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第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる

Vol.5演出家 宮本亜門
もがきながらも、前へ

Heroes File Vol.5
掲載日:2009/7/17

宮本亜門さんの写真1

1987年、オリジナルミュージカル「アイ・ガット・マーマン」で演出家としてデビューして以来、第一線で活躍を続ける宮本亜門さん。苦労を感じさせない物腰のせいか、順風満帆に歩んできたと思われがちだが決してそうではない。何度も挫折を繰り返しながら、ただひたすら夢への熱い思いを糧にして前に進んできた人だ。

Profile

みやもと・あもん 1958年東京都生まれ。ダンサー、振付師を経て87年にオリジナルミュージカル「アイ・ガット・マーマン」で演出家デビューし、「昭和63年度文化庁芸術祭賞」を受賞。2004年ニューヨークのオンブロードウェーにて「太平洋序曲」の演出を手がけ、トニー賞4部門にノミネート。7月5日からミュージカル「サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ」を東京・渋谷のパルコ劇場(TEL03-3477-5858/ホームページ http://www.parco-play.com)で上演中。

演出家になりたい一心でもがき続けた20代

ほほ笑みをたたえた目がクルクルと動く。リズミカルにテンポよく、しかも楽しそうに話す。気づいたらすっかり引き込まれていた。日本を代表する舞台演出家として、次々に話題作を手がける宮本亜門さんだ。

演出家を志したのは高校時代。新橋演舞場の前にある喫茶店が実家で、母親は元SKD(松竹歌劇団)。育った環境が普通ではなかったせいか、学校の友人とはなじめず、約1年半自室に引きこもった。
「部屋を真っ暗にし、ミュージカル、クラシック、井上陽水さんの曲など、20枚ほどのレコードを何度も繰り返し聴いて過ごしました。するといろんなイメージが自分の中で炸裂(さくれつ)した。音楽を聴いて広がるこの世界観を視覚化して人に伝えたい、と思うようになりました」

社会で生きていけない人間なのではないかと、いつも心のどこかで自分を責めていた。しかし、音楽に身をゆだねて体を揺らしている瞬間だけは違った。「すごく自分を感じられた」。これだと思った。

演出家になると決めて復学し、大学へ進む。オーディションを受け、端役をもらうことからスタートした。「自分のけいこが終ってもその場に残り、演出家は何をするのか、どんなことを役者に言うのかを見て学ばせてもらいました」

21歳で母親が亡くなった。生前の「ブロードウェーは観(み)ておきなさい」という言葉が背中を押した。六本木のショーパブで深夜、女の子たちにダンスを教えるアルバイトをし、お金をためてはニューヨークへ何度も行った。現地ではダンスレッスンを受け、当然ブロードウェーにも足しげく通った。
「行く度に感動でした。こういう世界があるのだ、こういう生き方があるのだと」

友人の一言で奮い立ち実現したミュージカル初演出

宮本亜門さんの写真2

振付師として仕事が入るようになるが、並行して始めたジャズダンススタジオは経営に追われる始末。「このままでは一生演出家になれない」という焦りがあり、大学を中退してロンドンへ。本場の舞台を観たり、ダンスレッスンをして1年半ほど過ごす。ところがある朝、驚いた。号泣している自分がいたのだ。「結局、何も変わっていない。ロンドンに逃げていただけだ」

帰国し、舞台の企画書を書きまくり、あちこちに持ち込んだ。しかし反応は冷ややかで、どこも取り合ってくれない。友人に愚痴ったら「『あなたはこれまで何も演出したことがない。認めてもらえないのは当たり前。認めてほしいなら何か作ってみなさいよ』としかられたんです」。言われた通りで、自分で作ればいいのだと気づいた。

それで実現したのが「アイ・ガット・マーマン」だ。会場の手配、出演者の交渉、チラシ、DMのあて名書きなどすべて自分で行った。3日間の公演予定で初日は150人の会場が半分埋まる程度だったが、徐々に増え、再演が決まり、結局半年続いた。しかも翌年には「文化庁芸術祭賞」を受賞。とはいえ、これで成功というわけではなかった。紆余(うよ)曲折、七転八倒の人生はその後も続く。それでも演出家を辞めようとは思わなかった。
「それは、人間が人間を表現しようとする世界だから。僕にとってこれほど毎日悩み、毎日興奮できることが他になかったんです」

自分軸にこだわり作品を創(つく)り続ける

宮本さんの作品には、核心から目を背けず、人間の本質を描くものが多い。現在上演中の「サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ」もその一つ。作詞作曲のスティーヴン・ソンドハイム氏は、宮本さん初のオンブロードウェー作品「太平洋序曲」を手がけた人でもある。「彼は、単に楽しい、面白いだけのエンターテインメントではなく、現実が抱えているものを踏まえた上で愛情豊かな作品に仕上げる。そこが好きですね」

