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第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる

Vol.72作家 平野啓一郎
人生懸けて書いた手紙

Heroes File Vol.72
掲載日:2012/3/30

平野啓一郎さんの写真1

1998年に小説「日蝕」でデビューし、第120回芥川賞を史上最年少で受賞。以来、重厚な長編小説や実験的な短編小説など、多彩な作品を発表し続ける作家・平野啓一郎さん。近年、作風に一段と広がりを見せる平野さんの創作の原点、また30代に入り小説を書くうえで変化してきたことなどについて伺った。

Profile

ひらの・けいいちろう 京都大学法学部卒業。大学在学中の1998年に発表した『日蝕』で第120回芥川賞を受賞。主な著書に『葬送』『決壊』『ドーン』『かたちだけの愛』など。2012年5月31日(木)から新国立劇場で上演予定の「サロメ」(オスカー・ワイルド作、宮本亜門演出)で翻訳を担当。この戯曲は4月12日(木)に光文社古典新訳文庫から刊行予定となっている。

純粋ゆえの残酷さをあぶり出す新訳「サロメ」

平野啓一郎さんは2012年初めて戯曲の翻訳に挑戦した。5月に上演されるオスカー・ワイルドの『サロメ』だ。これまでの官能的なサロメのイメージを払拭(ふっしょく)し、彼女の無邪気さと残酷さに焦点を当て、それゆえのサロメの悲劇性をくっきりと浮かび上がらせた。
「純粋な人間に潜む恐ろしい心、あるいは社会そのものの残酷さ。これらは現代社会の鬱屈(うっくつ)に大いに通じるところ。そこを意識しつつ、ワイルドが表現したかったものをできるだけ壊さないように翻訳の作業を進めました」

周囲との違和感が創作の原点

平野啓一郎さんの写真2

デビューして13年になる。
文学に目覚めたのは中学生の時。きっかけは三島由紀夫の『金閣寺』だった。
「当時、自分は周りと何かが強烈に違う、そんな違和感がありました。友達とは仲は良かったけれど、常に満たされないものを感じていた。彼らが楽しんでいることを全然楽しめない自分がいる。そんな中、唯一共感できたのが文学の世界。自分の考えと同じ人たちが歴史上にはこんなに存在するんだという発見もあり、どんどんのめり込んでいきました」
だが、その頃は周りとのギャップを何とか埋めようとしていたという。「みんなが面白いと思うものに同調できた方が楽しいしラクそうな気がして。法学部を選んだのも社会に順応して生きていけるような自分になるためでした」
しかし大学2年生の頃から、やはり文学への愛情が捨てきれず、「作家になりたい」と強く思うようになる。当時は芸術至上主義にかなり傾倒しており、生活と創作は全然別ものとして捉えていた。「だからアルバイトでもしながら、小説を書き続けていければいいかなと思っていましたね」
とはいえ、自称作家はどうも恥ずかしい。誰かに認めてもらいたいという一心で、文芸誌『新潮』の編集長に小説「日蝕」を送った。新人の登竜門と言われる文学賞にあえて応募しなかったのは、「今思えば青臭い考え方ですが、賞などとは一切無関係の作家に憧れていたから」だった。
「いきなり送っても読んでもらえないと思い、事前に自身の文学観や思いをつづった手紙を出しました。手紙にも文才は出る。たった一人を魅了できなかったら、何万人もの心を打つような小説家になどなれないと思い、自分の人生全てを懸けて書きました」
その思いが通じ、「日蝕」は『新潮』の巻頭を飾る。無名の新人としては極めて異例なこと。しかも翌年には芥川賞受賞という快挙を成し遂げるのだった。

異なる作風の核にある「人の生死」

作品ごとに表情がガラリと変わる。設定や文体に、一つとして同じものがない。そこが平野さんの作品の大きな魅力だ。「それでも自分の興味の核にあるのは『人の生死』ということ。それは変わらない。自分が本気で没頭できるものしか書かないというのも一貫しています」
デビュー当時と違うのは作家としての姿勢。その頃は読者のことなど考えず、ひたすら自分の書きたいことだけに執着し、集中していた。
「そこである程度、自分なりの手応えをつかみ、自分に『できること』を探る時期を経て、今は作家として『すべきこと』を考える段階。実際、30代になって『すべきこと』をすごく意識しています」
ここ数年、現代社会を凝視し、分析しながら、今の時代をどう生きればいいのかを問うような作品が多かった。だが11年の震災以降、その閉塞(へいそく)感を打ち破るべく、分析的なアプローチではない、素直に楽しんでもらえるような幻想的な小説を書きたくなってきているという。
「先が読めない時代。小説を読んでいるひとときぐらいは、非現実的な世界で心を躍らせてほしいし、今はそういうものを書くことが『すべきこと』かなと。もちろん、作家はリアリストでなければいけない。非現実的な世界を描くにしても、現実に何が起きているかを把握していないと人の心に届くものは書けませんから」

得意なことを選んで伸ばす

平野啓一郎さんの写真3

中学の頃、周りとは「何かが違う」と感じていたにもかかわらず、同級生たちにはなぜか慕われ、何度も学級委員に持ち上げられた。平野さんが「昨日あったこと」を話し始めると、面白いからと知らない間に人だかりができる日々だったという。
「僕もみんなを楽しませたくて、本当にあったことをベースにしながら、かなり創作を交えたフィクションを話したりしていました。作文も面白おかしくフィクションを書くものだと思って、ずっとそうしていた。そんなあの頃と、今も基本的な生き方、創作スタンスは変わっていないのかもしれません。だからもし作家になっていなかったら、ただのうそつきで終わっていたかも」(笑)
「でも、物語を作るのが好きというより得意だったからこそ、今の位置までこられたような気がします。得意なことは努力次第でどんどん伸びるし、必ず好きになれる。若い人にもそんな視点で適職を選んでほしいですね」
クールに見えるが、心で書く人。内発的なものを信じ、執筆に向かう。だからこそ彼の作品は圧倒的なエネルギーに満ちている。

ヒーローへの3つの質問

平野啓一郎さんの写真4

現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?

正直、あまり真剣に考えたことはないのですが、もしなれるんだったら建築家。毎日、言語ばかりいじくって生きてるので、モノに憧れがあるんです。

人生に影響を与えた本は何ですか?

いろんなところで話していますが、三島由紀夫の『金閣寺』です。中学時代に読んで衝撃を受けました。文学に目覚めた、大きなきっかけです。

あなたの「勝負●●」は何ですか?

言葉。たいていの場面は言葉によって切り抜けられそうな気はしています。

Infomation

オスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」を平野啓一郎さんの新訳で上演!

日本の演劇がどのように西洋演劇と出会い進化してきたかを探るシリーズ「JAPAN MEETS… ―現代劇の系譜をひもとく―」第5弾として、オスカー・ワイルドの傑作「サロメ」が、作家・平野啓一郎さんの新翻訳によって上演される。これまでの官能的なサロメ像とは全く異なる、少女・サロメの無邪気ゆえの残酷さを浮かび上がらせる。サロメに挑む多部未華子さんをはじめ、最強の俳優陣も集結した。
「既存の作品イメージにとらわれず、ぜひまっさらな気持ちで観てもらいたいです」(平野さん)

「サロメ」
公演/2012年5月31日(木)~6月17日(日)
会場/新国立劇場 中劇場
原作/オスカー・ワイルド
翻訳/平野啓一郎
演出/宮本亜門
出演/多部未華子、成河、麻実れい、奥田瑛二 他
問い合わせ/新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999
公式サイト/ http://www.nntt.jac.go.jp/play/salome

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