第一線で活躍するヒーローたちの「仕事」「挑戦」への思いをつづる
Vol.177俳優 高良健吾
逃げずにいたことで自信をつかんだ
Heroes File Vol.177
掲載日:2018/1/11
10代のデビュー直後から才能を認められ、映画やドラマでの主演が相次ぐ俳優・高良健吾さん。出演作が途切れたことがほとんどないというほど活躍し続けている。昨年、自身がずいぶん前からかなり意識していた30歳になった。「20代までの自分とは違うアプローチで、これからもさまざまな役に挑みたい」と新たな意欲を語る高良さん。日々どんな思いを持って仕事に取り組んでいるのだろうか。
Profile
こうら・けんご/1987年生まれ、熊本県出身。WOWOWの「連続ドラマW」出演として2012年「罪と罰 A Falsified Romance」、14年「平成猿蟹合戦図」がある。2018年2月17日(土)午後10時放送開始予定の「連続ドラマW バイバイ、ブラックバード」に主演する。
高良さんが20代最後の作品という意識を持って挑んだのが、2018年2月17日(土)放送開始予定の「連続ドラマW バイバイ、ブラックバード」だ。ベストセラー作家・伊坂幸太郎さんの小説が原作で、伊坂さん作品の初の連ドラ化ということもあり注目が集まっている。
「城田優君演じる規格外のヒロインと、僕が演じるダメ男が繰り広げるアップテンポの会話劇が見どころです。面白いだけでなく不思議な魅力があって、人にとって大事なものも感じさせてくれる。多くの人に見てほしいと心から言いたくなる作品で、30歳間近のタイミングで出会えたことが何よりうれしかったです」
デビューのきっかけは地元の熊本でタウン情報誌の高校生スタッフになったこと。同誌の編集長から「興味があるなら」と今の芸能事務所を紹介してもらい、高2でドラマ「ごくせん」のオーディションを受けたら合格してそのまま俳優の道へ進むことになった。「本当に運が良かったと思います」。そしてその後も高校を卒業するまで、熊本と東京を行き来しながらドラマ「WATER BOYS 2005夏」や映画『ハリヨの夏』『M』に相次いで出演した。
中でもとりわけ大きな転機となったのが2作目の映画『M』だという。当時は人前で芝居をすることにまだ慣れておらず、恥ずかしくて抵抗があった。そのうえ、現場では廣木隆一監督から怒られてばかり。「俺にOKを出してほしくて芝居をしているんだったら役者を辞めろ」「分かりやすいことをするな」などと言われ続ける毎日で、さすがに落ち込み、この仕事を選んだことを後悔したと語る。
「でも、廣木さんに言われた厳しい言葉はいまだに自分の背中を押してくれているし、それが目標にもなっていて、まだまだ追いついていないと痛感させられることもしばしば。10代後半の多感な時期に、大人の本気の言葉を聞くことができたのは貴重な財産です」
18歳で上京し、20代前半にかけて数多くの作品に出演し続けた。中には狂気を秘めた青年というハードでキツい役もあり、そんなことがある度に「辞めたい」と口にしていた。
「そうつぶやくことが精神安定剤になっていた時期もありました(笑)。基本的に、苦しみやしんどいことからは逃げてもいいと思う。でもそれでも僕が逃げなかったのは、不器用だけど負けず嫌いで、うまくいかないことを乗り越えられない自分を見たくなかったから。そうやって逃げなかったことが結果的に自信となり、次へと進ませてくれた。その繰り返しで僕は今ここに居るんだと思います」
ネガティブな感情は継続の力に救われる
数々の主演作が続く実力派俳優、高良さん。「僕は本当に運が良いと思う。でも、それに頼っていてはダメだと感じ始めたのが20代半ばを過ぎたころです。それまでは若さや勢いがあって、心の内にたまったものを吐き出すような役が多かった。ただ、先輩たちを見ていると年齢と共に役も変わっている。僕も30歳を過ぎて求められるものが変わったら、それに対応できるだけの実力がないとまずいなと思いました」
そう気づいてから、その場の勢いで無意識で演じて許されていた部分を意識して演じるように心掛けたり、今までとは違うアプローチの芝居を試みたりしている。それを繰り返していくうちに自分の足りないものを言語化できるようになり、課題克服のために何をすべきかが分かるようになったという。
