第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる
Vol.127俳優/タレント ユースケ・サンタマリア
無欲がチャンスになる
Heroes File Vol.127
掲載日:2015/1/9
芝居ではシリアスから三枚目まで幅広い役を演じテレビのバラエティー番組では脱力系キャラで笑いを誘う。大ヒットドラマ「踊る大捜査線」でブレークして以降俳優&タレントとして第一線で活躍しているユースケ・サンタマリアさんだがまだ、この世界に慣れず、居心地の悪さを感じている自分がいると言う。
Profile
1971年大分県生まれ。94年ラテンロックバンドのボーカル&司会でデビュー。俳優としては97年ドラマ「踊る大捜査線」で本格デビュー。「『ぷっ』すま」などのバラエティー番組でも活躍。2015年2月16日(月)~3月1日(日)に主演ミュージカル「モンティ・パイソンのSPAMALOT」が赤坂ACTシアターにて開催予定。大阪、福岡公演もあり。
バカを大まじめにやるのは楽しい
バラエティー番組では、独特のユーモアセンスと脱力系キャラクターで場を和ませ、芝居では振り幅の広い演技で観(み)る者を驚かせる。そんなユースケさんが主演を務めるミュージカル「モンティ・パイソンのSPAMALOT」が上演される。2012年の初演以来3年ぶりの再演だ。
ユースケさんの役どころは、みんなにいじり倒され笑いものにされる天然ボケの王。初演では自身の持ち味を存分に生かした演技が異彩を放った。
「芸達者の共演者たちのアドリブが矢継ぎ早に飛んでくるので油断できないし、動きが激しくて体力も消耗するのですが、すごく楽しかった。だから再演は素直にうれしい。お客さんには、いい年をしたオヤジたちが大まじめにバカをやっている姿を無邪気に笑ってほしい。壁にぶつかっている人だったら、きっと悩むことがバカらしくなると思いますよ」
20代は人生のベルトコンベヤーに乗って
少年時代はシャイで、高校では「地味で変なやつ」で通っていたと言う。ただ心の中には、いつか人前で目立つことがやりたいという気持ちが漠然とあった。そんな時、転機となったのが学外で仲間と始めたアマチュアバンドである。
「MC(進行役)担当で、トークがめちゃくちゃウケたんです。それに味をしめ、水を得た魚のごとくバンドにどんどんのめり込んでいきました」
いくつかのコンテストにも出場し、地元大分では知られる存在に。高校卒業後も新たに結成したバンドで精力的に活動を続けた。「ただ、アマチュアだったので先が見えなくて。それに若かったので単純に大分を出たくなり、バンドをやめて21歳で上京したんです」
特に何も決めていなかったが運が良かった。最初の数カ月はアルバイトなどをしていたものの、すぐに地元の同級生の紹介でラテンロックバンドに加入でき、ボーカル兼司会を務めることになったのだ。
「ラテン音楽が特別好きだったわけでもないし、足掛かりにしようといった計算も野望もなかった。まさに人生のベルトコンベヤー状態で、言われたことが楽しそうなので『やります!』と二つ返事で答え、期待に応えようと必死に頑張っていました」。そうこうするうちにバンドでのひょうきんな司会ぶりを面白がってくれる人が現れ、深夜番組やCMなど、次の仕事が舞い込んできた。
「実は音楽家で食べていく気もなくて、ただ目立つことができればうれしい、みたいな。でも、変にお金や名誉に執着せず、何に対しても無心で取り組んできたからチャンスを呼び寄せられたのかもなって改めて思いますね」
勢いのある人を演じその場を乗り切る
ユースケさんが初めて芝居を経験したのは、無名の新人を起用する深夜ドラマだった。
「その監督が演技を褒めてくれ、君はきっと引く手あまたの俳優になると言われて調子に乗りましたが、1年間、俳優としての仕事のオファーはありませんでした(笑)」
でもチャンスは訪れる。所属していたラテンロックバンドが一向に売れず、解散となった矢先、ドラマ「踊る大捜査線」の出演依頼が届いたのだ。同作は大ヒットし、一躍注目を集めた。ユースケさん26歳。この後、破竹の勢いでさまざまな作品に起用されていく。
