谷所健一郎
キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)/有限会社キャリアドメイン 代表取締役
更新日:2024年03月28日
監修者
キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)/有限会社キャリアドメイン 代表取締役
履歴書には、「通勤時間」の欄があることがあります。ここには、どこまで正確な通勤時間を記載すべきなのでしょうか? 「電車に乗る時間だけを書けば良いのだろうか」「正確な勤務地が分からないから、空欄のままでもOK?」と、疑問を持っている人もいるかもしれません。
実は、履歴書の「通勤時間」欄は採用担当者もしっかり確認する項目です。具体的にどこまで何を書くべきなのか、どういった点に注意すべきなのか、通勤時間が分からない・未定の場合にはどうする? 採用にはどのくらい影響するのか? など、確認ポイントや書き方のサンプルを交えて説明しています。
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まず最初に「通勤時間」とは何を指すのでしょう? どこまで正確に、あるいは具体的に書くべきか、定義や、押さえるべき書き方のポイントなどを見ていきましょう。
そもそも、履歴書における「通勤時間」欄には、何を書くべきなのでしょうか? 実は定義はしっかり決まっており、「自宅から会社までの通勤にかかる片道の所要時間」です。所要時間のすべてなので、公共交通機関に乗っている時間だけではなく、電車、バス、車、自転車から徒歩まで、自宅を出て、オフィスに到着するまでのすべての時間を含めましょう。
履歴書の通勤時間欄で採用担当者は「通勤時間が長過ぎないか」や「通勤距離が遠過ぎないか」といった応募者の通勤負担の考慮や、希望勤務地の確認を行います。会社によりますが、通勤時間によっては、住宅手当の支給や、社員寮・社宅への入居が認められることもあるため、通勤時間は正確に記入しておきましょう。
通勤時間の定義を理解したうえで、書き方のポイントを一つずつ見ていきましょう。
ドア・トゥ・ドアでかかる、片道の所要時間を書く
前述のとおり、履歴書に書く通勤時間は、通勤にかかる「片道の所要時間」です。自宅から最寄り駅までの徒歩時間、電車やバスに乗っている時間、駅から会社までの徒歩時間などすべてを含め、ドア・トゥ・ドアでかかる時間を記入します。
最も通勤時間が短い通勤経路を選ぶ
複数の通勤経路が考えられる場合には、最も通勤時間が短いものを選びます。
通勤時間は5分単位で、1時間未満の場合は「0時間」と書く
通勤時間は、なるべく正確に記載したいところですが、あまり細か過ぎても見づらいため、1分単位でなく5分単位で書くのが一般的です。1分単位の数字は四捨五入しましょう。また、履歴書の通勤時間欄に「 時間 分」と印字されていて、通勤時間が1時間未満の場合は「0時間」と記入します。時間部分が書き忘れでないことを示すためです。
【例】
また、会社によっては通勤交通費が安い経路を基に通勤手当を支払うこともあるので、通勤時間の短さだけではなく、交通費の金額的にも適切だと思われる経路の通勤時間を記入しておくと良いでしょう。通常特急料金は支払われませんので、特急を利用しない通勤経路での時間を記載してください。
交通手段について明記すると、より丁寧な印象に
電車、バスなど交通手段までしっかり書くことで、丁寧な印象を与えることができます。通勤時間欄の空いているスペースに、以下のように補足すると良いでしょう。
▼通勤時間 記入例
約 0時間45分(バス・電車)
「マイカー通勤・バイク通勤OK」の会社など、自家用車、バイクや自転車での通勤が認められていて、自身も希望するのであれば、「○○分(車通勤の場合)」などの補足情報も書きましょう。
転職先がフルリモートの業務になることが分かっている場合でも、通勤時間を空欄のままにしておくことは避けましょう。上記のポイントを押さえて通勤時間を書くか、「―(横棒)」を書くなどして埋めたうえで、「フルリモートでの勤務につき、形式上書いています」といったただし書きを添えることをおすすめします。
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履歴書の「通勤時間」欄には、なるべく正確な時間を記載するのが良い、と前述しました。ただし、勤務地が複数ある会社への応募の場合や、自分自身に引っ越しの予定がある場合など、通勤時間が分からない、あるいは未定、ということもあり得ますよね。そういった場合には、以下を参考に書いてみてください。
希望する勤務地が自宅から離れていて、転職が決まったら引っ越そうと考えている場合や、近々転居する予定があり、「通勤時間が分からない」という場合には、無理に「通勤時間」欄に時間を書く必要はありません。ただし、「通勤時間」欄を空欄にしておくことは避けましょう。
「近々転居する予定がある」といった旨を記入します。もし、通勤時間欄に書ききれない場合は、本人希望欄などを利用して伝えましょう。
▼通勤時間 記入例
履歴書の通勤時間欄に、「 時間 分」と最初から印刷されている場合は、「 ― 時間 ― 分」と横線を引いておくようにします。書き忘れではないことを伝えるためです。
また、引っ越し先がすでに確定している場合には、新住所からの通勤時間とともに「新住所(転居予定○年〇月〇日)からの通勤時間」と記載しておくといいでしょう。
勤務地が複数あったり、求人情報には「XXエリア」としか記載がないなど、「応募前の段階では具体的な勤務地が分からない」ということもあり得ます。そういった場合には、希望する勤務地への通勤時間を書きましょう。通勤時間を書く時は、「○○分(××営業所に通勤する場合)」など、どの勤務地までの通勤かが分かるように補足します。配属先が未定の場合も、希望勤務地までの通勤時間を書いて問題ありません。
履歴書になるべく正確な通勤時間を記載するために、以下のようなサービスを活用しましょう。
