第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる
Vol.53歌手 西野カナ
友人の厳しい言葉こそ支え
Heroes File Vol.53
掲載日:2011/6/17
各音楽配信サービスのチャートでは全シングルが上位にランクイン。その類まれなる歌声とリアルな歌詞が若い女性はもちろん、幅広い層から支持を集めている西野カナさん。今春、大学も卒業した彼女に、仕事そして歌への想いをうかがった。
Profile
にしの・かな 1989年三重県生まれ。2008年にメジャーデビュー。今年5月18日発売の14枚目のシングル「Esperanza」に続き、6月22日にサードアルバム「Thank you, Love」をリリース予定。7月29日からは初の全国ホールツアーを、9月8日には日本武道館での公演を予定している。
母の言葉に背中を押されて
「奇跡のガーリーヴォイス」と称される。その透き通った歌声と、飾ることなく赤裸々に心情をつづった歌詞が魅力の西野カナさん。キュートなルックスと、時折飛び出す三重弁もチャームポイントだ。
幼い頃から歌が好きで、漠然と歌手になりたいと思っていたが、「高校生になって将来を考え始めた時、このまま夢を追い続けていいのか、相当悩みました」。そんな彼女の背中を押したのは母親のひと言だった。「『人生一回やし、やりたいことをやりなさい』と。さりげない励ましですが、その言葉があったから今の私があるんだと思います」
メジャーデビューは2008年。ほぼ同じタイミングで大学生活も始まった。入学したのは名古屋の大学。
「歌手活動も大学も私にとっては大切なチャンスだと思ったので、両方頑張ろうと思ったんですね。やってみないと分からないこともあるだろうし。でも実際は想像以上にハードで、とにかく時間がないのがつらかった。仕事でも学業でも、やるべきことが尋常ではないほど盛りだくさんなのに、1日は24時間しかないので」
特に大変だったのは東京と名古屋間の移動だった。授業後、新幹線に飛び乗って東京で夜遅くまで仕事をし、翌朝の始発で名古屋に戻って1限目から授業に出て、授業が終わるとまた新幹線に乗って……。
「新幹線が、東京か名古屋か、どちらへ向かっているのかさえ分からなくなったこともありました。一番しんどかったのは4年生の年末。卒業論文の締め切りと試験、それに仕事のピークが重なった時は大変でした」
支えてくれた友達に感謝
そんな彼女を精神的に支えてくれたのは友達だった。
「あまりに忙しかった時、地元の友達に『無理してでも頑張ってほしい』と言われたんです。ふつう『無理しないで』と励ますじゃないですか。だから驚いたのですが、それぐらい応援しているよという気持ちが伝わってきたので、すごくうれしかった。どんなに大変でも頑張ろうと思いました。何よりどちらも好きだし、自分で選んだことだから」
基本的には小さな失敗も気にして落ち込むタイプ。でも「この失敗はしてよかったんだ」と最近は思うようにしている。「ひとしきり大泣きしたら開き直る。結局、悩んでいても時間は過ぎていくし、後で考えたらどうでもいいことだったりするものだから」
そんな風にいろいろなことを乗り越えるすべは、歌手と学業を両立させる中で習得してきたものなのだろう。
自分をさらけ出して書いた曲でブレーク
2011年春、大学を卒業した西野カナさん。
「大学へ行ってよかった。自分も成長できたと思うし、大切な友達もたくさんできたし」。そんな彼女の14枚目となるシングル「Esperanza」の2曲目「Thinking of you」には、大学時代の友達へのメッセージソングが収録されている。「忘れないよ どこにいても」というフレーズが温かく響き、大学生活がいかに充実していたかがその歌からも伝わってくる。
西野さんはほとんどの曲の歌詞を自身で書いている。リアルな恋愛観や友人への思いを描いたものが多いが、自分を素直に表現できるようになったのは、ヒットシングル「遠くても feat. WISE」からなのだという。
「それまでは自分が何を書けばいいのか正直分からなかったのですが、この曲では自分を成長させてくれた恋愛のことを思い切ってさらけ出したんです。結果的に多くの方に聴いていただくことができ、記念すべき一曲になりました」
メロディーを受け取ると、聴きながら頭の中でイメージ画や映像を想(おも)い浮かべる。それに具体的なタイトルをつけ、自身の気持ちや体験と重ね合わせながら言葉を連ねていく。それが西野さんの詞の作り方。その時湧き上がった感情をそのまま表現するからこそ、多くの人の心に染み込んでいくのだろう。
「私の歌を聴いて元気になったとか言われるとめちゃくちゃうれしい。そういう言葉が『歌手になってよかった』と思わせてくれて、私の原動力になっています」
感謝の気持ちを込め2011年夏は全国ツアーへ
2010年には初めて「NHK紅白歌合戦」への出場を果たした。
「私も昔から見ているし、誰もが知っている紅白の舞台に自分が立てるなんて信じられなかった。家族はもちろん地元の人や友達、ファンの方々など、多くの方がまるで自分のことのように喜んでくれたので、とにかくすごいことなんだと思いました」
この6月にはサードアルバム「Thank you, Love」をリリース。アルバムには毎回様々な形の「愛」を表現した曲を盛り込んでいるが、今回は特に、ポジティブさと友達や周囲の人への感謝の気持ちを込めたという。さらに今夏は、全国ホールツアーと日本武道館でのライブも決定。着実にフィールドを広げている。
そんな、歌手としての深みを増していく彼女に、これからの目標を聞くと「いろんな人の思い出のシーンに西野カナの曲がある、そんなアーティストになっていけたらいいなと思っています」。はにかみながらもキラキラと目を輝かせた。
ヒーローへの3つの質問
現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?
自由業、かな(笑)。型にはまった仕事はできない気がします。
人生に影響を与えた本は何ですか?
ケイト・ショパンの「目覚め」。大学時代に読んだのですが、人間にとって真の幸せのあり方って何だろうということを考えさせられた1冊でした。
あなたの「勝負●●」は何ですか?
香水。匂いフェチで、日によってさまざまな香りを楽しんでいます。いざという時は「この香りをつければ、頑張れる」という香水を選び、テンションを高めたりしています。
Infomation
2011年6月22日リリース!
西野カナさん サードアルバム「Thank you, Love」
2010年、ソロ女性アーティストNo.1のロングヒットを記録したセカンドアルバム「to LOVE」から1年。待望のサードアルバムは、ヒット曲「Distance」「君って」をはじめとしたラブソングや、友だちや家族への感謝を綴った曲を多数収録。「最初から最後まで通して聴いてもらうと、いい味わいが出ると思います。大事な人を思い出したり、大切な人と一緒に聴いてもらえたら嬉しいです」(西野カナさん)
「Thank you, Love」
価格/初回生産限定盤 ¥3,500(税込)
初回仕様限定盤 ¥3,059(税込)
発売元/エスエムイーレコーズ