「分かったら後は行動するだけですよね。おのずと自分がやるべきことが増えていきました。経験を積むほどやることは減ると思っていたのに、増えていったのが逆に新鮮でした」
昨年(17年)11月に30歳となり、デビューから15年が経った。例えば死を選ぶ人の気持ちなど、俳優という職業に就かなければ考えなかったことや感じなくても良かったことがある。「でも、考えたり感じたりすることで違った自分になれた気がする。僕を大きく成長させてくれているのは間違いなく俳優の仕事です」
更に、この仕事で一番魅力を感じるのは、いろいろな人に出会って、大切にしたい縁を結べることだという。今回取り組んだ「連続ドラマW バイバイ、ブラックバード」の森義隆監督もその一人だ。
「20歳のころ、『ひゃくはち』という映画でご一緒させて頂きました。約1年前、森さんが監督した映画『聖の青春』を見てめちゃくちゃ感動し、その場で電話したことがあったんです。そうしたら同じ日に、事務所にこのドラマのオファーがあった。偶然ですが、10年ぶりに同じ現場に集うことができたのは素直にうれしい。これも続けてきたからこそのご褒美ですね」
そんな高良さんは、「仕事が趣味」という言葉に少し疑問を持っている。「仕事は仕事、決して楽しいことばかりではなく、つらいことのほうが多いものです。でも、つらさによってどんなにネガティブな感情が積もっても、続けてきた年数によって救われますよね。僕は、まだ続けられているという事実に力をもらいながら、日々格闘できている気がします」
今後は、その年齢でしかできない役を演じていきたい。そして、15年続いたのだから30年40年先も俳優である自分を見たいと考えている。
ヒーローへの3つの質問
現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?
何の仕事をしているかは分からないけれど、間違いなく九州で暮らしていると思います。
人生に影響を与えた本は何ですか?
つげ義春さんの漫画作品。17歳の時、佑くん(柄本佑さん)に教えてもらって読んだのですが、それまで読んでいた漫画とは全然違っていて衝撃を受けたのを覚えています。
あなたの「勝負●●」は何ですか?
撮影初日の前日とかは40分ほどゆっくりと風呂につかります。新しい作品のことをいろいろと考えたりする時間でもありますが、体を清めるじゃないけれど、きれいにしておきたいというのもあります。
Infomation
WOWOW「連続ドラマW バイバイ、ブラックバード」に主演
これまでに数々の賞を受賞している人気作家・伊坂幸太郎さん。『ゴールデンスランバー』『グラスホッパー』『重力ピエロ』など多くの名作が映画化されてきたが、意外なことに連続ドラマ化は初めて。その「連続ドラマW バイバイ、ブラックバード」の最大の見どころは、多額の借金を抱えた五股男(高良健吾さん)と、謎の組織から送り込まれた見張り役(城田優さん)の凸凹コンビがテンポ良く繰り広げる会話だ。高良さん演じる星野一彦は惹(ひ)かれた女性と交際を重ねるうち、いつの間にか五股に。一方、城田さん演じる繭美は「身長3m、体重200kg、金髪でハーフ」と自らうそぶく、強烈なインパクトを放つ怪女。そんな2人が、5人の女性に別れを告げにいく数日間を描いた何とも不思議な「グッド・バイ」ストーリー。「登場する5人の女性と、星野と繭美のやり取りがとにかく楽しいし、回を重ねるごとに展開が加速して面白くなっていきます。ぜひ多くの方に見て頂きたいですね」(高良さん)
2018年2月17日(土)放送スタート
放送時間:毎週土曜22:00~/全6話(※第1話無料放送)
原作:伊坂幸太郎『バイバイ、ブラックバード』(双葉文庫)
監督:森義隆(映画『聖の青春』『宇宙兄弟』『ひゃくはち』ほか)
脚本:鈴木謙一(映画『アヒルと鴨のコインロッカー』『ゴールデンスランバー』ほか)
出演:高良健吾、城田優、
石橋杏奈/板谷由夏/前田敦子/臼田あさ美/関めぐみ(登場順)ほか
公式サイト:http://www.wowow.co.jp/
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公式インスタグラム:https://www.instagram.com/
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