通勤の交通手段が公共機関のみの場合には、インターネットやスマートフォンのアプリで使うことのできる乗換案内サービスを利用すると良いでしょう。
1日の中でも運行本数や乗換にかかる時間などが異なるため、実際に通勤する時間帯の設定で、経路検索を行うのがポイントです。これにより、実際の通勤時間になるべく近い時間を割り出すことができます。始業時間がすでに分かっている場合には、始業開始に間に合う到着時刻を設定し、調べることをおすすめします。
またその際、自宅から最寄駅、会社の最寄駅から会社までの徒歩時間を含めることも、お忘れなく。
複数の交通手段を組み合わせて使う場合や、徒歩の時間も長め、といった場合におすすめなのが、地図検索サービスです。こちらもインターネットやスマートフォンのアプリで提供されていて、「経路検索」の機能を使えば、自宅から会社までドア・トゥ・ドアでかかる時間を簡単に算出してくれます。電車やバス、車や徒歩など、複数の交通手段の組み合わせを選んで検索することも可能です。検索結果の中から最短のルートを選ぶようにしてください。
乗換案内サービスと同様に、実際に通勤する時間帯を想定して検索しましょう。
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採用担当者は書類選考時、履歴書の通勤時間を確認する際に、何を重要視するのでしょうか? 以下3つのポイントにまとめてみました。
企業によって考え方は異なりますが、基本的に毎日通勤になる企業などでは、通勤時間があまりにも長いと「通勤自体が体力的な負担になるのではないか」「業務にも支障が出ることがあるのでは」「交通費支払上限額を超えて負担になるのでは」といった懸念が生まれることもあるようです。
一般的な企業では、「通勤時間90分以内」が通勤圏内だと言われています。これを超える場合には、「通勤時間が長過ぎる」「遠過ぎる」という印象を抱かれ、選考の際に転居やテレワーク、リモートワークによる仕事が可能かどうか確認をされることがあります。
もし、「通勤時間の長さが不利にならないか」と不安に思うのであれば、履歴書に記入する時点で、それらを払しょくするアピールを行いましょう。
履歴書の本人希望記入欄に「現職でも同程度の通勤時間ですが、業務に支障が出たことはありません」と記入するなど、応募企業が懸念する可能性のある点に、事前に言及するようにします。また「持っているスキル・経験で事業に貢献できること」など、別の角度からアピールすることに注力しましょう。
通勤交通費は、一般的に会社が全額、あるいは一部を負担します。よって、採用担当者は履歴書の「通勤時間」欄から交通費を推測し、「交通費が高額になり過ぎないか」という点も確認しています。企業にとって、社員の交通費は毎月の必要コストですので、これは当然と言えるでしょう。極端に通勤交通費が高額の場合には、選考に影響する可能性があることを、理解しておきましょう。
参考までに、通勤交通費の企業負担は1カ月の上限額の平均は3万円程度と言われています。
上記のように、企業の採用担当者は、一定の基準をもって履歴書に記載の通勤時間を確認します。では実際、通勤時間はどの程度採否に影響するのでしょうか?
「90分以内の通勤時間」の枠を越えると遠過ぎると思われるかもしれない、交通費が高額過ぎると選考に影響する可能性がある、などと書きましたが、実際には通勤時間だけで採否が決まるようなことはありません。あまりナーバスになり過ぎず、正直に正確な通勤時間を記載してください。
採用の判断要素として通勤時間よりはるかに重要なのは、言うまでもなくスキルや経験、会社に貢献できる人材かどうか、という点です。自分のスキル・経験、責任を持って業務に臨む姿勢などをしっかりアピールすることに集中しましょう。
通勤時間については、万が一、ほかの応募者があなたと同等のスキルや経験を持っていて、採用担当者が2人を比較した場合に検討事項に上がる可能性がある、というくらいの心構えで良いでしょう。ただし転居が難しく毎日長時間通勤しなければいけない状況は、健康状態などに影響を及ぼす可能性があるので、自分でも毎日通勤できるか検討する必要があります。
昨今、さまざまな企業で一部テレワークを推奨していたり、フルリモートで働く職種が増えたりしています。上記で書いた「90分を超える通勤時間は長過ぎと懸念される可能性がある」「交通費の企業負担上限額は、1カ月3万円程度」といった内容は、あくまで毎日出勤する企業の場合。
テレワークやリモートワークを推進している企業の場合には、そもそも通勤時間が選考にほとんど影響しないケースも増えてきているようです。求人情報を見る際、通勤の頻度やワークスタイルなどについても読み込み、参考にしてください。
履歴書に記載する通勤時間について、その定義から書き方、採用担当者目線での確認ポイントなどを紹介してきました。履歴書における「通勤時間」欄の記入スペースは小さめですし、「重要ではない」「空欄のままでいいか」と思っていた人もいるかもしれません。
しかし小さくても、採用担当者がしっかりと確認する項目です。正確かつ具体的に記入することで、丁寧な印象を与えることにもつながります。本記事を参考に、きちんと記載するようにしてくださいね。
有限会社キャリアドメイン 代表取締役 キャリア・デベロップメント・アドバイザー(CDA)。1万人以上の面接と人事に携わった経験から、執筆、講演活動にて就職・転職支援を行う。ヤドケン転職塾 、キャリアドメインマリッジを経営。主な著書「はじめての転職ガイド 必ず成功する転職」(マイナビ出版)、「転職者のための職務経歴書・履歴書・添え状の書き方」(マイナビ出版)、「転職者のための面接回答例(マイナビ出版)」、「転職者のための自己分析」(マイナビ出版) ほか多数。
マイナビ転職 編集部
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履歴書の項目・欄ごとの詳しい書き方は、こちらをチェック。
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