第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる
Vol.48シンガー・ソングライター 清水翔太
音楽がすべてだった
Heroes File Vol.48
掲載日:2011/4/1
デビュー前の2007年秋、18歳でニューヨークの音楽の殿堂「アポロシアター」に出演し絶賛された実力派、清水翔太さん。彼が若くして才能を開花させたのは、天性の歌声のみならず幼い頃から歌手になることだけを目標に、たゆまぬ努力を重ねてきたからこそ。その活躍の裏側をじっくりうかがった。
Profile
しみず・しょうた 1989年大阪府生まれ。2008年にシングル曲「HOME」でメジャーデビュー。この曲は10代の男性シンガー・ソングライターとして史上初のオリコン初登場5位を記録し、話題となる。今年3月9日にサードアルバム「COLORS」をリリース。全国コンサートツアーも予定している。
人生をかけて歌手を目指した
まだ、あどけない少年のよう。だが、その容姿からは想像できないほど清水翔太さんの歌には魂がある。透明感と情感のあふれる歌声は、年齢や性別関係なく聴く者をとりこにする。事実、ニューヨークのブラックミュージックの殿堂「アポロシアター」でも喝采を浴び、「100万人に一人のソウルシンガー」と絶賛された。
幼い頃から母が営むカラオケ店で歌っていた。「決して音楽が流れている家庭環境ではなかった」が、気づけば四六時中歌い、歌手になることしか考えていなかった。
「子ども心に、歌手になる準備としてすぐにできることは何かを考え、小学生の頃から作詞を始め毎日書いていました。12歳の時には、歌がもっとうまくなるためには洋楽をたくさん聴く必要があると思い、小遣いを全部使ってCDを買いまくり、聴いていました」
この頃、偶然手にした黒人グループのソウルミュージックに魅せられたのが今の原点だという。また、スクールに通ってゴスペルも習い、歌唱力を磨いた。カラオケで練習する際は必ず録音し、後で何度も聴き返して「聴いて心地良い歌声」を追求し続けた。
曲作りは17歳ごろから。それまでは洋楽一辺倒だったが、日本の歌手は何を歌にしているのかが知りたくてJポップや日本のR&B、ヒップホップ、さらには昔の歌謡曲や演歌なども聴き続けたという。
「シンガー・ソングライターになることに人生をかけていましたね。そのためにできることを片っ端から実践し、他のことは一切と言っていいほどしませんでした」
等身大の自分をつづったデビュー曲のヒットと壁
その後オーディションに合格し、家族や出身地への思いをつづったデビュー曲「HOME」が大ヒット。一躍世に知られる。相次いで発表したシングルやアルバムも好調に売れ、着実にシンガー・ソングライターとしての基盤を築いていく。すべてが順調に見える清水さんだが、実際には精神的につらい時期もあったという。
「2枚目のアルバムを制作していた頃は息苦しかった。デビュー曲や最初のアルバムがヒットしたので、次作も僕のイメージに合った、期待に応えるものを作らなきゃと気負い過ぎてしまって」
評価が高いほど新しいことはやりづらくなる。「HOME」のヒットは心からうれしかったものの「その後の活動においては大きな壁と感じることも。まあ、でもそれは当たり前のことだと後で気づくのですが」
当時は、人に心を開くのに時間がかかる性格というのもあり、スタッフとの意思の疎通がうまくいかないこともあった。
自然な気持ちで表現した新アルバム
「意見を言わないでいると制作上の誤解も生じてくる。それではダメだと気づかせてくれたのがライブ活動でした」
昨年は全国各地でライブを行った。どこの会場でも、聴いてくれる人たちの温かさを直接感じることができた。
「僕を信頼し、曲を愛してくれているのがひしひし伝わってきました。ああ僕がすべきことは、この人たちにより良い音楽を届けることなんだと心底思えました」。自分を支えてくれるレコード会社やスタッフの存在も大切だけれど、それ以上に自分がまず目と心を向けるべきは音楽を聴いてくれる人たち。それに気づいてからは「いい音楽を作るためにはスタッフに自分の考えを伝える必要があると分かり、口に出して何でも言うようになりました」。
スタッフと意見を言い合い、変に気負ったりせずに生み出したのが3作目となるアルバム「COLORS」だ。
「今まで僕の中にしまっておいた様々なカラーを使って制作しています。例えば音に関しても完璧な仕上がりだけを追求するのではなく、デモ音源独特の粗削りなかっこ良さも残すようにしたり。新境地というより、直球勝負であらゆる自分を出してしまった感じ。それだけにこんな面もあったのかと受け入れてもらえるとうれしいのですが」と不安を漏らしながらも表情は明るい。納得のいく仕上がりであることが伝わってくる。
苦しい時思い出すアポロシアターでの言葉
清水さんはもともと完璧主義だったという。ゆえに、何か一つ失敗するとすべてが嫌になってしまうことも多かったそう。「そこでめげずに何とか踏ん張って頑張ろうと気持ちを切り替えることができるようになったのは、ニューヨークのアポロシアターのお陰です」
そのステージに立ったのは18歳、デビュー前である。さすがに緊張してナーバスになり、「日本へ帰りたい」と心の中で叫んでいたという。
「そんな僕にアポロシアターのスタッフが『ルーサー・ヴァンドロスだってジェームス・ブラウンだって、最初から拍手をもらえたわけじゃない。このステージで何度もブーイングを受けて退場させられた。それでもステージに立ち続けたから、あんな素晴らしいシンガーになれたんだ』と話してくれたんです」
今でもくじけそうになるとこの言葉を思い出す。それでもステージの前など、緊張が止まらない時は「『神様、お願い!』と手を合わせます(笑)」。
天才肌の歌唱力と、みずみずしい感性。そして自分の弱さも知っている。だからこそ、この人は強い。
ヒーローへの3つの質問
現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?
歌手以外の仕事が浮かばないのですが、アルバイトはやりたいですね。特に経験してみたいのが居酒屋。「いらっしゃい!」「○○一丁!」といった掛け声を威勢よく叫んでみたい(笑)。あと、アルバイト仲間同士仲良くなるとか、そういうのに憧れます。
人生に影響を与えた本は何ですか?
手塚治虫さんの「ブラック・ジャック」。確か小学校の図書館に揃っていて読み始めたのがきっかけで、何度も読んでいます。人として憧れるし、見習いたいことがたくさんつまったマンガです。
あなたの「勝負●●」は何ですか?
「神様にお願い」です。ライブが始まる直前など、すごく緊張する時、勝負だなと思う時は素直に神様にお願いします。気持ちと体をほぐすため、ストレッチをしたりもします。
Infomation
3月9日リリース
清水翔太 サードアルバム「COLORS」
「本来の清水翔太らしさを、変に気負わず自然に表現したいと思って制作しました」と清水さん。今までにない「カラー」で描けたという3作目のアルバム「COLORS」が発売中。シングル「GOODBYE」「君が暮らす街」「YOU&I」「Summer Time(配信限定)」の他、リードカバー曲として尾崎豊さんの「Forget-me-not」も収録。本作を引っ提げての全国ツアーも開催予定。
「COLORS」
価格/初回生産限定盤 ¥3,600(税込)
通常盤 ¥3,059(税込)
発売元/ソニー・ミュージック