「シャイな人間って何も話さないか、反対に無理にはしゃいで元気な人間を演じるかだと思うけれど、僕は後者。幸か不幸かふざけた芸名にしたので、そのキャラクターっぽく勢いのある人を演じてその場を乗り切る、というのが僕の処世術です。それを幸いにも多くの人に独特の個性と捉えてもらえた。だから今こうしてやっていけているんだと思います」
実際、バンドでやるよりも俳優やタレントの方が向いていたと感じると言う。
「ドラマや映画は期間限定のチームで一つの作品を作り上げ、完成すれば解散。バラエティーも同じ。この短期集中型のスタイルが、団体行動が苦手な自分に合っているし、何よりどちらも、非日常の世界を創る仕事だというところが好きなんです。これが天職とは思わないけれど、他の天職が見当たらないので、できる限り続けていきたいと思っています」
被害妄想を原動力にする
実は30代に入って体調不良に襲われ、それが40代近くまで続いていた。働き盛りなのに体が思うように動かない。もどかしくてつらかった。
「厄年を過ぎた辺りでようやくその状態を脱しました。とにかく健康が一番。健康であれば少々のことではへこたれない。ただ、変に無理しないよう、仕事は自分で選ぶようにしました。やりたいことなら前向きに取り組めるので」
とは言え、バラエティーと芝居の両方をこなすがゆえ、これだという軸がなく、中途半端に思える自分に対して根強いコンプレックスがあると言う。
「何をしていても誰かにナメられているんじゃないかという被害妄想、卑屈さがあって。でもそれをねじ伏せたいから頑張ってしまう。僕は役者ですなんておこがましくて言えないんだけれど、やるからには引けを取りたくないから全力投球する。そんな感じでやっていくのかな、これからも(笑)」
一途さと卑屈さを行き来し、時には居心地の悪さをも楽しむ。ユースケさんは自分らしく、自分だけの階段を上り続ける。
ヒーローへの3つの質問
現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?
結婚式の司会を仕事にしているかも。もしくは、全国区ではなく地方の番組やCMに登場するような司会者かな。
人生に影響を与えた本は何ですか?
「嫌われ松子の一生」(山田宗樹著)。タイトルがまず印象的、発売とほぼ同時に買いました。運命に翻弄(ほんろう)されながらも生き抜く松子に、人生の縮図を垣間見た気がしました。あそこまでジェットコースター的ではないですが、どこか自分の人生に重ね合わせて読みましたね。
あなたの「勝負●●」は何ですか?
勝負玄米。玄米は人間の健康に必要な栄養素がほとんど詰まった完全栄養食。食べると元気が出ます。後は勝負パフューム。特にホワイトムスク系のパフュームがさりげない香りでとても気に入っていて、ここぞという時には足首などにつけたりしています。
Infomation
再演決定! あの伝説の“バカミュージカル”が帰ってくる!
ミュージカル「モンティ・パイソンのSPAMALOT」
イギリスの人気コメディーグループ、モンティ・パイソンのメンバーだったエリック・アイドルが脚本・音楽・詞を手掛けたブロードウェーミュージカル「SPAMALOT」。2005年にはトニー賞最優秀ミュージカル賞を受賞し、今なお世界20カ国以上で上演されている傑作だが、12年の日本初演では「死ぬほど笑った」と口コミで広がり、東京公演千秋楽は立ち見客も続出。そんな伝説のギャグミュージカルの再演が決まり、ユースケさんが再び主演する。バカバカしさをとことん楽しもう。
<東京公演>
日程:2015年2月16日(月)~3月1日(日)
会場:赤坂ACTシアター
上演台本・演出:福田雄一
出演:ユースケ・サンタマリア、平野綾、ムロツヨシ、松下優也、貴水博之、マギー、皆川猿時、池田成志ほか
公式サイト:http://www.spamalot.jp/
※大阪公演、福岡公演もあり。