です。

なのにあなたは「マニュアルどおりにしよう、失敗しないようにしよう、良い評価をもらおう」ということばかりに集中していて、まったく相手のことを考えていない。そんな自己中エンジニアが、ユーザーのことを考えて良いサービスを作れると思う?

うっ……。でもそれは前回の失敗があまりに強烈だったから……あーでもこれも言い訳ですねスミマセン……。

「普通のユーザー」「普通の会社」なんて言っているうちは
何の価値も提供できないしモテもしないわよ

ところで、考えてみたら、こんな落とし穴を作ってる時点で、普通の会社じゃないですよね?

「普通の会社」なんてものはないのよ。「普通の会社」「普通のユーザー」「普通のエンジニア」、そんなものは幻想の共同体です。

どの会社だって、それぞれユニークであるに決まってるでしょう。もちろん、あなたも「平均値」かもしれないけど「ユニーク」であることに変わりはない。

会社の個性、そして自分の特性を理解する。そして、お互いがどうマッチし、自分がどんな価値を発揮できるかをアピールする。それができないなんて、自動処理で名前のところだけ入れ替えるはずが、うっかりデータがなくて宛名が「null様」になっちゃってる一括送信のスパムメールぐらいに、無意味で失礼ね。

システムを作るときにも、そういう発想は表れてしまうものよ。「ユーザーなんてこんなものだろ」「これぐらいの機能なら分かるだろ」ってね。それじゃあ、モテるわけがないわね。相手をちゃんと見てないから、いつもフラれるのよ。

そういえば、以前もそんなことを言われた気が……。あーいろいろ思い出した―――!(頭を抱えてうずくまる)

あら、今のが急所に当たっちゃったの? そんなに簡単に心が折れちゃうんじゃ、つまようじを折ってるみたいで張り合いがないじゃない。

転職活動の話にかぶせてモテの話を一緒にされると、生命が脅かされるんでやめてほしいです……。

思考停止しているエンジニアなんてハニワも同然よ
転職活動とモテの本質を考えなさい

あなた、モテたいんでしょ?

……も、モテたいです。

ならば、お聞きなさい。相手と自分自身の個性を理解した上で、適切な自己アピールを行う。これが、転職活動とモテの本質よ。

すなわち、転職活動を成功させなければ、モテへの道は開かれない。そして、モテを理解できないうちは、あなたは転職活動に成功しない! この方程式を、しっかり長期記憶にたたき込んでおきなさい。どうせ、揮発性でしょうけど。

なんかすごい矛盾が……。それだとループを脱出する条件がないじゃないですか……。

両方を同時に実現すればいいだけじゃない。思考停止したエンジニアはハニワと一緒よ。問題を解決する能力こそがエンジニアの持つべき力。終了条件を見つけられないのは、きちんと現実を把握していないからよ。ムリゲーだと弱音を吐いて投げ出す前に、受け取った入力をちゃんと吟味しなさい。

練習として、まずはその部屋からの脱出経路を探してみるといいわ。エンジニアとしての修練をまっとうに積んでいれば、すぐに見つかるはずよ。じゃあ頑張ってね。(ギイーバタン)

(落とし戸が閉まる)

あっ、ちょっと待っ……!

(骨の山の中から、一筋の光が漏れる)

なんだろうこの光っているものは……ハニワ?

ボタンがある……(ハニワに付いているボタンを押すと、非常口のライトが点灯する)

あ、こっちですね、はい……。

――続く――

※企画・制作:@IT自分戦略研究所編集部
※イラスト:緑川葉(ad-manga.com)
※@IT Special の記事(2013年4月)に再編集を加えて掲載しています。
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