作品に対しても、自身の生き方に対しても「自分は何を大切にしたいのか」という自分軸を持っていたいという宮本さん。その思いは年々強まっている。そんなふうに考えるようになったのは沖縄へ移住してからだ。30代に入ってから宮本さんの作品や行動に批判が続き、スタッフやキャストまでも傷つけている気がして耐えられなくなった時期があった。そして39歳の時だった。「いったん、人生の流れにしっかりとブレーキをかけたくて、休業し沖縄へ行きました。そこで風を感じたり、沖縄の人たちと触れ合う中で、ここでは人が人として生きているし、僕をリセットしてくれる場所だと感じることができたんです」

沖縄で暮らすようになり、自身の内面にもさまざまな変化が起きた。一番大きいのは「僕はそうは思わない。こう思う」と意見が言えるようになったこと。「それまでは引きこもっていた頃の自分がまだくすぶっていて、批判されるのをどこかで恐れていた。だから自分の思いをちゃんと伝えようとしなかった。その部分が沖縄に来たことによって解き放たれました」

沖縄に根を生やすことで芯がぶれなくなり、自信が持てるようになった。ブロードウェーもあこがれではなく、現実として受け止め、挑戦できた。「理想主義と言われてもいい。『人間って何かを一緒に考えようよ』という本質に向かっていくような作品づくりを続けたい。自分の主張を持ってね」

途中であきらめず徹底してテーマに挑む

宮本亜門さんの写真3

人間とは何ぞや。生きるとは? そこにこだわるのは2001年9月、アメリカ滞在中に同時多発テロを経験したのも大きい。精神的ダメージがあまりに大きく、気分を切り替えるためにタイを訪れたものの、その日に交通事故に遭い、生死をさまよった。「こうした一つひとつの経験が今の僕の考え方、生き方につながっていると思う」

作品は、そんな思いをどう表現するかという場。だからこそ宮本さんは何度も作品と向き合い、演出を考える。
「もうこれ以上アイデアはないと思う。でも大丈夫、焦らなくてもまだ出てくるよと自分に言い聞かせるんです。すると自然に新しいアイデアがまた浮かんでくる。そうやってベストな演出を追求していきます」

紆余曲折の人生の中で自身の弱さを知り尽くした。つらい時は不安や恐怖におののき、落ち込み、逃げたことも。しかし、そんな自分を受けとめたからこそ、今の宮本さんにはしなやかな強さがある。内面からわき出てくる人間の喜怒哀楽をおざなりにせず受けとめる優しさも備えている。だからこそ、宮本作品は人の心の奥深くにしっかりと響く。

ヒーローへの3つの質問

宮本亜門さんの写真4

現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?

人を喜ばせるのが好きなので、サービス業だと思います。ただ、来世でやってみたいのは指揮者。教会の司祭のように、音のハーモニーを指揮する感じを味わってみたいですね。

人生に影響を与えた本は何ですか?

ヘルマン・ヘッセの『シッダールタ』。中学生の頃に読みました。生きていく上でのテーマをいろいろ教えられた気がします。

あなたの「勝負●●」は何ですか?

語呂が悪いけれど、母ですね。僕が21歳の時に亡くなってから、ずっと見守られている意識があり、舞台や何かある時には必ず見上げて「行ってくるよ」などとあいさつをする。それがもう習慣になってしまっています。

Infomation

宮本亜門さん演出のミュージカル、只今上演中
「サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ~日曜日にジョージと公園で~」

「太平洋序曲」「スウィーニー・トッド」のスティーヴン・ソンドハイムが作曲作詞、ジェームス・ラパインが台本を書き、ピュ-リッツァー賞を受賞したミュージカル「サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ」。ソンドハイムからも絶大な信頼を得ている宮本亜門さんが演出を手がけるこの夏の話題作です。キャストに石丸幹二、戸田恵子ら実力派を揃え、19世紀末、「点描」という手法で独自の芸術を創り上げたジョルジュ・スーラと彼をとりまくさまざまな人々の人生を描く、珠玉のミュージカルです。

「サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ~日曜日にジョージと公園で~」
作曲・作詞/スティーヴン・ソンドハイム
台本/ジェームス・ラパイン
演出/宮本亜門
キャスト/石丸幹二、戸田恵子、諏訪マリー、山路和弘、春風ひとみ、畠中洋、野仲イサオ、花山佳子、鈴木蘭々 他
公演期間/2009年7月5日(日)~8月9日(日)
会場/パルコ劇場 (東京都渋谷区)
問い合わせ先/パルコ劇場 TEL03-3477-5858
www.parco-play.com

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