第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる
Vol.153タレント 鈴木あきえ
チアガールで培った笑顔は仕事でも生きる
Heroes File Vol.153
掲載日:2016/7/14
テレビの情報バラエティー番組「王様のブランチ」で長年リポーターを務めている鈴木あきえさん。高校の時にチアリーディング部に所属し、そこで会得した“笑顔”が芸能界に生きる鈴木さんの支えとなり、輝く糧となっている。でも、最初からうまくいったわけではない。さまざまな努力があって今があるという。そんな鈴木さんに、リポーターとしての人とのコミュニケーションの取り方そして仕事への姿勢などを伺った。
Profile
すずき・あきえ 1987年東京都生まれ。雪谷高校を卒業後、芸能界へ。2016年7月現在、TBSテレビ「王様のブランチ」のレギュラー出演者でリポーターを務め、TOKYO FM 「鷹の爪団の世界征服ラヂヲ」のMC(進行役)や、NHK「どーも、NHK」「ひるブラ」などにも出演中。
情報バラエティー番組「王様のブランチ」のリポーターとして活躍中の鈴木さん。土曜の昼間に、赤い法被姿の鈴木さんが見せる笑顔に元気をもらうという人も多いのでは? 実に、その笑顔と元気は筋金入り。高校時代に部活動でチアリーディングに打ち込んだ経験が、鈴木さんの今を大きく形作っていると言う。
「高校入学の歓迎会でチア部の先輩たちの演技に一目ぼれし、華やかさに憧れて入部しました。でも実際は地味な筋トレばかりで、最初はだまされたと(笑)。当初は腹筋が2回もできないほどだったけれど、先輩のように可愛いユニホームが着たくて頑張りました」
部活では骨折などケガも多かったがめげなかった。野球部が甲子園に進んだ時にはスタンドでの応援を経験。そしてチアの大会に向け、朝練、昼練、放課後の練習に加えて夜は公民館で特訓を重ね、3年次には全国5位となる。
「厳しくも皆で上を目指すチームワークと、どんなに疲れていてもつらい時こそ笑顔で人を励まし、場を明るくするというチアの本質をとことん身に付けることができました」
部活を引退後、燃え尽き症候群のようになった鈴木さん。そんな時、芸能界デビューの話が舞い込む。進学予定だったが、鈴木家の会議の結果、大学はいつでも行けるが、この仕事はタイミングがあるので、まず1年やってみようと話がまとまる。高3の夏に青年漫画誌のグラビアでデビュー。当時はグラビアアイドルがテレビなどでも注目される全盛期だった。
「始めてみたら仕事はやりがいがあり、やるならトップを取ろうとスポーツ根性がわき上がりました。でもその気持ちとは裏腹に、18歳を過ぎると自分のイメージとは違うセクシー路線を求められ、水着の布がどんどん小さくなっていき、歩む道を見失いかけました」
悩んで事務所に相談した末、テレビの仕事へ方向転換。さまざまなオーディションを受け、約1年後に「王様のブランチ」のリポーターの座を射止めることになる。
「すごくうれしかったです! オーディションではチアの経験で培った笑顔でお茶の間を明るくします! とがんがんアピールしました(笑)。実はこのころ、演じることにも興味がわいてワークショップに通っていたのですが、先に知名度を上げることに専念しようと。この番組は、まだ無名の女の子が活躍して成長していけるいい場所だと考えていたので、まずは頑張っていくための最初の扉が開いたという気分でした」
しかしここから、鈴木さん自身が「暗黒期」と呼ぶ時期が始まるのである。
仕事の借りは仕事でしか返せない
20歳で念願の情報バラエティー番組「王様のブランチ」のリポーターに起用された鈴木さん。野望と情熱を胸に仕事に臨むが、思い描くようなリポートがなかなかできず、次第に無力感が募っていったという。
