第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる
Vol.122「百獣の王」/タレント 武井壮
認められたい思いが推進力
Heroes File Vol.122
掲載日:2014/10/2
「百獣の王」を目指す男、武井壮さん。ユニークな伝説の数々と、圧倒的な身体能力で2年前に大ブレーク。バラエティ番組などから引っ張りだこの状態が続いている。ほかの何者にも当てはまらない、独自の道を行く武井さんの魅力はいったいどのようにして育まれたのだろうか。
Profile
たけい・そう 1973年東京都生まれ。神戸学院大学法学部進学後に陸上を始め、十種競技の競技歴2年半で日本陸上競技選手権大会にて優勝。その後、中央学院大学商学部を卒業、米国へゴルフ留学、スポーツ選手トレーナーなどを経て芸能界へ。タレント活動の傍ら陸上競技のマスターズ大会にも出場し、好記録を達成している。
思い通りに体を動かせる人を目指す
白いタンクトップがトレードマーク。肩書は「百獣の王」。抜群の身体能力と独特の存在感で、今や数々のバラエティ番組に引っ張りだこの武井さん。
「ありがたいことに、この2年半ずっと仕事が続いています。自分の幸せの自己ベストを毎日更新し、突き進めていることがうれしい。充実しています」
認められたい。その思いが幼いころから強かったという。
「ちょっと複雑な家庭環境で、しんどいことも多いなか、勉強やスポーツで一番になれば親も周囲も褒めてくれた。それが僕の救いだったのでどちらも一生懸命頑張りました」
ところが小学2年の時、誰よりも速かった徒競走で負けそうになる。「速く走りたいのに体が疲れて気持ちに追いつかない。というか、そもそもなぜ人は疲れるんだろう」と疑問に感じ、近所の体育大生からトレーニング理論の教科書をもらって自分で勉強を始めた。
「そこから、スポーツで成功するにはどうすればいいかを考えた結果、頭でイメージした通りに体を動かすことが大事なんだと分かった。後に野球や格闘技などいろいろ挑戦しますが、決して上達のためではなく、そのスポーツで思い通りに体を動かせるようになるためのトレーニングとして行っていました」
日本一になっても空しかった
その成果が実り、大学時代に競技歴わずか2年半の「十種競技」で日本陸上競技選手権大会の優勝を果たし、日本一となる。
「これでようやく、得意なスポーツで注目の存在になれると期待していたのですが、翌日、街を歩いていても誰も自分に気づかないんです。それが本当にショックで。これはまずい、もっと世の中に影響力のあるスポーツでなければと思い、当時タイガー・ウッズ選手で沸いていたゴルフに転向し、米国へ留学しました」
ここでも独自のスポーツ理論でスコアを着実に伸ばし、このままいけばプロとして活躍できるという自信も得るほどに。「しかし何だかどうも違う」。順調なのに現状に満足できず、気持ちは焦るばかり。そんな矢先、米国の山道をジョギング中、野生の鹿に遭遇した。
「何とか難を逃れたものの、スポーツで自分の価値を高めようと懸命に努力してきたのに、野生の動物の前では何もできず腰を抜かすだけ。そんな自分にがくぜんとしました」
帰り道、「何があっても生き残れる知恵と身体能力を手に入れるため日本に戻ろう」と決意した。そして動物図鑑で動物の倒し方も研究。これが「百獣の王」を目指す始まりであった。
「結局、本当にしたいことが、スポーツの結果で有名になることではなかったとようやく気づいたわけです」
求めていたものは人を喜ばせる力
米国でのゴルフ留学から戻った武井さん。再び体を鍛えるためトレーニングに打ち込み、猛獣を倒すためのシミュレーションにも取り組んだ。
その一方、スポーツ選手のトレーナーをしたり、アスリートやマッスル系を必要とするCMやミュージカルに時々出演することで日銭を稼いでいた。
転機は30歳を過ぎたころ。芸能人の野球チームに入り、それがきっかけでさまざまな芸人やアーティストと出会ったことだ。
「彼らがいるだけでみんな笑顔になる。例えば歌手の森山直太朗さんもその一人ですが、ライブでお客さんが泣いたり笑ったりする姿を見た時、直太朗さんが魔法使いのように思えてまぶしかった。自分にはこんな『人を喜ばせる力』がない。衝撃を受けると同時に、求めていたのはこういう力なんだと分かりました」
だったら、自分のこの身体能力に「人を喜ばせる能力」が組み合わされば、武井壮という人間にしかできないエンターテインメントを実現できるんじゃないか。そう考えて毎晩、芸能人が集まるバーへ行き、トークや人の笑わせ方、しぐさなどをひたすら見て学んだ。
弱気を蹴飛ばし毎日最高の自分に
「朝になったら街中の道路などでトレーニングをしてサウナでシャワーを浴び、昼間はトレーナーやCMなどの仕事をして夜はまたバーへ、という生活をずっと続けていました」
移動に使う時間がもったいなくてその間は家なしで生活。睡眠はサウナなどでの仮眠で済ませた。それでもスポーツでトップを目指していたころよりも充実感があった。「本当にやりたいことに向かっているんだという気持ちが強く、不思議と不安もありませんでした」
そして39歳でテレビの深夜番組に出演したのを機にブレーク。一気に注目を浴び、今や「百獣の王と言えば武井壮」と多くの人に認知されている。
「人生は一度きり。守りに入らなかったのが良かった」
実は、トレーニングそのものは好きなわけではない。毎日「もういいよ」とつぶやく自分がいる。でもそんな気持ちを蹴飛ばしながらトレーニングへと向かう。「何かを成し遂げるのに大事なのは、自分に負けないこと。それができればどんな道も歩いていけると思う。それと、今はやはり人を喜ばせる自分でいたい。そのために必要なことはやり続けます」
目標などは設定せず、毎日何か一つ「プラス1」となるような成長を心掛けている。今日設定した目標よりも、成長した明日の自分の方がより大きな目標を立てられるから。「手に入れたいものは成長の先にある」。その思いが真ん中にあるから、前へ進む。
ヒーローへの3つの質問
現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?
肩書が「百獣の王」なら、職業は「武井壮」。僕は武井壮として、武井壮が好きなことをやって生きていこうと若いころから決めていて、それは今も変わらないので、ほかの職業はあり得ないですね。
人生に影響を与えた本は何ですか?
プラトンが書いた「ソクラテスの弁明」。中学1年の時、先生に勧められて読みました。ソクラテスは、たとえ処刑されようとも自分が正しいと思う道をいくと言明しています。僕に「本当に好きなことをしなさい」と教えてくれた大事な一冊。この教えに従って生きている気がします。
あなたの「勝負●●」は何ですか?
武井壮と言えば白のタンクトップでしょう。たまに「そろそろ洋服を着てもいいかな」と思うこともありますが、僕の原点だし、何といってもラッキーアイテムなので、まだしばらくは白のタンクトップでいきます。
Infomation
武井壮さんの情報はツイッター&オフィシャルサイトでチェック!
武井さんのオフィシャルサイト「目指せ! 百獣の王!!」にはメディアへの出演情報が掲載されている。またTwitterには、武井さんの日々の活動や感じていること、思っていることがほぼリアルタイムで載っているので、こちらも併せてチェック。ちなみにTwitterのフォロワーは約60万人。
●オフィシャルサイト「目指せ! 百獣の王!!」http://gogotakei.com
●Twitterアカウント@sosotakei