「たとえばグルメリポート。食べることが好きなので楽しめると思ったのに、いざカメラの前で食べ物を口にしても言葉が思い浮かばず、現場がシーンとしてしまって。ロケでも、ゲストと会話が続かずカメラが止まると微妙な空気に。ゲストの魅力を引き出すどころではなく、自分の力不足がくやしくて仕方なかったです」
リポーター仲間と食事の時に練習し合うなど努力は続けた。でも思うようにいかず、そんな状況のまま2年ほどしたころ、思い悩んだ鈴木さんは番組の放送作家に相談してみる。
「土曜昼間に長い時間やっているこの番組は、心身に疲れを感じている人が、ふとチャンネルを合わせることもある。その中には明日命を絶とうと思っている人がいるかも知れない。そんな時、偶然あきえちゃんの笑顔を見て、生きる元気を出そうと思ってくれる人が一人でもいればいいのではとアドバイスされ、涙がポロポロ出て、気合を入れ直しました」
2年目には、赤い法被姿でゲストと一緒に買い物をするコーナーも任された鈴木さんは、初対面の人とどうしたらうまくコミュニケーションを取れるかを研究。たどり着いた結論は、その人を好きになることだった。
「好きになれば興味がわくし情報も頭に入る。本番では怒られようとも、視聴者代表としてゲストの懐に入り、その方の素直な表情や新しいエピソードを引き出そうと、吹っ切ってやっています。ゲストと化学変化を起こしたいんです。だからこそ、相手の様子はよく見ます」
努力のかいあってコーナーの人気は上がり、ラジオ番組のMC(進行役)など活動の場も広がった。そして26歳で「王様のブランチ」のレギュラー出演者となり、29歳の現在(2016年7月)、名物リポーターとしてお茶の間に元気を振りまいている。
そんな鈴木さんがこの10年で学んだのは、仕事の借りは仕事でしか返せないということだ。
「落ち込んだ時、飲みに行って一瞬憂さを晴らせても悩みはなくならない。次で頑張って結果を出すことでしか前に進めないんですね。私にはリポーターがすごく合っていると思う。でも、もしも憧れの女優の仕事や他の仕事もオファーがあればベストの状態で受けられる自分でいたい。とにかく笑顔でいれば何とかなります。笑顔になることで自分を鼓舞し、見てくださる方を応援できたらうれしいですね」
ヒーローへの3つの質問
現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?
保育士です。子どもが大好きですし、芸能界に進まなければ保育系の学科に進学する予定でしたから。
人生に影響を与えた本は何ですか?
柚木麻子さんの『ランチのアッコちゃん』です。さすが“ビタミン小説“と呼ばれているだけあって、人付き合いをもっと上手にできるヒントが満載です。私も、苦手と思い込んでいた人との付き合い方を、この本を読んだことでかなり改善できたと思っています。
あなたの「勝負●●」は何ですか?
難しい仕事の前においしいスイーツを買います。「これが終わったらあのスイーツを食べる!」という気持ちを糧に、仕事のキツさを乗り切ります。
Infomation
「王様のブランチ」「鷹の爪団の世界征服ラジヲ」などに出演中
鈴木さんがリポーターとしてレギュラー出演している「王様のブランチ」は、TBSテレビで毎週土曜の朝9時半から午後2時まで放送中。鈴木さんは「買い物の達人」というコーナーの中心的役割を務める。「番組に出演させていただき10年になりますが、こんなに長くお世話になり、とても光栄です。最近は、ゲストの方たちとの時間やロケを楽しみたいと思って仕事に取り組んでいます。自分が楽しめていれば、きっといいものになる。もちろん視聴者にも面白いと思っていただけるよう、ゲストの方の新しい顔やお話を常に引き出そうと意識しています」。鈴木さんはほかに、毎週木曜25時から放送されるTOKYO FMのラジオ番組「鷹の爪団の世界征服ラジヲ」などにも出演中だ。